F1、WRC、インディカーシリーズなど世界トップクラスのレースカテゴリーに参戦する車両にホイールを提供しているホイールメーカー「O・Z」。今でこそ世界のモータースポーツで活躍するグローバル企業として有名だが、その歴史の始まりは1971年までさかのぼる。イタリアで誕生した小さなホイールメーカーが巨大企業へと成長する歴史を紹介する。

「O・Z」が初めて作ったアルミホイールは、ミニクーパー用だった!

1971年1月4日、北イタリアのヴェネト州ヴィンチェンツァにある片田舎の村、ロッサーノヴェネトに小さなホイールメーカー「O・Z」が誕生した。

ガソリンスタンドを営むかたわら、その裏庭でシルヴァーノ・オゼッタドールとピエトロ・ゼンというクルマ好き2人が、ミニクーパー用のアルミホイールを作り始めた。そう、会社名の「O・Z」は、オゼッタドールの「O」とゼンの「Z」、この2人のイニシャルに由来している。

1970年代初頭のガソリンスタンドは、クルマ好きが集まるコミュニティーの場でもあった。よって「O・Z」がクルマのパーツ「アルミホイール」を作ることは何ら不思議ではなかったのだ。

ミニは当然オリジナルミニなのだが、当時イタリアでBMC(ブリティッシュ モーターカンパニー)のライセンス生産を行っていた左ハンドル仕様の「イノチェンティ ミニ」である。イノチェンティは「ランブレッタ」と言うスクーターで一世を風靡していたメーカーでもある。

イノチェンティ ミニは、イギリスの本家とはグリル形状が異なるだけでなく、ヘッドランプには大きなリングが施されるなど、派手好きなイタリア人好みに仕立てられていた。そしてダッシュボードにずらりと並んだ6連メーターもマニアの心をくすぐった。走行性能や基本性能は本家イギリス譲りのシャープなもので、さらに安価なこともあってモータースポーツの入門用マシンとして大人気だった。WRCこと世界ラリー選手権が始まったのは1973年、ゆえに1970年頃は各国でラリーレースが真っ盛りだった。

当時のホイールは、スチール製の「鉄チン」が主流だっただけに、アルミホイールを履くことでバネ下荷重の低減による運動性能アップを確実に実現していた。つまりアルミホイール装着は「勝利の方程式」だったのである。

2016年の創業45周年には、記念モデルの「アニバーサリー45」を発売

「O・Z」が初めに手掛けたアルミホイールは、8個の丸穴を備えたシンプルなデザインの4Hで、その中心には「(Z)」のロゴマークが配されていた。このデザインは、「Z」を「O」で囲んだイメージを表していたもので、意外にも約20年先の1990年代前半まで使用された。

ホイールサイズは純正と同じく10インチの4.5J、PCDは106.1でインセットは小さ目の14とした。現在の軽自動車でも小さいホイールで12インチなので、10インチとなると原付スクーターと同じサイズなのだ。丸穴ホイールはイタリア人好みのデザインで、軽量化にも貢献していた。このO・Z初のアルミホイールは当時のラリーやレースで大活躍し、イノチェンティ ミニで参戦するドライバーに大人気となった。

翌1972年には、いち早くバイク用アルミホイールを手掛けて活躍の場を広げた。1975年には16本フィンのレース&ラリー用ホイール(タイトル写真)を追加するなど、スタートから7年後の1978年に本格的なホイールメーカー「O・Z S.p.A」として製造に勤しむことになる。

2016年の創業45周年時には、日本でも大々的に記念パーティが開催され、原点に立ち返った記念モデル「アニバーサリー45」が発表された。丸穴はオリジナルの8個から7個に減り、サイズは17インチ/18インチと大径化されたが、デザインは初代そのもの。センターのオーナメントも「(Z)」のロゴマークが再現された。

「ミニ」は「BMW製MINI」となったものの、45年前と同様に現代のMINI クーパーSにもこの記念ホイールをセットできたのはドラマでもあった。ミニに始まり、MINIへ受け継がれた「O・Z」のスピリットは、現代も受け継がれているのである。