新型コロナウイルスにより経済情勢が大きく変わる中、生き残る企業と危うくなる企業の姿が鮮明になりつつある。コロナ禍で企業業績に差が出る背景に何があるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。

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 今の日本企業の業績は二極化して「K字型」になっている。上向きの企業が3分の1、下向きの企業が3分の2である。つまり、新型コロナ禍や消費減退で苦戦を強いられている業界や業種の中にも、好業績の企業が3分の1は存在するのだ。

 たとえばスーパー業界の場合、GMS(総合スーパー)やモールを展開するイオンは2020年3〜8月期の連結営業利益が前年同期比60.7%減の339億円に落ち込んだ。セブン&アイ・ホールディングス傘下のGMSのイトーヨーカ堂も2021年2月期の営業利益を前年比23.3%減の50億円と見込んでいる。

 一方、SM(食品スーパー)は好調だ。なかでもライフは2020年3〜8月期の連結営業利益が169億1400万円で前年同期比204%増に拡大し、ヤオコーも2020年4〜9月期の連結営業利益が158億2700万円で同45.6%増となった。この2社は品質の良い食材を揃えているため、巣ごもり生活により増加した自宅で料理を作る人たちの支持を集めている。とくにライフは主婦に大人気で、その大きな理由の一つは、品質や価格設定がきめ細くて顧客が「正直さ」を感じていることだ。

 また、ファストフード業界ではマクドナルドやケンタッキーが巣ごもり需要で堅調だ。マクドナルドは2020年1〜9月期の経常利益が252億7600万円で前年同期比19%増となり、ケンタッキーは2021年3月期の営業利益を同25.4%増の60億円と予想している。

 両社の特長は、ウーバーイーツや出前館などの配達代行サービスに加え、一部の店舗で自前の配達サービスを展開していることだ。さらにマクドナルドは累計約6600万ダウンロード(2020年3月時点)の公式アプリで、非常に便利な注文システムを提供している。

 巣ごもり需要では、ニトリやアイリスオーヤマも業績を伸ばしている。ニトリはキッチン用品や在宅勤務用の机や椅子が好調で、2020年3〜8月期の売上高が前年同期比12.7%増の3624億円に達し、中間決算としては過去最高を記録。アイリスオーヤマはマスクに加えて調理家電や在宅勤務用の椅子などが伸び、2020年12月期の売上高が前期比40%増の7000億円になる見通しだ。

 これらの好調企業に共通するのは、世の中の変化に合わせて「テキパキ」動くとともに、顧客ニーズに「きめ細かく」対応していることである。逆に言うと、それができていない企業は業績が悪化しているのだ。

大塚家具、三菱重工業の教訓

 一例は大塚家具だ。同じ業界で絶好調のニトリやIKEAとは対照的に赤字決算が続き、居座ってきた大塚久美子社長がついに辞任した。しかし、もっと早く金融資産が残っている段階で整理・解体していたら、社員にそれなりの退職金を配れたはずである。

 あるいは、三菱重工業。累計約1兆円の開発費(国費も約500億円)注ぎ込んだ三菱航空機の小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」は設計ミスなどで、ついに事業そのものが事実上凍結されることになった。しかし、同社は過去にビジネスジェット旅客機「ダイヤモンド(MU-300)」も型式証明の取得が大幅に遅れたことがあり、その教訓に学んでいないと言わざるを得ない。

 さらに三菱重工業は、かつて世界一のシェアを誇った造船部門も凋落の一途をたどり、大型客船事業も撤退。このまま行くと同社は100年前の轍を踏んで軍需(防衛)産業に傾斜するのではないかと私は危惧している。旅客機は戦闘機に、客船は軍艦に、ブルドーザーは戦車に化けるからだ。

 実際、すでに同社は航空自衛隊「F2」戦闘機の後継として政府が日本主導で量産を目指す次期戦闘機の開発主体となっており、アメリカのロッキード・マーチンが技術支援し、エンジンはIHI、機体はスバルが担当するという。まさに「産軍連携」であり、この状況を座視していたら「いつか来た道」に向かいかねないと思う。

 いま業績が低迷している企業は「K字型」の上向きに行っている3分の1の企業のやり方を徹底的に研究し、世の中の変化に合わせて「テキパキ」と動き、顧客ニーズに「きめ細かく」対応すべきである。そうすれば、どんな業界でも新型コロナ禍を克服して生き残る道筋が見えてくるはずだ。

 この「テキパキ」と「きめ細かく」は、企業だけでなく個人にも言えることだろう。そして、その兆候はすでに見えている。たとえば、テレワークの長期化とともに地方移住が活発になり、軽井沢や熱海では中古の別荘・マンションが飛ぶように売れている。

 どこに住み、どんな働き方をして、どう稼ぐか―新型コロナ禍を機に、新たな動きが広がっているのだ。政治・経済に対する感度を磨き、世界の動きを読みながら、自分なりの判断基準を持って行動すべきである。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は『日本の論点2021〜22』(プレジデント社)。ほかに小学館新書『新・仕事力 「テレワーク時代」に差がつく働き方』等、著書多数。

※週刊ポスト2021年1月15・22日号