遺産を巡り家族や親族が争う「争族」が増えている。特に、きょうだい間で揉めた場合は、ひとたび関係に亀裂が入ると深刻化するケースは少なくない。税理士法人アイエスティーパートナーズ代表の高野眞弓さんは、「きょうだい全員の生活レベルが同じ程度ならいいのですが、所得格差が大きいと、余裕のない方が“もっとよこせ”と主張して、揉めることになる」と話す。

 兵庫県芦屋市に約200坪の土地を持つ資産家の長谷川さん(仮名)の兄と姉もそうだった。長男、長女、次男、次女(長谷川さん)の4人きょうだいのうち、唯一未婚だった長女が母の面倒を見てきたという。

「母の死後、長女が長年の介護疲れもあって不満が爆発。すでに80代にさしかかろうとしていた長男を味方につけ、実の弟と妹を相手に“平等なのはおかしい。私が多くもらうべき”と裁判を起こしたのです。

 母の遺言書などもなかったため、裁判は5年近く続きました。皆高齢なので、裁判に疲弊してきて……そのうち、実家に関しては、“公示価格(国土交通省が定める地価)分のお金を長男と長女に全額渡す”ことを条件に裁判は取り下げられ、貯蓄などのほかの遺産は均等に分けることに。これで解決したかに見えました。

 しかし、今度は第三子である次男が、私に『姉さんたちを黙らせてやったんだから、お前の取り分の遺産はおれがもらっていいはずだ』と言い出したんです。実はその頃、長女が母と住んでいた家から出て、代わりに次男が住んでいました。それで家を売ることができず、次男はそこに住みながら借金をして上の2人に渡すお金を工面してくれました。ですが……」(長谷川さん)

 長谷川さんは、現在も兄である次男と“持久戦”になっている。このややこしいきょうだいげんかについて、相続終活専門協会理事の貞方大輔さんはこうみる。

「母親が生きているうちに自宅を長女のものにしておけば、こんなに揉めることはなかったでしょう。ただ、そのまま長女だけに自宅の名義を移しても、この家族ならおそらく後にまたトラブルになる。表面上は長女が買ったことにして、母親が自宅とは別にマンションを用意してあげるなどしておけば、ここまで大きな争いにならずにすんだのではないでしょうか」

※女性セブン2021年3月11日号