メルセデス・ベンツの小型SUV、新型GLAとGLBがデビュー。同じプラットフォームを用いた2台だが、その個性はどう違うのか。竹岡 圭が両車をじっくり乗り比べつつ確認する。(Motor Magazine 2020年9月号より)

コンパクトSUVのトレンドを意識したフォルム

「ハッチバックにセダンときて、シューティングブレークにSUVまで作るの?」と、2014年の初代GLAの誕生時に思ったのを覚えている。その初代GLAにAMGモデルが登場した時は、正直「速いワゴンならまだしも、速いSUVなんていったいどんな人が買うんだろう?」と、まったくイメージできなかった。

しかし、これが予想を覆す大ヒット! 世の中の主流はすっかりSUVなんだなぁ〜、と妙に納得させられた1台になった。たぶんイマドキのSUVは、昔のセダンとかハッチバックのイメージに近いのではないか、と思わせられる世の中になったのである。

そんな世情に誕生した2代目GLA。多くの人が待ち望んでいたモデルで、これは発売前から売れることが決まっているようなものだ。先代はAクラスのクロスオーバーSUV的なイメージが強かったが、2代目はすっかりコンパクトSUVの装い。外観のデザインからして、最近の潮流にしっかり則ったスタイルになっているのだから。

着座位置は97mm高くなり、現行Aクラスとの比較でも140mm高い。驚くべきは最低地上高で、標準車で約200mmとグッと上げられている。このクラスのSUVの中でも、しっかりと高い方だと自信を持って言える数値である。

そしてドアを開けると、しっかりとメルセデス・ベンツなのだ。ここが実に憎い。横に広がった液晶カラーディスプレイは、実に鮮やか。ジェットエンジンのタービンを彷彿とさせる、エアコンの吹き出し口がキラリと5つ並び、センターコンソールの操作系も最新のメルセデス・ベンツ、ステアリングスイッチもクラスから始まった並びと変わらない。

64色から選べるアンビエントライトに彩られた室内は、実にゴージャスで、「ハイ!メルセデス」と呼びかけると「何をなさいますか?」と返事だってしてくれる。完全なるメルセデス・ベンツの世界観が待ち受けているのだ。この演出が「イヤ」だという人はひとりもいないだろう。

乗員の快適性と荷室の使い勝手の良さが向上

さて大型化したということで、ユーティリティやスペースも気になるところだが、座面は60対40で140mmの分割スライドが可能、背もたれは40対20対40の分割可倒式、背もたれは7段階のリクライニング機構を持つ後部座席に始まり、ラゲッジスペースの広さも先代はもちろん、現行Aクラスよりもスペースが確保されている。そう、十二分なのだ。

さらにバックドアは、キッキングモーションで開閉できるなど、ライバルが持っていそうなものはすべて、抜かりなく設えられている。これだけでもう、満足度はかなりの高さである。

いやいやどうして、これで乗ってみたらどうだかねぇ・・・などと思っていたら、ちょっと想像を超えていて、実に良かったのだ。まず、パワートレーンは2直列4気筒ディーゼルターボに8速DCTを組み合わせて、駆動方式は4WDの1本勝負。モノグレードということにも驚いたのだが、そもそも低速トルク厚めのディーゼルエンジンとSUVの組み合わせが悪いわけがない。

320Nmというビッグトルクだけに、8速DCTの受け止め感も気になるが、これまたガタツキも変速ショックもなくスムーズ。そしてそのまま、気持ちよく吹け上がってくれるとともに、気になる振動もなく、いやはやお見事。

足まわりは、駆動力配分が前80対後20のコンフォートモードでは路面へのアタックもソフトだが、オウトツを乗り越えるときのいなし加減も上手で文句ナシ。続いて前70対後30になるスポーツモードでも、ビックリするほどパワーが出るわけではないものの、それが逆に功を奏して全体的にシャープになったという印象が強い。ステアリングフィールに適度な手応えがあるので、コーナリング時の頼もしさが光ってくるのだ。

そして、駆動力配分が前50対後50になるオフロードモードでは、マルチビームLEDヘッドライトが、車両の直前部を広く明るく照らしてくれるなんていうオマケがつき、障害物が発見しやすくなるという気遣いまであったりする。もちろん一定の速度で坂を下れるダウンヒルスピードレギュレーションも装備するなど、至れり尽くせりの本格派なのだ。さすがはGクラスを筆頭にSUVシリーズをズラリと網羅しているメルセデス・ベンツだけのことはある。

今回はオンロードのみの試乗だったが、乗り心地とパワーの出力の仕方、また絶対パワーとボディのバランスが絶妙で、想像以上に完成度が高く、少々驚かされてしまった。正直、なんだか出来すぎていて、ちょっと悔しいくらいである(笑)。

GLBの立ち位置と3列目シートの使い勝手は

となると、気になるのが同時に日本デビューしたGLBだ。「B」の文字が与えられたメルセデス・ベンツのSUVは初だが、元々Bクラスはファミリー向けのパッケージングが「ウリ」のモデルで、Aクラスより車内空間が広い。しかしGLBは単なるGLAのストレッチ版ではない。どちらかと言えばGLCとGLCクーペのような関係だと思うとわかりやすいかもしれない。GLBはGLAに比べて、長さと高さがあり、デザイン的にもコンサバティブで、よりオーソドックスなSUVという印象だ。

そして、GLAより100mmほどホイールベースを伸ばしたことを活かして(、なんと!)3列シートとしたのである。ここが最大のポイントになるのは間違いない。とはいえ、さすがに3列目は広々とはいかない。

2列目を1列目の背もたれに膝が当たらない位置に据え、3列目に座ると、膝まわりは予想よりも空間的余裕がある。問題は、致命的とも言えそうな乗り降りのしにくさと、どっしりした2列目の背もたれの高さ。私の場合、3列目に座ると前がほとんど見えず、たとえは微妙だが、子供の頃に入って遊んだ押し入れの感覚を思い出したほどだ。

とはいえ、「荷物専用」席かというとそうでもなく、USB−Cジャックやドリンクホルダーが設けられている。しかしGLBの場合、ほぼ3列目は格納しておいて、たまに使うといったライフスタイルの人がほとんだと思うのだ。となると、このUSB−Cジャックはラゲッジ側にコードを伸ばして使ったり、ここにドリンクホルダー型の空気清浄機を仕込んでもいいわけで、使い方は多彩に広がるはずだ。そう考えれば、膝まわりに余裕がある2列目と広々ラゲッジを持ったコンパクトSUVだという解釈もできるだろう。

パワーユニットは2種類。駆動はエンジンにより異なる

さて、パワートレーンはGLBは2本立てとなる。ひとつはGLAと同様の2L直列4気筒ディーゼルターボに8速DCTの組み合わせの200d。ただし、駆動方式はFFのみとなる。この駆動方式がGLAとの違いだが、昨今はFFのSUVはアリな風潮なので問題ないだろう。それより価格が、GLAと10万円しか変わらないことの方がよほど大きいと思う。

もうひとつは、2L直列4気筒ガソリンターボに8速DCTの組み合わせ、駆動方式は4WDとなる250 4マティックスポーツである。こちらはガソリンターボエンジンということで、音色はもう少し気持ちよさが欲しいと思うものの、爽快な出力が持ち味となる。

ドライビングモード切替による駆動力配分はGLAと同様なのでここでは省くが、ズバリ言うとコンフォートが断然乗りやすい。スポーツモードとなると、パワー感の演出が大げさになり、高速道路以外ではギクシャク感が目立っていた。足まわりのフィーリングも、バタつき感があった。20インチという大径タイヤの影響もあるかもしれない。しかし、言い換えればそれほどパワフルなわけで、余裕のあるクルージングが楽しみたいなら、こちらがオススメできる。

とにもかくにも、今なら「この2台は間違いなく売れる」と断言できる。価格も考慮するとGLB 220dが一番人気になるとと予想するが、果たして結果が楽しみだ。(文:竹岡 圭)

●■メルセデス・ベンツGLA 200d 4マチック(AMGライン装着車)主要諸元

●全長×全幅×全高=4440×1850×1605mm
●ホイールベース=2730mm
●車両重量=1730kg
●エンジン=直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量=1949cc
●最高出力=150ps/3400−4400rpm
●最大トルク=320Nm/1400−3200rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速DCT
●車両価格(税込)=502万円

●■メルセデス・ベンツGLB 250 4マチックスポーツ主要諸元

●全長×全幅×全高=4650×1845×1700mm
●ホイールベース=2830mm
●車両重量=1760kg
●エンジン=直4DOHCターボ
●総排気量=1991cc
●最高出力=224ps/5500rpm
●最大トルク=350Nm/1800−4000rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速DCT
●車両価格(税込)=696万円