3月に入り、ようやく少しずつ春の訪れを感じられる気候になってきた今日この頃。だが気になるのは、本格的な花粉シーズンの到来だ。テレビなどでは連日のように花粉の飛散情報が伝えられているが、今年の花粉はどうなるのか。気象予報士の田家康さんが解説する。

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 花粉症はもはや「国民病」と言っても過言ではないだろう。約10年毎にスギ花粉症についての実態調査を行っている東京都保険局の調査(平成28年度)によると、軽症から重症まで含めた、東京都全体の花粉症にかかっていると推定される人の割合(推定有病率)は48.8%とほぼ半数を占める。10年前(平成18年度)の同調査では28.2%と推定されており、10年間で2割増えたことになる。特に多いのが15才から40才までの層で、全体のおよそ6割が花粉症にかかっているという。

 スギやヒノキの花粉の飛散量は毎年異なる。これは、樹木が前年の夏に花芽の中に翌年分の花粉を作るのだが、その量が気温や降水量によって違ってくるためだ。夏の日射量が多いと光合成が活発化して多くの花粉が作られ、反対に日射量が少ないと花粉の量は少なくなる。

 大量に花粉を作った翌年は少ない傾向が見られることもある。とはいえ、東京の飛散量を長期的に見れば、2011年や2013年のように平均の2倍を超える極端な年があるものの、おおむね横ばい傾向だ。花粉症の推定有病率が増加しているのは、花粉症に一度かかるとほとんど治ることはなく、その数が累積していくためだろう。

 2021年の花粉飛散予報はどうなるか。気象会社各社によると、「平均よりは少ないが昨年よりは多い」ようだ。昨年夏の気温がやや高めにあったことや、サンプルとして実際に花芽を調べた結果などを根拠にしている。2011年のように大量の花粉が飛ぶわけではないが、昨年より多いことには注意が必要だろう。

 スギやヒノキは、天気が良いと朝に大量の花粉を飛ばす。特に、雨の日の翌朝は花粉量が増える傾向にあり、この花粉が風に乗って都心に飛散する。東京上空で言えば、12時頃に最も多くの花粉が舞う。とはいえ、天気の良い日は日射によって地面が温められることで上昇気流が起き、上空1kmまで「混合層」という空気のドームが形成される。花粉はこのドームの上を漂っているため、日中は地表に落ちてくる量は少ない。本当に地表の花粉飛散量が多くなるのは、混合層が冷えて上空の花粉が落下してくる18時頃となる。

 それでも、春の気候を感じながら森林浴などでリフレッシュしたいと思う人もいるだろう。そんな人に耳寄りな情報がある。花粉を飛ばす代表的な植物として知られるスギの木だが、実は全てのスギが花粉を飛ばすわけではない。たとえば千葉県北東部にある山武市で250年以上にわたり栽培されている「サンブスギ」は、スギ花粉を飛ばす雄花がほとんどない。山武市のスギ林の87%がサンブスギであるため、マイカーでドライブがてら山武市の「さんぶの森公園」や九十九里浜の「蓮沼海浜公園」などを訪れ、森林浴で鋭気を養うのもいいかもしれない。

 そのほか、近畿地方では京都市北部育てられている「北山杉」もある。北山杉は実がならないため、花粉を飛ばすこともない。京都市街から北西に20kmほどで行けるため、観光のついでに足を伸ばしてみてはどうだろうか。春の到来を着実に感じさせる休日になるだろう。

【プロフィール】
田家康(たんげ・やすし)/気象予報士。日本気象予報士会東京支部長。著書に2021年2月に上梓した『気候で読み解く人物列伝 日本史編』(日本経済新聞出版)、そのほか『気候文明史』(日本経済新聞出版)、『気候で読む日本史』(日経ビジネス人文庫)などがある。