1等・前後賞あわせて10億円の年末ジャンボ宝くじが全国で発売中だ(12月25日まで)。コロナ禍でつらい1年だったからこそ、大きな夢をつかみたいと思う人も多いはず。しかし、高額当せんをしたことで、これまでと金銭感覚が変わってしまい、人生があらぬ方向へ進んでしまうこともあるかもしれない。良からぬ事態を避けるべく、宝くじに高額当せんしたら、絶対に読んでおくべき冊子が渡される。

『【その日】から読む本 突然の幸運に戸惑わないために』は、1000万円以上の高額当せん者にみずほ銀行から無料で渡される全57ページの小冊子。大金を無駄にしないための様々な心構えが書かれている。

《当せん直後の人のほとんどは、軽躁状態と呼ばれる一種の興奮状態に置かれている》

 一読してわかるのは、高額当せん者はその瞬間から、異常な精神状態に陥るということだ。

《今のあなたは、以前の自分からは考えられないような行動に出てしまう可能性もあります》
《何かをするのは、気持ちを落ち着けてからでも遅くありません。時間はあなたの味方です》

 大金が人間をおかしくすることへの戒めの言葉が繰り返し書かれており、当せんすると自分が自分でなくなってしまうような、空恐ろしさを感じる。僥倖に嫉妬や妬みは付きもので、人間関係への注意も必要だ。

《見ず知らずの人や団体から寄付を求める電話がかかってきたりするということもありえます》
《あなたに知っておいてほしいのは、人間にとって秘密を守るのはむずかしいということです》
《周囲の人々の態度が変わったことで、人間不信になるかもしれません。でも、当せん直後に彼らがさわいだり以前とは違う態度を取ったりするのは、人間として自然な反応だと思ってください》

 十分な心構えがないと、大金によって人生が振り回され、深刻な精神負担にもなりかねない。

《幸運を前にして、何もする気がなくなったという人には、気持ちの切替えが必要になります》
《当せん者のほとんどが、“興奮(軽躁状態)→不安”というプロセスを経て、当せん前の平常心を取り戻していきます。当せん後に感じ始めた不安感は、以前の自分へと戻るために通過しなくてはならない感情なのです》

 落ち着け、冷静になれとくどいほど諭されると、冊子の後半でようやく前向きな話が出てくる。

《まず決めておきたいことがあります。それは、当せんしたことをだれに知らせるかということです》

 ローンや借金などの返済計画を立てたうえで、自身の将来設計とともに、使いみちを考えていく。

《お金はお金でしかありません。お金は何かほかのもの、あなたの人生を幸せにするものに換えてこそ価値を持つものです。だからこそ、後悔しないような当せん金の使いみちをじっくりと考えてください》

 ファイナンシャルプランナーや税理士、時には心理カウンセラーといった専門家の力を借りながら、巨万の富を賢くコントロールせよと説く。

《当せんしても、自分は自分──そう考えて、今までのあなたに戻りましょう》
《当せんは、あなたにとってすばらしい幸運でした。でも、当せんが人生のすべてというわけではありません》

 大金を得ても、元々の性格は変わらないとも書かれていて少しホッとするが、庶民の夢は叶ってみると、意外と楽ではなさそうだ。

※週刊ポスト2020年11月27日・12月4日号