古くて新しい、仕事と家事・育児の両立問題。近年は、そうした悩みを解決してくれる家事代行サービスが活況を呈している。仕事と育児で手一杯の妻を助けようと、その利用を提案したことが夫婦不和の原因になったという40代男性に、フリーライターの吉田みく氏が話を聞いた。

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「育児で手一杯の妻のためを思って提案しましたが、残念な結果となってしまいました」──そう語るのは、東京23区在住の繊維メーカー勤務、今野達雄さん(仮名・40歳)。家事代行サービスの利用をめぐって夫婦喧嘩になったという。

 家事代行サービスとは、利用者宅へ訪問し、家事に関する専門知識や資格を持ったスタッフが家族の代わりに掃除や洗濯、炊事などを行うものである。

 1時間当たり2000〜3000円程度が相場で、依頼内容にもよるが1回2時間から利用できるものが多い。ライフスタイルや予算に合わせて、頻度を調整することも可能だ。

 近年、子育て世帯の共働き夫婦の増加などもあり、家事代行サービスの需要は高まってきている。

「妻は2歳の娘を育てながらフルタイムで働いています。最近仕事が忙しく、家事まで手が回らないことにイライラしていたので、家事代行サービスの利用を提案しました」(今野さん、以下同)

 今野さん自身も業務量が多く残業続き。本当は家事を手助けしたいが、時間的に厳しいそうだ。そこで提案した家事代行サービスの利用だったのだが、妻の逆鱗に触れてしまうことになった。

「『そのお金はどこから出てくるのよ!』と、すごい剣幕で怒られてしまいました。たしかに給料は高くありませんけど……。ここまでは良いとして、驚いたのは私の母に依頼すると言い出したことです。『身内だし、無料で引き受けてくれるでしょ?』って……、絶句しましたよ」

 妻の母は地方に住んでいるので助けを頼めないが、今野さんの母は同じ区内のマンションに住んでいる。年齢は70歳で、現在は年金暮らし。趣味のフィットネスクラブへ行くのが日課で、それ以外はゆっくりとした生活をしているとのこと。そんな母のことを今野さんの妻は、“暇人”と言い放ったそうだ。

 妻の言い分としては、家事代行サービスを利用したい気持ちはあるが、世帯収入的に気軽に使えるものではないとのこと。これから子供の学費などの出費も増えるので、今はできるだけ無駄使いはせずに貯金に回したいそうだ。そこで妻が思いついたのが、「義母なら無料で家事代行を頼める」という、夫からすると“自分勝手”なアイデアだった。

「きっと母は、私たちが困っているとなれば助けてくれるでしょう。でも、『タダで頼める』という妻の考えや口調からすると、母に嫌な思いをさせることになりそうで……。頼むことが怖いです」

 今野さんが家事代行サービスを提案して以来、妻は「お義母さんに聞いてくれた?」と、催促してくるようになったそうだ。この件を機会に、妻の姑に対する気持ちや態度に不信感を抱くようになった、と今野さんは嘆いていた。

 利用者は増え続けている家事代行サービスではあるが、決して安いサービスではない。金銭的な理由で利用を躊躇うケースがあることはじゅうぶん想像できる。しかし、今野家のように、夫婦2人での育児と家事がパンク状態であれば、思い切って利用すべきケースはあるだろう。

 身内に依頼することで無料、もしくは格安で済むかもしれないが、それには実の息子でも気を遣うことだろう。今野さんの妻の言動から想像するに、義母に頼むことでお金の面では納得できても、今度は“仕上がり”に対して不満を漏らすこともあるかもしれない。

 共働きが当たり前の時代。“家事のアウトソーシング”を誰にどう依頼するかは、多くの人にとって簡単に解決できない悩みの種と言えそうだ。