企業に対して、従業員に70歳まで雇用機会を提供する努力義務を課す「70歳就業法(改正高年齢者雇用安定法)」とともに、今年4月からスタートする新制度として注目しておきたいものがある。企業が正社員と非正規社員の待遇差を解消しなくてはならない「同一労働同一賃金」の制度だ。『週刊ポストGOLD 2021改訂版 あなたの年金』より、ポイントを解説していく。

 同制度はすでに大企業では2020年4月から適用がスタートしているが、1年遅れで中小企業にも適用されることになる。社会保険労務士の北村庄吾氏が解説する。

「有期契約社員やパート、アルバイト、再雇用の嘱託社員など非正規労働者の立場であっても、正社員と同じ内容の仕事をしている人には、同じ賃金を支払うべきだとする趣旨の制度です。正規・非正規間に合理的な理由のない待遇差が認められなくなるのは、企業側にも従業員側にも、非常に重要な大改正となります」

 60歳で定年を迎えたあと、嘱託社員などとして再雇用される場合に、同じような業務に携わっているのに給料が50代と比べて“半減”するようなケースは珍しくなかった。「元部下から指図されるし、やっている仕事内容はそんな変わらないのに実入りだけが下がる。やっていられない」(60代の再雇用社員)といった声は多くの職場で聞かれたが、そうした雇用環境に変化が生じる可能性があるというのだ。北村氏が続ける。

「同一労働同一賃金を巡っては、過去に争われたケースでいくつか最高裁での判例が出ています。それらを参考にしながら、自分の待遇が適切かをチェックしてみるのもいいでしょう。

 たとえば、2020年10月には日本郵便での正社員と非正規社員の待遇差を巡って、最高裁で『不合理』とする判決が出ています。このケースでは、非正規社員に対して、年末年始勤務手当、扶養手当、夏期・冬季休暇手当、有給病気休暇、祝日手当が与えられていないという福利厚生の待遇差が違法だと判断されました」

 その一方、東京メトロの子会社など別の企業に対しての最高裁判決では、賞与や退職金についての正規・非正規間の待遇差が「不合理とはいえない」という判断が出ている。自分の待遇に疑問がある場合は、どうするべきか。

「基本的には、都道府県労働局に相談して紛争解決の“あっせん”を依頼する方法が最も望ましいでしょう。弁護士などに依頼して会社と交渉するよりも、手間も費用もかからずに済みます」(北村氏)

 60歳以降も長く働く時代、自らの雇用環境が適切なものなのか、正確な知識を身につけて行動していかなくてはならない。

※週刊ポスト2021年6月1日号増刊『週刊ポストGOLD 2021改訂版 あなたの年金』より