家族の間で最もこじれやすいのが「相続」に関する問題だ。都内在住で長男と同居中の80代男性は、ワクチン接種が進んだら遺産相続を巡る家族会議を開こうと考えている。

「コロナでいつ死ぬか分からないという気持ちになったこともあり、家に次男と長女を呼んで相続の話をする予定です。

 これまでは自宅を長男に譲り、残りの財産を3人で等分してほしいと伝えてきました。ところが、コロナの最中に次男が私を心配して何かと面倒を見てくれた。そこで、長男に手厚くしていた配分を改め、『遺産は兄弟で均等に分けてほしい』と伝えようと思っています」

 コロナ禍が落ち着き、相続について話し合う家族会議が開きやすいのはたしかだろう。しかし、進め方には注意が必要だ。

「この80代男性のようなケースは、トラブルにつながりかねません」と話すのは、夢相続代表で相続実務士の曽根惠子氏だ。

「相続の相談件数はこの1年半の間は減少傾向でした。これから徐々に顔を合わせる機会が増えていくのはいいのですが、久しぶりに集まった席では、『溜まっていた不満を言い合う』という流れにもなりがちです。この80代男性の場合、直近で次男が優しくしてくれたからといって手厚い配分にすると、今まで同居して面倒を見てきた長男が不満を訴えるリスクが高い」

 コロナ禍でただでさえストレスが溜まっていることからも、感情的になりやすいと曽根氏は分析する。

 どんな分け方をすると子供たちから「不公平だ」という不満が噴出するか、ケースバイケースで事前には分かりにくいから難しい。

 財産を子供同士で均等に分けるというのは、一見すると“公平”だが、冒頭の男性のケースからも分かるように、「同居して面倒を見ているのに、なぜ同額なのか」という不満が出る可能性もあるし、「ずっと私立に通っていた兄のほうが、これまでに出してもらった学費が多い」「孫が多いからといって、弟への生前贈与の額が多かった」といったことからトラブルになることもある。

 一方で、兄弟姉妹間で遺産の配分に差をつけようとすると、「どういう理由で兄の取り分が多いのか」「ウチがいちばん介護の負担が大きかったのだから、もっと多くもらえて当然だ」といった不平不満が出がちだ。

 何をもって「公平」と感じるかは分からないし、それぞれの希望や不満をひとつひとつ聞いていたら、キリがない。

 そこで前出の曽根氏は、「子供に『不公平だ』と指摘されても、親本人が分け方を決めましょう」とアドバイスする。

「そもそも親の財産なので、親が決めればいいのです。子供からすれば『法律的には平等にすべきでしょ。自分にも相応分をもらう権利がある』と考えます。なので、子供同士で決めさせると必ずもめます。

 親の立場から物事を決めることがトラブルを防ぐことにつながるのです。家族みんなが同じ情報を共有できるように常にオープンにし、決断の際には曖昧な表現を避けて文章に残しましょう。

 その上で、家族会議を開くなら、老後に自分はどうしたいのか、子供の世話になりたいのか、介護施設への入居を考えているのかといったことを子供たちにハッキリと伝え、誰が何を相続するかの方針を立てましょう」

 子供の言うことに流されることなく、判断を明確に示すことがトラブル回避につながる。

※週刊ポスト2021年7月9日号