男は妻について知らないことだらけだ。50代以上の女性たちが読んでいる女性誌の実用特集を見てみると、ひときわ目立つのは、「夫の死後」のシミュレーションだ。

〈申し込み期限を過ぎたら大損しますよ! 夫が死んだらもらえるお金〉(「週刊女性」2020年10月20日号)
〈手続き お金 健康 死別後の妻を襲う“3大リスク”に備えよう〉(「婦人公論」2018年9月11日号)

 これらの特集では、夫が亡くなった時に妻が受け取ることができるお金を細部まで紹介し、その申請方法についても綿密にレクチャーする。

 50代からの生き方や暮らし方を応援し、女性誌全部門で販売部数トップの30.5万部を誇る「ハルメク」も最新号(11月号)は、入院、介護とともに「夫の死後」を「3大不安」として特集している。

 例えば、65歳でリタイアした夫が76歳で病気になり、1年間の入院とさらに1年間の自宅療養ののちに亡くなったという70歳女性の実例を挙げ、〈退職金は貯蓄に回し、いざというときの備えに〉、夫の死後には〈入院時の保障がついた医療保険に入りました〉〈自分の年金と遺族年金でやり繰りして、貯蓄を切り崩さないよう、節約を心掛けて家計簿をつけるように〉などと、具体的な対策を紹介した。

 同誌は今年3月号でも〈油断は禁物です。一番の課題は夫が亡くなった後〉と指摘して、遺族年金の受給額シミュレーションを掲載し、夫亡き後に備えての支出の見直しを呼びかけた。

 また、おひとりさまの老後の賢い備え方については、1人分の年金では生活が苦しいという人に、こんな大胆な“婚活”アドバイスを送っている。

〈これからの生活を共に支え合う「サバイバルパートナー」として思い切って結婚するのも手。籍は入れない事実婚でも、相手が亡くなった際は遺族年金が受け取れるケースもあります〉

「ハルメク」の山岡朝子編集長が語る。

「購読者に何度もアンケート調査を行なった結果、『入院』『介護』そして『夫の死後』に不安を抱いている人が多いことがわかりました。そのため男性誌と同じように年金や終活の特集は読者から大変人気があります。

 男性は平均寿命からも自分のほうが先に逝くと想定して、死ぬまで奥さんが看てくれるという感覚があるように見受けられます。一方、女性はいつかは夫に先立たれるという意識を持っており、“一人になっても生きていけるか”を現実的に考えている。遺族年金を特集した際は、『夫が死んだら、私の遺族年金はいくらなのか教えてほしい』という問い合わせが弊誌のコールセンターに殺到しました」

 こうした特集は男性が目にすると、ドキッとする内容も少なくない。

〈「夫が亡くなったとき」にもらえるお金全リスト〉(「女性自身」2018年11月20日号)という特集記事では、〈会社に勤めていた夫(50)が死んだ場合、妻(48)はどれだけもらえるのか計算してみよう〉と、何ともドライな前提を立てて、収入、支出、保険などを織り込んで試算した。

 男性誌で「妻が死んだらもらえるお金全リスト」なる特集はなかなか見られないが、女性誌は大胆だ。

 同誌は別の号でも、〈夫の没後に「自営業妻の年金」は半減する!〉(2020年8月4日号)、〈人生100年時代、夫に先立たれて家族がいなくても、明るい老後を過ごせます!〉(2019年4月16日号)など、夫の死後のお金を様々な角度から検証する。

 こうした女性誌の記事にコメンテーターとして数多く登場する経済ジャーナリストの荻原博子氏が解説する。

「近年の『老後2000万円問題』や消費税増税で老後の金銭的な不安が高まり、さらに新型コロナの心配が重なって、“夫が死んだら私はどうなるのか”と不安を感じる妻が目立つようになりました。そもそも日本では相続や年金などを学ぶ金銭教育が確立されていない。女性誌の特集の背後には、そうした妻の不安があるのです」

※週刊ポスト2020年11月20日号