新型コロナウイルス流行の当初から、日本の空港検疫はその「甘さ」を指摘されてきた。だが昨年12月、変異ウイルスが国内で初めて確認されて以降、政府は水際対策の強化に取り組んでいる。現在は外国人の新規入国を制限しており、中国や韓国など11カ国・地域とのビジネス往来も停止されている。海外から帰国・入国するすべての人に対して、出国前72時間以内に検査を受けた陰性証明書の提出などを求めている。

 ようやく政府が本腰を入れてきた検疫体制。記者(30代男性)はこの検疫強化の真っ最中(陰性証明書の提出が義務付けられる1月13日以前)に、タイから日本へ帰国した。その時に体験した検査体制や空港検疫所の職員の対応などをレポートする。

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 タイに在住していた私にも、年末年始、日本国内では帰省を自粛するムードが漂っていたことは、ひしひしと伝わってきた。「なぜ、日本に今帰るのか」「こんな時に帰ってくるな」など、帰国者が批判の矢面に立たされているのも理解していた。だがどうしても帰国しなければならない事情があり、せめてもと年末年始は避けて帰国した。

 タイ・バンコクのスワンナプーム空港から成田空港への便は、JALやANAの航空便が1日1便、エコノミーで片道6万〜7万円ほど。昨年10月から運航を開始したJALが100%出資するLCC「ZIPAIR」は片道1万8000円。私はZIPAIRに搭乗した。乗客はタイ人と思しき客が1名、日本人(私)1名のわずか2名だった。それでも飛行機を飛ばしてくれた姿勢には感謝しかない。

 機内では乗客の数に対して、明らかにCAスタッフ過多の貸し切り状態だった。日本らしい丁寧なおもてなしを受けながらも、到着予定時刻より30分ほど早く到着。約1年ぶりに降り立った日本で最初に出迎えてくれたのは、検疫職員たちだった。

職員が「ご協力ありがとうございました」とおじぎ

 通常ならここで入国手続きとなるが、今は簡単には入国できない。職員たちに先導されて、帰国前に2週間滞在していた地域と入国後2週間の待機場所を記入した「健康カード」をもとに“受付”が行われる。

 その後、別の場所で職員から「健康カード」をもとに、待機場所への移動手段などを確認される。同時に厚生労働省からの「質問票」への回答を保存したQRコードを提示する。「質問票」とは、便名や氏名、滞在先、健康状態、LINEによる健康確認への同意などをウェブサイトから入力したもの。職員からは「公共交通機関を使わないように」と念押しされた。

 そして、いよいよ唾液による抗原検査を受ける場所に連れて行かれる。梅干しとレモンの写真が貼られたブースで、試験管のようなものに唾液を入れる。それが終わると、広々した待合所に誘導されて、そこで検査結果を待つという具合だ。

 職員曰く、「今日は人が少ないですね。普段なら何十人もいるんですけどね」とのこと。確かに、この日は早朝ということもあってか、検査を受けるのは私のほかは、前述の便の乗客1人だけだった。検査人数が少ないこともあってか、30分ほどで結果が出た。無事に「陰性」の結果を受けて、ようやく入国手続きだ。

 パスポートを提示して入国を果たすと、先導してくれた職員たちが「ご協力ありがとうございました」と言い、深々とおじきをしてくれた。命がけで仕事をしている職員たちから、こんなことをされてはたまらない。胸が熱くなった。

 成田空港の国際線到着ロビーでは、鉄道に向かうエスカレーター前に駅員が立っていた。公共交通機関を使おうとする人への抑止力というわけだろうか。私は実家に帰る前に、ホテルで自主隔離をするため、予約した帰国者専用バスに乗り、ホテルへと向かった。

「甘い」と批判されがちな日本の空港検疫だが、懸命に働く職員たちの姿がそこにあった。彼らの努力を無駄にしないためにも、帰国者はより慎重な姿勢が求められるだろう。