60歳で定年を迎える社会は昔のこと。来年4月に施行される「70歳就業法」によって、企業は70歳までの就業機会確保の努力義務が課されるようになる。

「生涯現役社会」が到来した今の時代、よりよい老後生活を送るためにはどうすればよいのか。定年後のシニアが再就職する場合、どんな仕事に就くかも重要なポイントになってくる。

 人事ジャーナリストの溝上憲文氏はシニアの仕事への適性と将来性の両面からドラッグストア店員を高く評価する。

「高齢化で需要が高まるなか今後も人材不足が続くでしょう。8か月ほどの勉強が目安の資格『登録販売者』を取れば、風邪薬や鎮痛剤といったほとんどの一般用医薬品販売ができるようになります。規制緩和で薬を販売するようになったスーパーやコンビニでも働ける有能な人材として、待遇アップが期待できる」

 また中高年専門ライフデザインアドバイザーの木村勝氏はシニアならではの「育てる力」に注目する。

「子育てを経験して孫のいるシニアは、若い人よりも子供や動物を相手にする業務に向いている。共働きの夫婦が必要とするベビーシッターや家事代行、ペットを飼う独身者のニーズがあるペットシッターは、時間の融通が利くシニアにとって将来有望な職種です。今後求人が増えていく点も安心です」

 ともに1500円以上と高い時給が見込める点も魅力だ。

 同様に「育てる力」を発揮して、定年後に保育補助員として働く選択肢もあるが、体力面の負担とシニアの採用の壁もある。

「保育園などで園内の環境整備や子供の見守りといった保育サポートをする仕事で、保育士の資格は必要ありませんが、ベビーシッターと違って多くの子供の面倒を見るので将来的に続けられるかは疑問です」(前出・溝上氏)

 この先、高齢者の求人ニーズが最も高まりそうな分野は「介護職」だ。

「老人ホームなど介護施設職員やホームヘルパーなどの需要は今後ますます高まるでしょう。この分野は外国人労働者も増えるでしょうが、利用者に温かく接することができる高齢者は周囲からの信頼が厚い」(前出・木村氏)

 埼玉県の老人ホームで働き始めた62歳の男性がいう。

「定年後にフルタイムで働いて月収は20万円ほど。採用時には世代が近いこともむしろ喜ばれました。月に5回ほどの夜勤が年齢的にキツイですが、やりがいもあって待遇に不満はないです」

 一方で10年後を見据える際に欠かせない視点が、業務の「AI化」だ。

「今はコールセンターでシニアが重宝されていますが、10年すればAIの進歩で市場自体がなくなる可能性があります。ファミレスや回転寿司などの調理補助も機械が進んでいるため将来は明るくない」(前出・溝上氏)

※週刊ポスト2020年11月20日号