人生の後半戦を迎えた50代前後の女性たちの多くは、老後、離婚、介護、相続など、様々な不安や悩みを抱えている。だからこそ、いざという時のために役立つ法律を知っておけば、心穏やかに暮らせるのではないだろうか。ここでは、結婚生活に関する具体的な事例を挙げて、その解決法について東京法律事務所の弁護士の岸松江さんが解説する。

【事例】
夫の暴言に耐えられない! ……なんて理由でも離婚できますか? それに離婚後の生活も不安です。あの夫がお金を払ってくれるのか……。

 結婚生活20年目。夫からは長年にわたり「能なしが!」などと一方的に暴言を浴びせられ、ちょっとでも反論しようものなら「誰のせいで飯が食えると思ってんだ!」などと怒鳴られます。生活費もわずかしかもらえず、毎月カツカツ。夫からは給与の額やボーナスが出たかどうかも教えてもらっていません。それなのに、夜の生活は求められ、拒否するとまた激高。暴力を振るわれているわけではないのですが、もうこんな生活はいや。でも、専業主婦の私が生きていけるのか不安で離婚する勇気がありません。

【法律】
◆民法 第760条(婚姻費用の分担)
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

【解説】
◆同居中に証拠を集め、婚姻費用を!

「この事例は、精神的DV(ドメスティックバイオレンス)ともいえる“モラハラ”を受けている状態なので、立派な離婚事由になります。離婚前に、モラハラをされた証拠として、暴言を録音したり、日記に記録しておきましょう」(岸さん)

 夫の資産も把握しておくと財産分与の際に役に立つ。

「証拠を押さえたら、まずは別居して生活費となる婚姻費用を得ながら離婚手続きを進めましょう。民法第760条により、離婚成立までは、収入の多い方が少ない方に婚姻費用を支払う義務があるのです」(岸さん)

 婚姻費用の支払い義務は、申し立てた月から発生する。ただし支払われるまでは数か月かかるため、当面の生活費は貯めておこう。

【豆知識】
◆疑問に思ったら即、専門家に相談を

 配偶者や事実婚のパートナーなど、男女間における暴力を、ドメスティックバイオレンス(以下、DV)という。殴る、蹴るなどの身体的DVだけでなく、今回の事例のような暴言や、収入を教えず家計を厳しく管理するケース、性行為を強要するケースもDVに該当する。

 DVについて相談したい場合は、「DV相談ナビ」(#8008)にかけてみよう。各都道府県の中核的な相談機関に自動的に転送される。場合によっては、所持金がなくてもシェルターなどを紹介してもらえ、一時避難も可能だ。

 DVの被害者は「自分さえがまんすれば」と耐える傾向があるため、決断が遅れる。少しでも心当たりがあれば、役所のDV相談窓口など公的な機関に相談を。

※女性セブン2020年10月29日号