消費者物価や賃金の変動に合わせて受給額が変わる年金。コロナ不況と外出自粛が続くにもかかわらず、今年4月分(6月支給)から減額される。減額幅は「0.1%」だ。厚生年金のモデル世帯(夫婦で年金の月額約22万円)では1か月あたり228円減らされ、国民年金の満額受給の人は月66円減額される。

 来年からはもっと大幅に減らされる。厚生年金モデル世帯の場合、仮にコロナ不況が反映された実質賃金変動率がマイナス1%となれば、来年6月の支給分から夫婦の年金額は1か月あたり約2200円、マイナス2%なら毎月約4500円が削られる計算だ(他の諸条件が今回と同じ場合)。

 高齢者の生活崩壊につながりかねない大幅な支給カットという危機の始まりといっていい。

「年金生活者は収入が保証されているからコロナ不況でも困らない」。そうした理屈から、コロナ対策である個人事業主への「持続化給付金」や「家賃支援給付金」、被雇用者の「雇用調整助成金」(休業補償)などは主に現役世代が対象だ。だが、多くの年金生活者がコロナ不況の影響をまともに受けている。

 元機械メーカー社員のAさん(68歳)は定年後、関連会社で再雇用され、65歳からは倉庫管理担当のアルバイトで月8万円ほどの収入を得ていたが、昨年秋に会社から解雇を通告された。

「年金をもらっているからいいでしょう」というのが人事担当者の言い分で、解雇通告を受けたのは65歳以上の年金受給者ばかりだった。Aさんの話だ。

「年金だけでは生活が苦しいからアルバイトをしてきたんです。それなのに、同じ仕事をしていても年金をもらっていない人は会社から自宅待機の休業扱いにしてもらって、国の補助金で給料の6割の休業補償を受けている。われわれ年金生活者だけがクビになって休業補償もない。次の仕事も見つかっていません」

 今年70歳になる1人暮らしの女性Bさんは50代の頃からクリーニング店の支店を切り盛りしてきたが、コロナで売り上げが落ち込むと、上司から「後進に道を譲ってほしい」と告げられた。

「パートのなかで時給が一番高かったからでしょうね。若い頃は病気がちであまり働けなかったから年金は少ない。家賃を払ったら残らないくらい。わずかな預金で細々と食いつないでいる状態ですが、蓄えがなくなった時のことを考えると……」

 と途方に暮れている。

 コロナ禍で出費が増えたという声もある。元会社員のCさん(71歳)は93歳になる母親と2人暮らし。三度の食事を作り、週1回、母を車椅子で病院に送迎する“老老介護”をしている。

「母も私もシルバーパスがあるのでバスは無料。マイカーは費用がかかるからと3年前に手放しました。しかし、コロナが広がって公共交通機関を使うのは心配になり、今はタクシーで通院しています。片道1200円で月に1万円ほどの出費です。

 人混みを避けて食品の宅配サービスを利用するようになったが、スーパーの特売品より割高で、食費は3割ほど増えた。身を守るための出費がかさんでいる」

 菅義偉首相や麻生太郎・副総理兼財務相、田村憲久・厚労相らがそうした現実に目を向けていれば、コロナ禍での年金減額という国民の傷口に塩を塗り込むような政策が実行されるはずがない。

※週刊ポスト2021年2月12日号