人生も後半戦に差し掛かると、年々複雑になる女性の生活。ここでは、弁護士への相談件数の多い女性特有の離婚トラブルについて、具体的な事例を用いて東京法律事務所の弁護士の岸松江さんが解説。いざという時に役立つ法律を知って自分の身を守ろう。

【事例】
夫が突然、離婚届を置いて出て行った!私は離婚したくない!どうしたらいい?

 ある日、夫がなんの前触れもなく家を出て行きました。リビングのテーブルに、離婚届を残して……。もしかすると、夫は不倫をしているのかもしれませんが、いずれにせよ、私としては離婚したくありません。何せ、来年には子供の大学受験も控えているので、動揺させたくありませんし、金銭的にも不安がありますから……。一体どうしたらいいでしょうか。

【法律】
◆民法 第770条(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
第1項
第1号 配偶者に不貞な行為があった時。
第2号 配偶者から悪意で遺棄された時。
第3号 配偶者の生死が三年以上明らかでない時。
第4号 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない時。
第5号 その他婚姻を継続し難い重大な事由がある時。

【解説】
◆離婚事由がない場合、妻が拒否し続ければ離婚は避けられる

 離婚するための方法は主に3つ。夫婦2人で、あるいは弁護士などを通して決める「協議離婚」、家庭裁判所に申し立てをして進める「調停離婚」、そして「裁判離婚」だ。「協議離婚」と「調停離婚」は、両者の合意がなければ成立しない。裁判に進んだとしても、民法第770条の5つの要件に該当しなければ、離婚請求は認められない。「つまり、事例の妻のようにどうしても離婚を望まない場合、離婚を拒否し続ければ、簡単に離婚は成立しません」(岸さん)。さらに、以下の3つの手続きをしておくと心強い。

■婚姻費用の請求
 まず家庭裁判所に「婚姻費用分担調停」の申し立てをし、当面の生活費を確保しよう。得られる金額は、裁判所のホームページに公表されている「養育費・婚姻費用算定表」が目安になる。例えば、15才以上の子供が1人いる場合、夫が年収500万円の会社員で妻の年収が100万円であれば、8万〜10万円。相手が了承すれば、算定表より高い額がもらえる。

■離婚届の不受理申出を提出
 離婚届は、両者の合意がなければ法的に有効にならない。とはいえ、勝手に届け出された離婚届の無効を争うのも煩雑。役所に「離婚届不受理申出」を提出しておけば安心だ。

■不倫していないか調べる
 民法第770条における5つの離婚事由がなく、さらに相手が不倫をしていたら(有責配偶者と呼ばれる)、相手からの離婚請求は認められにくくなる。怪しいと思ったら、早めに不倫の証拠集めを。

【豆知識】
◆別居期間が長引くと離婚が成立しやすくなる!

 民法第770条の5つの離婚事由がなく、相手が不倫をしたなどの有責配偶者であれば、一方的な離婚は成立しづらいと前述したが、例外もあるので要注意だ。例えば、夫婦としての交流が一切ない状態で、別居期間が5年以上など長期間に及んでいる。未成年の子供がいない、かつ、養育費の支払いや財産分与などが行われることで、妻が離婚によって過酷な状態にならないようであれば、有責配偶者からの離婚請求でも認められることがあるので要注意だ。

※女性セブン2020年10月29日号