大きな財産である「不動産」は相続トラブルの火種になりがちである。まずは「共有名義の不動産」があると厄介だ。

 両親の死後、仲の良かった5人兄妹(長男、次男、長女、次女、三女)は実家の名義を5分の1ずつ共有。親と同居していた次女が住み続けたが、やがて次女の子供一家も一緒に住むように。その次女が亡くなり、家に住み続けたい「次女の子供たち」と「他の4人の兄妹」たちの意見が対立──。

 司法書士法人リーガルサービス代表の野谷邦宏氏の指摘。

「一度共有名義にすると、自分の持ち分だけを売却するのは困難ですから、そのまま塩漬けになりやすい。時間が経ち、下の世代に権利が受け継がれるなどすると、トラブルにつながる。誰かが代表して買い取るか、共有者全員で売却してお金で分配せざるを得なくなるが、非常に面倒です」

 それを避けるために、共有名義を始めた世代が生きているうちに土地を分筆して全員に割り当てる選択肢もあるが、「ちょっとした立地の違いから割り当てられた不動産の価値が異なるなど、不公平感が出やすいので、必ずしも円満にいかない」(野谷氏)という。「そもそも共有名義にしない」ことが重要だ。

 また、「不動産の評価」の違いを巡ってもトラブルが起きやすい。

 親と同居する長男に実家を相続させるとの遺言書があったが、弟と妹が遺留分を請求。その際、長男は遺留分が少なくなるように、不動産の評価額が最も低くなる「固定資産税評価額」を主張したが、弟や妹は「時価で評価したい」として評価の高い「公示地価」や「実売価格」を示し、その差を巡って大もめに。家庭裁判所に持ち込まれた──。

「この件はなかなか合意に至らず、このままでは鑑定費用がかさむため、最終的には複数の不動産会社の査定書を相続人同士で持ち寄り、妥当な金額で調停が成立しました。

 こうしたトラブルにならないように、親は不動産を相続しない子供に対してあらかじめ遺留分相当額のお金を準備しておくことが望ましい」(野谷氏)

※週刊ポスト2021年9月10日号