コロナ禍の外出自粛要請により、フードデリバリーの利用は急増。手軽に外食気分を味わえるため、自宅生活でのストレスを発散できた人も多いだろう。

 新規参入企業も増え急成長を見せるフードデリバリー業界だが、問題点も少なくない。中でも料理を運ぶ配達員による交通トラブルは対応が難しいケースも。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。

【相談】
 先日、フードデリバリーの自転車配達員と接触。結果、ヒザを強打。その場でデリバリー会社に連絡を取ったのですが、回答はメール。要約すると「私どもは、お店と依頼者様の間を取り持っているだけであり、あなた様と配達員で処理をお願いします」とのこと。本当に会社には責任がないのでしょうか。

【回答】
 当該デリバリー会社の理屈は、デリバリーシステムを利用する飲食店、もしくは顧客と配達員との間で配達契約が成立し、会社は単に飲食店と顧客と配達員がマッチングする情報を提供しているに過ぎないというものです。

 飲食店か顧客の近くで、待機中の配達員のスマホに配達依頼情報が入り、引受けを回答すると詳細情報が送信され、食事の代金や配達手数料などはデリバリー会社を介して支払われる仕組みです。

 会社は独立した事業者としての配達員とシステム利用契約を締結し、社名ロゴの入った容器の使用を義務付けていますが、配達員に対しては指揮命令権がなく、配達員が仕事を選べる仕組みになっているのでしょう。

 通常、従業員が業務中に過失で事故を起こすと、使用者は賠償責任を負います。この使用者責任は他人を使って利益を得る以上、損害を生じさせたときは責任を取るべきという報償責任の考えや事業活動に伴い危険が拡大することを理由にする危険責任の考えによるものであり、雇用関係になくても、指揮命令関係があれば、使用者責任が認められる場合があります。

 この点、デリバリー会社が配達員を指揮命令せず、配達引受けが配達員の自由な意思に任せられるという建付けだと、使用者責任を問うのは難しいかも知れません。

 しかし、デリバリー会社は配達で店や顧客から利用料を受け取る一方、配達員の運転いかんで事故発生を予想できるはず。無理な配達引受けを助長するような運営は論外ですが、研修や安全教育など安全運転普及への努力や保険加入の確認などをしないままに事故が増えた場合、いずれデリバリー会社の責任は問題になりそうです。

 なお、配達員と運送委託契約を結び、安全教育を実行しているデリバリー会社もあると思います。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。

※週刊ポスト2021年4月2日号