「どうせ生涯現役を目指すなら、定年後は社会貢献できるボランティア活動に携わりたい」。そう考える人が増えているという。社会との繋がりを持ち、やりがい・生きがいを得ることは健康面や精神衛生上も望ましい。比較的、生活に余裕のある人にとっての“理想の老後”にも思えるボランティア活動だが、時に60代以降の人生を大きく狂わせることもあるという。

 例えば、福祉施設や介護施設などで入居者をサポートする介護ボランティアは、苦労は尽きないという。

「入居者の話し相手やレクリエーションなど、身体介護を伴わないお手伝いが活動の中心ですが、時には認知症の入居者の方に暴言を吐かれたり、暴力を振るわれることもある。散歩や車椅子での移動に付き添うこともあるが、万が一、事故が起きれば責任を負わなければならない。実母の介護も年々、負担が大きくなる中で、他人のために尽くすことの意義がわからなくなってきました」(65歳男性)

 ボランティア活動は基本的に無償。交通費や手当が支給されるケースもあるが、長年活動を続ければ金銭的負担も当然、大きくなる。

 また、活動中に事故が発生し、金銭的な賠償責任が生じることもある。こちらは損保各社の「ボランティア保険」加入により一定の範囲でカバーされるが、自治会や町内会など“会員の共通の利益”を目的とする活動は対象とならない。海難・山岳救助ボランティアも対象外とされる。

 コロナ禍のなかで注目された「いのちの電話」も各地のボランティアにより活動が支えられているが、元相談員の男性(70)はこう嘆息する。

「相談の多くは当然、重い内容ばかりなので、精神的に参ってしまうこともある。それでも“少しでも多くの人の救いになれば”と活動を続けてきた。だが、相談員不足でなかなか電話が繋がらないと、“なんで繋がらないんだ!”と罵声を浴びせられ、詰られることすらある。滅私奉公の精神は大切だが、自分が追い詰められてしまうこともあった」

 生活には余裕があるから、フルタイムで働くよりもボランティアを――そんな魅力的に見える“働き方”にも、計り知れない苦労やリスクがあることを知っておきたい。

※週刊ポスト2020年11月6・13日号