老いた親が子供を頼ろうにも、子供のほうにその余裕がない。そういった現実がある。かつては子供の数も多く、3世代同居も一般的で、一世帯あたりの人数が多かった。介護や医療などの面倒も家族が分担しながらサポートしやすかったが、核家族化が進んだうえに、現役世代では男女共働きが当たり前になった。非婚・晩婚化も進み、“長男の嫁に面倒を見てもらう”といった発想自体が時代錯誤だ。

 お金の面で考えても、「年金世代の親より現役世代の子供のほうが苦労している」という実態がある。右肩上がりの時代を経験してリタイアした世代に比べて、不況の時代に子育てなどの負担が生じる世代のほうが、家計に余裕がないケースが少なくない。

 5月に発表された2020年の総務省「家計調査」によれば、世帯主の年齢が40歳未満の世帯(2人以上世帯、以下同)では、平均貯蓄額が708万円、同負債額は1244万円なのに対し、60〜69歳だと平均貯蓄額が2384万円(同負債額242万円)となる。

 70歳以上の世帯ではさらに増えて平均貯蓄額2259万円(同負債額86万円)だ。あくまで平均値であり、40歳未満に住宅ローンを組んだばかりの年代が含まれているために負債額が多いという面はあるが、高齢の世代のほうが家計に余裕があるという一面を浮き彫りにしたデータと言える。妻と共働きの都内在住40代男性はこう言う。

「父はすでに亡くなりましたが、近所に80代の母がひとり暮らしをしています。母親は“ひとり息子が近くにいるから安心ね”と言っていますが、正直なところ最後まで面倒を見るなんて、とてもじゃないけど無理です。大学受験を控える娘がいるから、私も妻も仕事に穴を空けて介護なんてできません。認知症の兆候が出てきたから、近所の老人ホームに入ってもらうことになるのかと思いますが、後ろめたさから最近は顔を合わせるのも気まずいです」

 もちろん、親世代の平均貯蓄が多いとはいえ、これから収入を増やす手段は限られており、貯金を取り崩していく生活になる以上、先行きの不安は大きい。ただ、その不安の解消にあたって、子供をアテにしていると、大きな計算違いが起きるリスクがあるのだ。現役世代の子供たちに余裕がないこともあれば、長年の積み重ねで子供側が親に対して複雑な感情を抱いていることもある。

 だからこそ、「夫婦で」「ひとりで」どうするかという選択肢を考えておくことが、重要になってくる。

※週刊ポスト2021年7月16・23日号