ニュースなどでよく目にする「書類送検」。逮捕とはどう違うのか、処罰されたり前科がつくものなのか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。

【相談】
 めっちゃ恥ずかしいのですが、書類送検って何ですか。書類送検された人には前科が付いたり、罰金が確定したり、何かしらの刑事罰が与えられるのでしょうか。ニュースなどで書類送検の言葉が出てくるたび、わかっているようで、わかっていなかったりします。初歩的なことですけども、教えてください。

【回答】
 犯罪捜査は普通、警察がします。捜査を遂げた犯罪事件について処罰が必要な場合には、検察官が裁判所に公訴を提起(起訴)することになります。そこで警察は捜査を終えた事件の記録(書類や証拠物)を検察官に送る必要があります。

 刑事訴訟法246条で「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない」と定めているのが書類送検です。

 司法警察員とは、普通の警察官の他、捜査権が認められている麻薬取締官や労働基準監督官を指します。この条文での特別な定めがある場合とは、犯人を逮捕した場合と告訴・告発のあった場合です。

 逮捕状に基づく被疑者の逮捕や現行犯逮捕では、警察は身柄を拘束したときから、48時間以内に検察官に送致する手続きを取らなければなりません。身柄を送るとか、身柄送検といいます。言い換えると書類送検は、逮捕など身柄の拘束を受けていない場合のこと。また、犯罪被害者は告訴ができ、犯罪があると思料した人は告発もできますが、告訴・告発事件については242条で「司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない」と定められています。

 告訴事件などは、特殊な利害関係の背景が予想され、困難な事件であることから、検察官に早めに書類や証拠物が送られます。246条の書類送検の後は、事件そのものを検察官が引き継ぎ、警察官の捜査はその指揮のもと、行なわれることになります。

 なお、裁判所の有罪判決が確定しないと処罰されませんし、前科にもなりません。そもそも書類送検の事実があったとしても、公訴が提起されるとは限らないのです。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。

※週刊ポスト2021年9月10日号