著名人の自殺も相次いで報じられた2020年。警察庁と厚労省の発表によると、2020年の自殺者数は2万1081人で、リーマン・ショック後の2009年以来、11年ぶりに増加した。注視すべきは、男性の自殺者数は11年連続で減少したのに対し、女性の自殺者数は2年ぶりに増加に転じた点だ。年間7026人で、過去5年間で最多となった。

 今年に入っても増加傾向は続いている。速報値によると、今年2月に自殺した女性は531人で、前年同期に比べ22.6%増加。2020年6月から9か月連続で前年を上回った。社会学が専門の桃山学院大学准教授の平野孝典さんが分析する。

「女性は男性に比べて、非正規雇用が多かったり、家事や育児の比重が大きかったりして、コロナ禍の影響を受けやすいと考えられます」

 野村総合研究所の調査では、パート・アルバイト女性のうち約3割が「コロナ以前と比べてシフトが減少している」と回答。推計によると、シフト回数がコロナ前の5割以下で休業手当も受け取れない「実質的失業」状態のパート・アルバイト女性は103万人に上る。

「女性の非正規労働者は、今年1月は前年同月比で68万人も減りました。これは男性の3倍超にも上ります。雇い止めが進んでいる実態が明らかになりました。非正規で働く女性は男性の約2倍もいます。コロナに限らず、不況でまず窮地に立たされるのは女性なのです」(平野さん)

 経済的な困窮だけではない。厚労省の発表によると、「働く女性」に比べ、主婦や年金を受給する高齢女性など「労働による収入を得ていない女性」の自殺は約3倍も多い。

「コロナ禍では、定職を持たない主婦や高齢女性がさらに追い込まれた可能性が高い。理由は、自粛生活によって外部との接触が減って孤独感が増したこと。コロナ禍でも仕事を持つ人であれば必要に応じて社会との接点がありますが、主婦であれば、趣味の友人やママ友、親族とも会う機会が減りました。子育ての悩みなども相談できず、孤立感や疎外感が増して、精神的に不安定になった人も多いはずです」(精神科医の片田珠美さん)

 また、厚労省は主婦に多い悩みとして「学校の休校や緊急事態宣言による自粛生活などで、夫婦や親子の時間が増え、家族関係がぎくしゃくしたケースもある」と分析する。

 家事を担うのはいまだに女性であることが多い。総務省調査によると、実際に家事にかかわる時間は、妻の1週間平均3時間28分に対し、夫はわずか44分。依然、家事分担の偏りがある現状が見て取れる。

 東京都在住の主婦・佐藤結子さん(47才・仮名)は夫のリモートワーク生活で「精神的に追い詰められた」と話す。

「私が目の前で掃除をしていても、夫は無視。昼ご飯を出せば、食器を下げるどころか『ごちそうさま』すら言いません。でも、やっていない部分が目に付くと、“家事はどうした”と指摘する。一日中監視されているようでした。主婦なので家事が“仕事”なのは理解していますが、息抜きくらいさせてほしかった。幸い夫は出社するようになりましたが、あの生活が続いていたら、耐えられなかったかもしれないです」

 日本社会には、女性が苦しみやすい構図がまだまだ残っているようだ。

【相談窓口】
「日本いのちの電話」
ナビダイヤル0570-783-556(午前10時〜午後10時)
フリーダイヤル0120-783-556(毎日午後4時〜午後9時、毎月10日午前8時〜翌日午前8時)

※女性セブン2021年4月8日