昨今は、SUVラインナップに関する展開が目立ったフォルクスワーゲンブランド。フェイスリフトされた新型ポロの導入もようやく始まったが、Tロックのイメージ刷新には要注目だろう。(Motor Magazine 2022年9月号より)

理想と実情を見据えた判断。間もなく始まるBEVの日本市場導入

ドイツを代表するフルラインナップメーカーとして、幅広い車種を展開するのがフォルクスワーゲン。2022年の日本マーケットにおいては、もはや同社を代表するひとつのブランドとして定着した感のある「GTI」という3文字を冠した新型ゴルフや、マイナーチェンジを行ったポロシリーズの導入が行われた。

それに続いて、この先も新型ゴルフのさらなるバリエーションとして、クロスオーバー的なSUV風の装いと4WDシステムの採用を特徴とする「オールトラック」や、GTIを凌ぐ高出力エンジンに4WDを組み合わせたハイパフォーマンスバージョン「R」のデビューが予定されている。本国ではローンチ済みであるマイナーチェンジ版のポロGTIも含めてこの先、基幹モデルの派生グレード車がさほど間を置かないタイミングで、次々と追加導入されていく見込みだ。

日本でのセールスも好調と伝えられるSUVの「Tロック」も、フェイスリフトやADAS機能のアップデートなどを主なメニューとするマイナーチェンジが行われたモデルがすでに本国では発表済み。当然、こちらも日本への上陸がもう間近と予想される。

さらにこのTロックでは、やはり欧州市場向けにはすでに設定されていながらも、今のところ日本への上陸は実現していない高性能版のrや、このカテゴリーでは稀有なオープンボディを備えるカブリオレが導入されることにも期待したいところだ。

電動化を推進しながらも、内燃機関へのこだわりが

2030年までに6カ所の巨大工場(ギガファクトリー)を建設し、240ギガWhの駆動用バッテリー製造キャパシティを確保する計画を明らかにするなど、ピュアEVを代表とした電動化に対して一段と積極的な取り組みを示すのがフォルクスワーゲンである。

しかし、その一方で21年末にイギリスで開催されたCOP(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)での、化石燃料車の段階的廃止に対する宣言への署名は見送るなど、内燃エンジンを搭載する車両の将来性にも含みを残しているのも見逃せない点だ。

ダイムラーやボルボ、ジャガー/ランドローバーなどが前出の宣言に署名を行ったのに対し、日本の各自動車メーカーやプジョーなどとともに署名しなかったフォルクスワーゲン。先進国の富裕層に限定せず、より幅広い市場での多様なユーザー層に対して低価格なモデルを含むさまざまな車両を提供するメーカーゆえ、簡単にはピュアEV一本に絞ることは困難という事情が、その決定に大きく影響していることは間違いない。

それでも、フォルクスワーゲンが用意するピュアEVの中でも「社運を賭けて開発した」と伝えられるコンパクトSUVのID.4は、日本マーケットへのピュアEV「ID.シリーズ」の第一弾として22年中に導入される予定だ。こうして、さまざまな市場を擁する大メーカーならではの難しさと面白さが、この先も継続して味わえることとなりそうだ。(文:河村康彦/写真:フォルクスワーゲンAG、井上雅行)

●■Tロック Rライン 2.0TSI 4モーション

全長×全幅×全高:4236×1819×1584mm
ホイールベー: 2590mm
車両重量:1505kg
エンジン種類:直4DOHCターボ
総排気量:1984cc
最高出力:140kW(190ps)/4200rpm
最大トルク:320Nm/1500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:4WD

●■ID.4 ライフ主要諸元

全長×全幅×全高:4584×1852×1612mm
ホイールベース:2766mm
車両重量:2124kg
原動機種類:モーター×1基
最高出力:150kW(204ps)
最大トルク:310Nm
駆動方式:RWD
一充電走行距離:522km