お笑いコンビ・ぺこぱの松陰寺太勇とメイプル超合金のカズレーザーが、ラジオ番組で大食い企画に苦言を呈したことで、SNSでも話題となった“フードハラスメント”。もともと大食漢ではない人が無理して食べることに、2人は「誰も得していない」や「虐待」という言葉を使って、苦い経験を語っていたのだ。

 ただ、こうした“無理に食べさせられて困る”という問題は、テレビ番組だけの話だけではない。日常生活でも「このぐらい食べられるでしょ?」と苦しめられた経験を持つ人は多く、特に男性はその対象になりやすいようだ。実際の経験者たちの声を集めた。

 広告業界で働く20代の男性会社員・Aさんは、コロナ禍で上司や顧客と飲食をする機会が激減した。お酒を飲むのも食べるのも好きだというAさんは、「会社関係の飲食は別に嫌いではない」というが、「残り物を食べろ」などと強要される風潮が大嫌いだった。

「例えば飲み会では、『若いんだから食べろ』『もったいないから食べろ』などと言われ、僕に残りものがまわってくるのがお決まり。『僕は“残飯処理係”じゃない!』そう心で叫んでも、実際は食べるしかありませんでした」(Aさん)

 一度、Aさんがターゲットにされると、上司や先輩の男性社員、後輩の女性社員らが、唐揚げやサラダなどといった大皿の残り物をAさんの前にかき集めるのが日常の光景だった。そんなAさんは入社3年で体重は10キロ増加。「最近はコロナ禍で、飲み会がなくなって、少し体重も減ってきました。快適な生活です」と話す。

 メーカーに勤める30代の男性会社員・Bさんは、新卒で入社後から20代後半まで所属していた部署の上司が、「無意識かつ善意」だったため、「本当に困った」と振り返る。

「やたら『金ないだろ? 食わせてやるから』と言って、量の多さが売りのお店に連れていきたがる50代の上司が面倒でしたね。おごってもらえるのはありがたいけど、もう学生時代のようには食べられません……。残業途中に食べに行った中華料理店では、『大盛りくらい食えるだろ』といって、大盛りのラーメンにチャーハン、餃子……と勝手にどんどん注文されてしまいました。善意でやってくれているのはわかるので、無碍に断りにくいし、だからといってそんなに食べられない。正直、こちらの希望は無視なのかと。トラウマです」(Bさん)

離れて暮らす息子へ母親からの“愛情表現”

 ちなみにハラスメントではないが、仕事関係だけでなく、学校や家族間での「たくさん食べるように」というプレッシャーに困惑する人もいる。

 都内のIT企業で働く30代男性会社員・Cさんは、4年前に実家を出て一人暮らし中。帰省するたびに、「母親からの食事のプレッシャーが大きくなる(笑い)」と本音を明かしてくれた。実家に帰ると母親から「これも好きでしょ、どんどん食べて」と言われ、お腹いっぱいでも食べさせようとするそうだ。

「今は控えていますが、以前は近県なので1か月に1回くらいは帰っていました。僕が好きな食べ物を用意してくれるのは嬉しいんですけど、山盛り。『もう食べられない』と言っても、持ち帰りになってしまう。たぶん、僕がまだ子供の時のままのイメージで、かつ『一人暮らしの男は食に困っている』という認識なんでしょうね」(Cさん)

 その認識は“仕送り”からも見て取れる。Cさんは、「とにかくすごい量なんですよね。大量のレトルト食品と実家の近所の激安スーパーで買った野菜でいっぱいのダンボールが定期的に送られてきます。もう働いているし、自分でも買えるんですけどね」と苦笑する。

 Cさんも、離れて暮らす子供を心配する母親の気持ちは理解しているし、感謝もしている。だからこそ逆に「断ったら寂しい気持ちにさせてしまいそうで、それはできない」と、母への配慮も口にする。こうなるともう、親子間の愛情表現の一種と言えるだろう。

 たくさん食べさせたい人と、もう食べられない人。このミスマッチに様々な局面で悩まされている人たちは、意外と少なくないようだ。