50代に差し掛かると、相続や離婚、介護に仕事のことなど、女性が抱えるトラブルや悩みは年々増えていくもの。ここでは、相続に関する具体的な事例をもとに、女性目線から見た悩みに役立つ法律を紹介。東京法律事務所の弁護士の岸松江さんが解説する。

【事例】
子供のいない私たち夫婦。夫が病に倒れるや、義弟らが遺産をせびりにやってきた!

 夫ががんで余命宣告を受けました。すると、これまで音信不通だった義弟3人が病院に現れ、あろうことか、夫の死後、自分たちにも遺産をもらう権利があるからなと主張してきたのです。なかには、夫と私が長年住んできた持ち家まで要求してくる人も……。彼らに夫の遺産、特に家まで受け取る権利はあるのでしょうか?

【法律】
◆民法 第1028条(配偶者居住権)
第1項 被相続人(亡くなった人)の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次のいずれかに該当する時は、その居住していた建物を無償で使用および収益をする権利(「配偶者居住権」)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
第1号 遺産分割によって配偶者居住権を取得した時。
第2号 遺贈によって配偶者居住権を取得した時。

◆民法 第1037条(配偶者短期居住権)
第1項 被相続人の配偶者は、相続開始の時に無償で居住していた場合、次のとおり一定期間無償で使用する権利がある。
第1号 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をする場合:「遺産分割により居住建物の帰属が確定した日」、または「相続開始の時から6か月」のいずれか遅い日
第2号 それ以外の場合:居住建物の取得者から配偶者短期居住権消滅の申し入れがあった日から6か月

【解説】
◆妻は終生、無償で居住できる権利がある

「遺言書がなければ、民法第900条の通り、妻は4分の3、夫のきょうだいは4分の1を等分することに。もし妻が全遺産を相続したいなら、“妻にすべてを譲る”という旨の遺言書を夫に残してもらうこと。そうすれば、きょうだいには、最低限度の遺産取得割合である遺留分の請求権はないので、妻がすべて相続できます」(岸さん)

 家については、2020年から施行された民法第1028条が頼りになる。

「万が一、自宅の所有権をすべて相続できなかったとしても、夫の死亡日までに妻が同居していた場合など、一定の要件を満たしていれば、終生無償で住み続けられる場合も。ただし、あくまでも居住権であり、所有権ではないため、売買はできません。また、亡き夫が、妻以外の人と自宅を共同名義にしていた場合は対象外です」(岸さん)

 配偶者居住権を行使するには、ほかの相続人と協議や調停を経て合意を取る必要がある。その結果、退去することになっても民法第1037条が守ってくれ、夫の死後半年間、あるいは遺産分割が合意された日から半年間は無償で住み続けられる。

※女性セブン2020年10月29日号