「iPhone 13」の全容が発表され、買い換えるかどうか検討中の人もいるかもしれないが、そんなニュースにはまったく関心がない人たちもいる。それが「いまだにガラケー派」の人々だ。彼ら/彼女たちは、なぜいまだにガラケーを使い続けるのか。ガラケー歴21年でスマートフォンを一度も持ったことがない「生粋のガラケーユーザー」であるネットニュース編集者・中川淳一郎氏がその思いを述べる。

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 私の周りでスマホが普及し始めたのは2008年頃のことだと記憶しています。最初の頃は、スマホは通話とメール機能以外で何ができるのか試行錯誤しながら使っている感じで、マイクに息を吹くとスカートがめくれるという、今から考えると、それってコンプラ的にどうなのよ?と思われるようなアプリを楽しんでいる人もいましたね。その後、ビジネスシーンからプライベートまで、様々なことがスマホでできる時代となりました。学生の中には、大学に提出するレポートもスマホのフリック入力で書く人までいるようです。最新版のiPhone 13ではカメラの画質が大きく向上しているみたいですね。その進化のスピードは凄まじいと思います。

 こうして、もはやスマホは生活に欠かせないアイテムだと考えるようになった人は多いでしょうが、私は「ガラケーが使えなくなるまでは、このままガラケーを使い続けよう」と思っています。元々「ネットニュース編集者」を名乗っているため、当たり前のようにスマホを使っていると思われがちですが、ガラケーでまったく問題ないのです。ガラケーの3Gサービスは2022年から順次終了することが発表されていますが、私のガラケーは4G対応の端末のため、まだ猶予は残っています。

 ここでは、なぜガラケーを使い続けるのかを述べますが、端的に言うと「困ることがない」からなんですよ。もちろん、取引先のビルに入るにあたり、送られてきたQRコードをセキュリティゲートでかざさなければならない場面など、スマホのほうが便利だろうな、と思うことはあるものの、これは頻繁にある話ではない。その時はガラケーのカメラ機能でパソコン画面に写るQRコードを撮影して代替できるし、なんなら持ち歩いているノートパソコンの画面をそこに押し付ければなんとかなる。

 正直、追いかけられる感覚がイヤなんですよ。突然電話が来て「まだですか?」なんて言われる。「何がですか?」と聞くと「さっきメールを送ったんですが」と。こちらは外出していてメールなんて見ていないので、「すいません、ガラケーなんでメール見られないんですよ。事務所に戻ったらお返事します」と言っています。

 スマホを持っている人(大多数)の感覚からすれば、どこでもメールが読めるはずだから、即レスするのが当たり前、もし反応がないとメールを無視されたと思ってしまうのかもしれません。しかし、私はそんな動きの速い生活はしたくない。

仮に落としたとしても失うものが多くない

 スマホ生活のデメリットと感じる部分は他にもあります。スマホユーザーが常にSNSの通知をチェックしている様子や、ずっとスマホを握りしめてゲームし続けている様を見ると、「あぁ、これは中毒性があるんだな、オレはこんなツールを持たないで良かった。多分、自分も膨大な無駄時間を過ごすことになっていたはず……」と思ってしまいます。

 そんな私からすると、電車の中で目の前の席に座る7人全員がスマホに目を落としている姿は、日常茶飯事な不気味光景です。自分はあんな風景の一部になりたくない。犬の散歩をしている人もスマホを見ながらで、犬があっちへ行ったりこっちへ行ったりしている。すれちがう時はこちらも犬の動きに合わせてぶつからないように歩かなくてはいけない。歩きスマホは、本当に困ったものです。

 スマホがあればNetflixもHuluもDAZNも、いつでも好きなものを見られて楽しいのは分かりますが、外にいる時や移動中はそういったことはできない時間、と割り切って新聞を読んだり本を読んだりする方が、知識の差別化ができると思います。また、スマホで常時ネットニュースばかり見ていると、いわゆる「バズってるネタ」や「自分が好きそうな記事」ばかり目についてしまい、知識の広がりが制限されるのではないでしょうか。

 あと、ガラケーの良いところは、変な言い方ですが、「仮に落としたとしても失うものが多くない」という点にあります。スマホはとにかく様々なものがその1台に詰めすぎ状態になっており、それを失うと人生のかなりの部分が失われてしまう感覚に陥るのではないでしょうか。ガラケーであれば、電話番号と過去のSMSぐらいしか失うものはありません。これは本当に気楽です。

 かくして2021年ももうすぐ第4四半期に入ろうとしていますが、まだスマホに変更するインセンティブをまったく感じない自分がいます。だから、同様のガラケーユーザーの皆さんも、一緒にガラケーを使い続けていきましょう。ただ、私がUber Eatsの配達員になった時は道のナビ用にスマホを買おうかと思っています。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。