コロナ禍で私たちは「家族の絆」の大切さを改めて思い知らされた。だからこそ、家族間で事前に話し合っておきたいことがある。たとえば夫が亡くなった場合に、遺された妻が困らないように準備しておくべきことは何か。

 住まいに関しては、夫の死後も妻が自宅(持ち家)に住み続ける意思があるかどうかを確認しておく。

 自宅に住み続ける意思がある場合、2020年4月から始まった「配偶者居住権」を設定する。ゆい会計事務所代表の西津陵史・税理士が提案する。

「配偶者居住権は、夫を亡くした妻が、遺産分割により夫名義の家を追い出されないように創設された制度です。夫の遺言書に『妻への相続は配偶者居住権で行なう』旨を記載するとスムーズに設定できます」

 西津氏によると、この配偶者居住権は子にもメリットがあるという。

「妻と子1人で評価額2000万円の自宅を相続する場合、妻が配偶者居住権で1000万円、子が所有権で1000万円を相続します。配偶者居住権は妻が亡くなると消滅して子の所有権だけになるため、自宅は二次相続の際の相続財産に含まれないことになる。子が母(妻)から相続する財産を減額でき、節税効果が得られる可能性があります」

 一方、自宅に妻が住み続ける意思がなく、受け継ぐ子もいない場合は、あらかじめ売却の準備をしておかねばならない。神奈川県在住の80代女性はこう言う。

「子供はなく、夫婦2人暮らしを続けてきましたが、夫が死んだ後も今の住まいで1人で暮らすのは、持病もあって不安。夫の死後は自宅を売り、そのお金でかかりつけの病院が経営する老人ホームに入るつもりです」

 不動産の売却には、所有者であることを証明する「登記済証」など必要な書類がいくつもあるが、なかでも夫婦でぜひ確認しておきたいのが、自宅購入時の「不動産売買契約書」だ。相続問題に詳しいまこと法律事務所の北村真一・弁護士が語る。

「購入時の価格を証明するために必要です。これがないと、売却時の価格の5%のみが取得費として自動計算され、差額は売却益として課税対象になります。つまり、仮に自宅が購入時より安い価格で売れた場合であっても、購入した際の価格を証明できなければ、売却によって利益が出たものとみなされてしまうわけです。その金額が各種控除を上回る場合は、所得税を取られることになってしまいます」

※週刊ポスト2021年1月1・8日号