病院に行くか行かないか──1年前にそんな迷いを抱く人はごく少数だったに違いない。「体調が悪くなったり、検査が必要だったりすれば病院に行く。そうでなければ行く必要なんてない」。それが当たり前だった。

 だが、世界で猛威を振るう新型コロナウイルスは、そんな常識を一変させた。感染を恐れ、通院を躊躇う人が増え、「病院に行くこと」で健康を悪化させかねないとの不安が広がっている。

“病院に行かない”ことを考えたい理由は、コロナだけではない。

 12月15日、政府は75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を現行の「1割負担」から「2割負担」へ引き上げる方針を閣議決定した。単身世帯なら年収200万円以上が対象となり、約370万人が該当する。最短で2022年10月から始まる予定だ。

 窓口負担はどれほど増えるのか。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が指摘する。

「厚労省の『平成30年度国民医療費の概況』によると、75歳以上の一人当たり年間医療費は男性76万5300円、女性65万1900円で、1割負担なら男性約7万6000円、女性約6万5000円です。

 2割負担になると金額が倍になり、男性がひと月約6400円、女性約5400円の負担増になります」

 この決定に大きなショックを受けたのは都内在住の77歳男性だ。

「医療費がいきなり2倍になると聞いて衝撃を受けました。現役時代は自営業で、いまはわずかな蓄えと国民年金のみで細々と暮らしています。体力も落ちてこれからますます病院のお世話になることが増えるのに、食べていけるか不安で仕方ありません」

 この男性のような後期高齢者にさらに追い打ちをかけるのが、「紹介状なし」の負担増だ。

 現在、200床以上の大病院を紹介状なしで受診すると初診で5000円以上、再診は2500円以上の「選定療養費」を徴収される。政府はこれを初診7000円以上、再診3000円以上に増額する方針も閣議決定した。

「特に再診は受診するごとに毎回3000円かかり続け、紹介状なしで大病院を受診し続ければ、かつてない負担がのしかかります」(室井氏)

※週刊ポスト2021年1月1・8日号