バブル経済崩壊後、1990年初頭からの「失われた30年」は今なお継続しており、このままだと「失われた40年」になってしまう。そうなれば、これまでの不景気とは比べものにならない「本当の不景気」をわれわれは体験することになるだろう。

■バブル経済が弾けてからの「失われた30年」

平成最初の大納会(株式市場の年間最終取引日)となった1989年12月29日の日経平均株価は、史上最高値の3万8,915円を記録。このまま上がり続けて、いずれは5万円に達する予想もあった。ところが、年明けから株式相場は下落し、翌1990年の大納会の日経平均株価は2万3,848円に。実に1年で約39%の大幅な下落となった。

以降、株価は長期的にはピーク時の約4割あたりでの値動きを継続し、現在でも日経平均株価2万7,930円と振るわない(2022年11月17日の終値)。

バブル経済が弾けてから現在までの株価と経済成長の低迷を「失われた30年」といい、90年代に就職時期を迎えた当時の若者は「就職氷河期世代」と呼ばれた。しかし、生活がグッと貧しくなった実感を持つ人はそこまで多くなさそうだ。

それは、景気が低迷したときには政府が財政出動で景気を刺激するなどの対策を行ったからだ。ただし、それに伴う財政赤字を埋めるために消費税率を徐々に引き上げ、増税によりまた景気が低迷する堂々巡りを繰り返してきたのが実情といえる。

年々進行する少子高齢化による生産力低下もまた問題で、場当たり的な対応でその場その場をごまかしているうちに、日本経済の底力は確実にそぎ落とされてきている。

■経済成長に取り残されていく日本

株価は、80年代後半のバブル景気のときに上がり過ぎていたのであって、バブルが弾けて以降がむしろ正常という見方もある。

確かにバブルが弾けてからの数年間は、本来あるべき株価に戻ったものと見られる。しかし、一方で海外の主要株式市場では株価指数が史上最高値を何度も更新している。NYダウ平均株価の水準を見ると1989年末から約30年で約10倍に上昇しており、途中リーマン・ショックに見舞われつつも長期的には経済成長が継続していることが分かる。

なお、アベノミクスは一応の成果を上げたかに見えたが、これも実質は公的資金による株価の買い支えであり、適正な価格よりも高く株価がかさ上げされてしまうことで、かえって個人投資家を日本株から遠ざける結果となっている。

■じわじわと低下していく国力

慢性的な不景気を脱するにはインフレ化が必要だ。デフレ下では企業の経営は苦しく、住宅も売れにくい。リストラされる社員も当然増えてくるが、正社員の座に留まれる人は物価安も手伝って生活はそこまで苦しくならない。貧しくなった実感を持つ人がそこまで多くないのはそのためだ。

国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、正規雇用者の年間平均給与の平均は496万円であるのに対し、非正規雇用では176万円となっている。176万円ではまともな生活はできず、まさにワーキングプアである。

非正規雇用に主婦や学生のパートタイム雇用が含まれることは考慮すべきだが、いずれにせよ貧富の差は確実に広がっている。もはや日本は胸を張って「豊かな国である」とはいいにくくなった。

国内総生産(GDP)を見ると、2010年に日本は中国に抜かれて世界第3位に転落。国ごとの物価の違いを考慮した購買力平価換算の国内総生産では2009年にインドに抜かれ、米国、中国、インドに次ぐ世界第4位となっている。ここからも日本の国力の低下は明らかだろう。

■円安によるインフレで日本経済は復活するか?

2022年3月から円安が急激に進行し、10月20日にはついに1ドル150円を突破。その後、11月に入ってまもなくして円高に転じ11月11日には138円台となった。ただ、これでもなお、2022年の年初と比較するとかなりの円安であることには違いない。

円安による国民生活の圧迫を心配する声の一方で、輸出企業が受ける恩恵やインフレ促進による株高を期待する声もある。これをもって日本の「失われた30年」が終わる楽観的な意見もあるが、果たしてそう簡単にいくだろうか。

こうした急激な円安・円高は、米国の金融政策などに連動して起きたものであり、日本の国力向上によるものではない点に注意を払うべきだろう。

今はまだ高度経済成長期の遺産ともいうべきインフラや技術、人的資産に支えられ延命できている日本の産業も、今後は優秀な研究者や技術者、企業人は外国へ流出していき、崩壊が始まるに違いない。少子高齢化の進行も止まらず、生産力は低下の一途をたどるだろう。

■2030年以降、「本当の不景気」がやってくる

日本経済団体連合会(経団連)の21世紀政策研究所が以前発表した報告書「グローバルJAPAN-2050年シミュレーションと総合戦略」には、人口減少による労働力人口減少と資本ストックの減少により、2030年以降の日本経済は恒常的にマイナス成長に陥るおそれがあると指摘されている。

この指摘が当たると、これから10年後に「本当の不景気」が始まり、目に見える形でじわじわとわれわれの生活はそれに侵食されていく。

すでに、水道インフラの老朽化が問題になっているが、これからは耐用年数を超えたインフラを補修・交換できる費用を捻出できず、発展途上国なみの生活環境に後退する地域も出てくるだろう。

そうした「本当の不景気」に日本人が直面するのは決して遠いことではない。それを避けるには、目先の景気刺激策に右往左往するのではなく、長期的なビジョンを持った経済政策を掲げ、その実行に必要な国民の同意を得られるだけのリーダーシップが政府には求められる。

文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。