「頑張って節約を続ければいつかはお金が貯まる」──そう思って厳しい節約生活に励んでも、なかなかお金が貯まらず挫折する人は少なくない。『年収200万円の私でも心おだやかに毎日暮らせるお金の貯め方を教えてください!』(SBクリエイティブ)著者で、ファイナンシャルプランナーの坂本綾子さんによると、お金が貯まらない人は、そもそもの「貯蓄」の考え方が間違っているという。どういうことなのか、そのリアルケースを見てみよう。

 坂本さんのもとに相談に訪れた30代女性・A子さんは、こう話す。

「給料は手取りで月17万円、ボーナスはほとんど無いので、年収にすると約200万円ほどです。大きな買い物はしていませんし、お金がかかる趣味があるわけでもありません。日々節約しているつもりなのですが、給料日前にはいつも残高がゼロに近くなり、毎月カツカツの生活です」

 A子さんの貯蓄方法は、毎月給料が振り込まれた後、次の給料日まで出来るだけ節約し、最後に残ったものを預貯金に回すという、多くの人が実践する方法。坂本さんが指摘する。

「貯蓄に回せるのは、頑張って節約した結果、最後に残っているものだと思っていませんか。実はこれは、一番失敗しやすい方法です。貯蓄の原則は、まずは『先取り』であり、順番が逆なんです。多くの人がここを勘違いしているため、日々節約してもなかなか預貯金額が増えないという事態に陥っています。給料が振り込まれたらすぐに貯蓄分を差し引いて、残った分で日々の生活費を出していくことが大切です。

 また、A子さんの問題は、期間や目的を決めずに漠然と貯蓄をしていること。毎日『今日はこれを我慢しよう』、『いくら節約できた』とただ切り詰めた生活をしていると、人は『一体この我慢をいつまで続ければ良いのか』、『もしかして一生このままなのでは』と不安になるもの。この精神状態が長く続くはずはなく、どこかのタイミングで挫折し、かえって散財してしまうケースが散見されます。そのためまずは、貯蓄を続ける期間とお金が貯まったら何をしたいかという目的をしっかり定めることが大切です」

 具体的には、どれくらいの期間を設定すると良いか。

「まずは10か月、生活費の1割を貯蓄することを意識してみましょう。これを続ければ、10か月後には1か月分の生活費が貯まります。もし収入がゼロになっても1か月は生活できる計算です。ここをクリア出来たら、ひとまず緊急事態は回避出来たということで、銀行口座の残高を眺めて自分を褒めてあげてください。毎月給料日前には残高がゼロだったことを思えば、既に口座に1か月分の生活費があることは大きな安心感につながります」(坂本さん・以下同)

毎月の貯蓄は「定期預金」を活用すべし

 目標金額についても、坂本さんがアドバイスする。

「目標金額については、何を目的に貯蓄するかによりますが、特に目的が無い場合の大まかな金額としては、当分の生活を確保するため生活費の3か月分を目標とするのが良いでしょう。A子さんの場合、手取り月17万円でほとんど貯蓄が出来ていないということは、生活費も月17万円程度と想定して、17万円×3か月で51万円、1万円おまけして50万円を目標額とするが妥当です」

 期間と目標額を決めたら、給料が振り込まれる口座の銀行で、定期預金の積み立てを申し込むと良いという。多くの銀行で取り扱っていて、積立期間を決めるタイプと解約を申し出るまで続くタイプがある。1年定期などで積み立て、毎月自動的に口座の残高から差し引かれる。お金があるとつい衝動買いをしてしまう……という意思が弱い人は積極的に活用したい仕組みだ。

「超低金利の状態が続く現在、積み立てをする銀行も、できれば金利が比較的高いネット銀行を選ぶのが良いでしょう。2021年8月現在、1年定期の金利は大手銀行が0.002%なのに対し、ネット銀行は0.02〜0.05%と10倍以上も高い。キャンペーン期間中なら0.1%以上のネット銀行もあります。通常、預金の利子は1円未満だと切り捨てになるため、金利が低く残高も少ないと、せっかく預けていても1円も利子がつかないこともあります。利子には約20%の税金がかかることを考えても、出来るだけ高い金利の銀行を選びたいですね」

 数か月、数年と貯蓄を続けていると、給料が上がることもある。収入が増えたら積立額を増やすことも検討したいが、その際にも考え方にコツがあるという。

「毎月の貯蓄額は手取りの1割が目安と話しましたが、中には金額を固定して貯蓄する人もいます。悪い方法ではありませんが、給料がアップして収入が増えた分を、知らず知らずに生活費として使ってしまう傾向が多々見受けられます。そのためやはり、貯蓄は金額ではなく『比率』で考えるべきなのです。

 以前、家計相談にいらした人は、営業職で毎月の収入が仕事の成果によって変動するため、毎月自由に使える小遣いを手取りの1割、貯蓄を手取りの2割と金額ではなく比率で決めていました。仕事を頑張ればお小遣いも増えて貯蓄もできるため、『モチベーションにつながる』と、楽しく貯蓄に励んでいらっしゃいました」

 考え方を少し変えるだけで、無理なくお金が貯まりやすくなる。日々の節約生活に取り入れてみてみるのも良さそうだ。

【プロフィール】
坂本綾子(さかもと あやこ)/ファイナンシャルプランナー。熊本県生まれ。明治大学文学部卒業。20代は貯めては使ってしまう貯蓄リバウンドを繰り返していたが、29才の時、女性誌の編集長命令で生命保険の記事を担当したことをきっかけに、マネーライターとして生活者向けマネー記事を取材・執筆するようになり、自らも実践。1999年ファイナンシャルプランナー資格を取得。2008年より情報サイト「オールアバウト」マネーガイドとして「預金・貯金」「銀行・郵便局」などの記事を執筆。2010年より独立した立場のFPとして活動を始め、家計相談やセミナー講師も行う。近著に『年収200万円の私でも心おだやかに毎日暮らせるお金の貯め方を教えてください!』(SBクリエイティブ)がある。