緊急事態宣言解除の見通しが立たない中、菅義偉・首相は「国民の皆さんにはもう一踏ん張り」と言う。しかし、国民生活の本当の「禍」はむしろ今を耐えた後にやってくる。年金カット、医療・介護の負担増、値上げラッシュ、そして増税など、様々な分野の“コロナ後遺症”が国民の懐を直撃し、資産が奪われかねないのだ。

 ポスト・コロナに向けた国民への負担増はまず年金減額から始まった。「年金生活者はコロナ不況に困っていない」という理屈で、厚労省はコロナ渦中にもかかわらず、年金を今年4月分(6月支給)から「0.1%」減額することを決定した。

 これは始まりに過ぎない。政府はコロナ不況を、年金支給を大幅にカットできる“好機”と見ているからだ。

 年金制度は新年度(4月)から、実質賃金が物価より下がった場合、賃金の下げ幅に合わせて年金を減らす新ルールが適用される。

「制度を支える現役世代の給料が下がれば、高齢者にこれまで通りの年金を払うわけにはいかない。だから減らしてもらう」

 そういう制度だ。

 折しも、現役世代はコロナ不況によるリストラや休業で賃金が大きく下がった。感染が完全に収束して経済が回復するまで長ければ数年、賃金低下の傾向は続くと見られている。そうした状況で新ルールが実施されれば、年金はこれから毎年、引き下げられていくことになる。どのくらい減らされるのか。

 本誌・週刊ポストは「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏の協力のもと、「共働き夫婦」(年金合計月額約27万円)、「夫が元サラリーマン、妻が専業主婦」(同約22万円)、「自営業だった夫婦」(同約13万円)の世帯のタイプ別に、2025年までの年金減額を試算した。

 昨年3月以降、最新のデータが公表された11月まで実質賃金(前年比)は9か月連続で低下し、その間の平均はマイナス1.3%。第1回目の緊急事態宣言下にあった昨年4〜5月は前年比マイナス2.3%まで落ち込んだ。そうした前提を踏まえて、実質賃金が20年から22年までの3年間、「年間2%ずつ低下」としてシミュレーションした。

 その結果、2025年には「共働き夫婦」世帯の年金は月約1万4000円(年間約17万円)も引き下げられ、「サラリーマンと専業主婦」世帯は月約1万円(年間約14万円)、「自営業夫婦」世帯でも月約6900円(年間約8万円)引き下げられる計算になる。

 遠い先の話ではない。早くも2年後には、共働き夫婦なら年間約7万円もの年金が減らされることになるのだ。

賃金が上がっても年金は増えない

 一方、ワクチンの普及などでコロナが完全に収束すれば反動で消費が大きく伸び、経済は急回復するとの見通しもある。それに伴い物価は上昇し、賃金もアップすることが予想されている。

 ところが、年金はそれに連動して上昇するというわけではない。北村氏が語る。

「賃金や物価が上昇すると、今度はマクロ経済スライドという仕組みが発動されます。これは本来なら物価や賃金に合わせて年金を引き上げる分から、被保険者数の減少、平均寿命の延びを勘案した『調整率』を差し引いて年金額を計算し、支給額を低く抑えるものです。そのため、コロナ後に経済が回復しても、年金生活者には恩恵はほとんどないといっていい」

 まさに「年金減額の罠」である。

 すでに受給している世代だけではなく、今後年金を受け取る世代も、「賃金が上がろうが下がろうが、年金は下がり続ける」仕組みから逃れられない。

※週刊ポスト2021年2月19日号