今や世界屈指の時価総額を誇る米電気自動車(EV)大手のテスラ。テスラが米ナスダックに上場したのは2010年6月29日のことだ。飛ぶ鳥を落とす勢いで成長するテスラの株式を上場日に購入していたら、投じた資金は何倍に膨れ上がっているのだろうか。

■上場日にテスラ株を購入し、現時点まで持ち続けていると・・・

2022年11月11日時点で、テスラ株の終値は195.97ドルだった。時価総額は6,140億ドルに上り、日本円(1ドル140円)に換算すると85兆9,600億円に達する。

テスラが初めて株式をナスダックに上場した際の初値は19ドルで、当日の終値は23.89ドルだった。しかし、この株価と現在の株価を比較できない。テスラの株式はこれまでに株式分割を複数回行っているため、単純な比較はできないからだ。

ヤフーファイナンスでは、「仮に株式分割が一度もされていなかった場合」の上場当時の株価が、現在の株価から逆算して紹介されている。それによれば、2010年6月29日の始値は1.27ドルだ。

この1.27ドルを、2022年11月11日の終値である195.97ドルと比較すると約154倍となる。もし上場日にテスラの株を1万ドル購入していたら、約154万ドルまで価値が拡大していたことになる。

■テスラ株が最高値付近のときだと300倍以上に

もっとも、テスラ株は変動が激しい。テスラの株価は2021年11月に410ドル台の最高値を記録しており、そのときから比べるとテスラの株価は現在までに半値以下となっている。

ちなみに、もし上場日にテスラの株式を購入して、2021年11月に410ドルで売却していたとしたら、株価が約322倍になっていたことになる。

■テスラ株急騰の理由

最近もテスラの株は乱高下しているが、長期的なスパンで見てテスラの株価が短期間でこれほど急騰したのはなぜか。探ってみよう。

2021年にテスラが販売したEVは93万6,172台で、過去最高だった。テスラはEV市場の70%強を占めており、世界シェア1位を誇る。

テスラの創業が2003年で、最初のEV「ロードスター」をリリースしたのが2008年であることを踏まえると、急激な成長ぶりといえる。株価が上場から10年ほどでこれほど急騰したのも納得できるように思える。しかし、車の販売台数だけを見れば、実はトヨタの10分の1にすぎない。

トヨタが2021年に世界で販売した車の台数は、約1,050万台だった。テスラと比べて10倍以上の車を販売しているにもかかわらず、時価総額は32兆5,600億円とテスラの40%未満に甘んじている。テスラは、時価総額でトヨタを2020年にすでに追い抜いていた。

■イーロン・マスク氏の話題性に市場の関心集まる

テスラ株急騰の理由は、EV販売台数の伸び率だけでは説明できない。むしろ、テスラ株に対する市場の高い評価は、言動が耳目を集めている同社の最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏の経営手腕に対するものだ。

マスク氏といえば、テスラを世界屈指のEVメーカーに成長させた人物だが、テスラの初代CEOではない。テスラを創業したのはマーティン・エバーハード氏とマーク・ターペニング氏という2人のエンジニア。マスク氏は初期出資者の1人だった。

マスク氏は決済サービスを提供するペイパルの成功で富を築き、創業間もないテスラの資金需要を支えた。2004年に同社会長に就任以降、自身の持ち株比率を高めるとともに2人の創業者の持ち分を薄め、テスラの実権を握った。

マスク氏が手がける事業領域は広い。2002年には宇宙事業を展開する「スペースX」を設立し、無人宇宙船の打ち上げや国際宇宙ステーションへの物資輸送などを成功させた。

テスラはEV事業だけでなく、二足歩行の人型ロボット、ヒューマノイド開発なども進めており、マスク氏が展開する事業の将来性や話題性が市場の関心を集めている。

■マスク氏の言動で株価が乱高下するリスクも

もっとも、テスラの株価が乱高下するのは、エキセントリックとも評されるマスク氏の言動と無関係ではない。

テスラは2021年2月に、15億ドルを仮想通貨ビットコインに投資したと発表した。ビットコインは価格の変動が激しい投資対象なだけに、テスラ株も価格が乱高下することが危惧された。実際に発表後、テスラ株は一時25%下落した。

最近では、マスク氏によるツイッター社の買収が波紋を広げ、全従業員の半数を解雇するなど混乱が生じている。マスク氏によるツイッター社の買収完了後、テスラ株は続落して一時12%下落した。

■”第二のテスラ株”は有望ベンチャーの新規株式?

テスラ株は上場時から話題を集め、投資家の関心の高さを示していた。株価が乱高下するリスクはあるものの、上場日に購入していれば価値は100倍以上に膨らんでいた。

テスラのストーリーは、個人投資家を有望ベンチャー企業の新規株式公開に挑んでみたい気持ちにさせる。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。