ニュースやワイドショーなどでも話題になることも多い「モラハラ」。夫婦間でのモラハラが原因で、離婚に至ることは珍しくない。そこで、夫からのモラハラを受けている女性からの相談について、弁護士の竹下正己氏に回答してもらった。

【相談】
 私の夫は、気に入らないことがあるとすべて私のせいにします。特に機嫌が悪いときは、「子供の成績が悪いのはおまえの遺伝子が悪いからだ」「おまえの親はどういう教育をしてきたんだ」「おれが買った車だから使うな」などと平気で言います。こういう言葉はモラハラにはならないのでしょうか。モラハラを理由に離婚を考えていますが、どうしたらうまく離婚できますか。

【回答】
 職場のモラルハラスメントについて、厚生労働省は次のように説明しています。

「言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせて、その人間が職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせることをいいます」

 ご主人の発言もあなたの人格を否定するようなもので、モラハラといってよいかもしれません。

 しかし、ご相談は「うまく離婚する方法」です。モラハラだけで離婚するのは簡単ではありません。離婚には、協議離婚や調停離婚のように当事者の合意で離婚する場合と裁判離婚がありますが、手早く離婚するのであれば協議離婚ということになります。

 ご主人が後先なく激高するようなタイプであれば、離婚届の用紙を準備しておき、離婚すると言い募ったときに署名させるのも方法です。しかし、後から「だまされた」とか「離婚は真意ではない」などと言って、もめそうです。やはり、互いの実家や共通の友人らに相談して、離婚が2人や子供にとってやむを得ない選択であることを互いに納得するほかないと思います。

 裁判離婚になった場合、ご主人がモラハラしたことを否定したり、暴言を認めても反省してやり直したいと述べて離婚を争うと、まずモラハラの証明が必要になります。

 仮にその証明ができてもDVなど、ほかの事情がなくて、モラハラだけを主張して離婚が認められるかは難しいところです。離婚は婚姻関係が破綻して元に戻せない場合でないと認められません。

 夫婦げんかで乱暴な言葉が飛び交い、しばし互いに無視をするのは普通にあることです。性格の不一致や人生観の違いなどから深刻な対立になったとしても一方的に責められることではありません。

 モラハラ配偶者が反省している場合、夫婦げんかの域を超えたよほどひどい暴言でないと、裁判所は「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとまでは言えないと離婚を認めない可能性があります。

 結局、暴言などの程度が重要です。ご主人のモラハラ発言を録音したり、LINEなどでのモラハラな書き込みを削除しないで残しておくとよいでしょう。

 職場のモラハラでは、パワハラ同様、うつ病などのメンタルヘルス不調の原因になるとされています。あなたもご主人のモラハラで精神的につらい思いをしているとすれば、精神科を受診し、モラハラ発言による神経の不調について診断書を書いてもらうことも有効です。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。

※女性セブン2020年10月29日号