不幸にして妻に先立たれた場合遺された夫が、妻のことを意外と知らなかったと思い知らされることもあるようだ。都内在住の60代男性はこう嘆く。

「同い年の妻は専業主婦で、家計のことを任せっきりにしていたので、いざ妻が亡くなってみると、どこに通帳や印鑑があるかさえわからなかった。家中を漁るうちに知らなかった妻名義の銀行口座や証券口座があることがわかり、手続きに追われました。子供のいない自分にとって妻を亡くしたショックは大きく、葬儀だってやっとの思いで執り行なったのに……」

 家事全般を妻に任せきりの場合、「どこに何があるかわからない」という男性は実に多い。いざという時のために、夫が妻に確認しておくべきこともやはりあるようだ。ここでは、特にポイントとなる項目を紹介しよう。

 妻の通帳や届出印の在処はもちろん、もし妻が株などの有価証券を所有しているなら、毎年証券会社から届く「取引報告書」の在処だけでも聞いておきたい。この書類でどの証券会社に口座があるかがわかるので、妻の死後、夫の知らないままになる恐れはなくなる。

 また、証券の相続には自らも証券口座を持っている必要があるので注意が必要。もし相続する気がないのなら、一定の年齢を超えたら夫婦で話し合い、株などの有価証券を売却することを検討してもいいかもしれない。

 また、死後には妻の年金手帳や健康保険証なども役所関係の手続きに必要だ。それまで妻に任せきりだった男やもめには慣れない窓口での手続きが続くので、せめて家のどこにあるかを確認し、それぞれどの窓口を訪ねるかなどは把握しておくべきだろう。

 さらに、夫婦間で見落としがちなのが、妻が親や親族から相続している財産についてだ。

 70代男性のケースでは、妻自身が親から相続していた土地や建物をめぐり、妻の死後に実家への問い合わせを何度もせざるを得なかった。もし生前に共有できていれば、夫婦で売却の相談ができたかもしれない。相続問題に詳しいまこと法律事務所の北村真一・弁護士が語る。

「不動産の売却では売却益に約20%の税金が課されます。しかし、相続から3年10か月以内に売却すると、『取得費加算の特例』を使うことで、支払った相続税の分だけ課税価格を下げることができる。つまり親から相続しているものに気づくのが早ければ早いほどいいのです」

 妻の死後、夫が知らない妻の財産に振り回されないためには、親子と同様に夫婦間で共有するための「財産目録」をつくっておくことが重要だ。そこには、連れ合いに知られたくないタンス預金など“ヘソクリ”の在処はもちろん、借金がある場合にも漏らさず書いておく必要がある。大事なことは、財産がどこに、どれだけあるかを共有することで、知られたくない中身については、どちらかの死後に確認すれば十分だ。

 先祖代々の墓がある場合は、妻の希望を聞いておき、夫婦の墓をつくるかどうかを話し合っておくことも大事だ。

「私は次男で、実家の先祖代々の墓は兄が継承しています。まさかこんなに早く妻がいなくなると思わず、自分たち夫婦の墓を用意していませんでした。実家の墓は遠方なので、そこに遺骨を納めてもなかなか墓参りはできないので困っています」(都内在住60代男性)

 この男性は、近所にある霊園なら頻繁に墓参りできると思い探したというが、区画に空きがなく断念したという。

妻に先立たれた場合に備えて聞いておくべき資産の在処8

【1】妻の通帳・届出印
【2】妻の株取引報告書
【3】妻の年金手帳
【4】妻の健康保険証
【5】親から相続したもの
【6】タンス預金
【7】借金
【8】夫婦の墓

※週刊ポスト2021年1月1・8日号