「何かあったときの備え」として加入するのが生命保険。特に昨今のコロナ禍で、最初の緊急事態宣言が出される直前の昨年3月には、オンラインだけでも生命保険の加入者が前年同月比182%になった。

 だが、複雑な約款を勘違いしていた結果、「本当に必要なときに保険金が受け取れなかった」、「もらえるはずのお金が大幅に減った」といった事態に陥るケースも少なくない。神奈川県で自営業を営む岸田里美さん(64才・仮名)は、生命保険会社に不信感を抱きはじめた1人だ。

「夫は、3000万円の死亡保険に入っています。ずっと保険料を払い続けてきているというのに、夫が60才を過ぎたら、“死亡保険金は200万円です”と言われました。同じ保障が必要なら追加の保険料を払えと……これって、ダマされてますよね?」

 保険に詳しいファイナンシャルプランナーの長尾義弘さんが言う。

「これはよくある勘違いです。この保険は『定期保険特約付終身保険』といって、かつて日本の生命保険の主力商品でした。主契約は終身保険で、それに60才までの定期保険特約がついたものです。60才までに死亡すると3000万円が受け取れるものですが、それには“内訳”があり、定期特約部分が2800万円あって、その特約が切れると、終身部分にあたる残りの200万円しか残らない。

 定期保険は、60〜65才くらいで終了します。それ以降も続けようと思うと、また定期保険を契約して保険料を払うことになる。商品の中身がよくわかっていないまま長年契約している人が多いので、改めて内容を確認してみてほしい」

 そもそも、保険はあくまで「何かあったとき」にしか支払われないのがセオリー。当然ながら、死亡保険は生きている限り、お金を受け取れることはない。元気で長生きすればするほど“元本割れ”が大前提で、皮肉にも、亡くなって初めて“得した”ということになる。だが、だからといって、終身保険は途中で解約すれば必ず損になる。

「例えば、3000万円の終身保険に30才で加入しようとすると、保険料は30年払いで月6万5000円もします。これを40才で解約しようとすると、10年間の解約返戻金は562万円。それまでの保険料が780万円なので、苦労して払った保険料の7割ほどしか戻ってこない。

 保険料を払い終えるまでは元本割れが続き、払い終わった翌年に、解約返戻金はようやく保険料より高くなる。それでもわずか10%程度上回るだけ。同じ30年間なら投資信託などで運用した方がよほど得です」(横川さん)

 大切なお金を30年間も自由にできないうえ、大きなリターンも期待できないのだ。

※女性セブン2021年7月29日・8月5日号