車載機器が記録している事故時の関連データを、より積極的に活用しようという活動が、整備業界を中心に始まっている。欧米に比べるとかなり遅れた観のある取り組みだが、いよいよ日本でも本格的に、自動車事故検証へのITの導入が本格化しそうだ。その流れを加速するために、ユーザー側にも意識改革が求められている。

事故の記録を有効活用。EDRデータの持つ可能性が広がる

国土交通省は2022年7月1日以降に販売される新型車から、イベントデータレコーダー(EDR)と呼ばれる機器の搭載義務化を決定した。2026年5月以降には継続生産車も含めて、すべての新車への搭載が義務化される予定になっている。

EDRとは、車載されている運転記録装置。自動車が衝突事故を起こした際の一定時間の間の運転情報・走行情報・車両の状態などを、記録として残すことができる。特に北米では、事故関連の裁判や保険争議などでEDRに記録されたデータを活用するのは今や常識だ。

日本でも今回の法制化によって、EDRデータの活用が加速することは間違いない。実際にボッシュ製のツールを用いて抽出されたEDRデータはこれまで、事故分析や保険料算出、裁判などに関わる責任関係を明確化するのに役立ってきた。一方でボッシュは、EDRデータをさらに有効活用するために、新しい取り組みを進めている。

そのひとつが、交通事故で損傷を受けた車両の情報を、データベース化する活動だ。

保険金の支払いがさらに迅速、わかりやすくなるかも

具体的には、一般社団法人日本自動車車体補修協会(JARWA)との協業によって、事故時のEDRデータ、事故車両の損傷を明らかにする外観写真、基本的な車両寸法データなどの情報が蓄積される。蓄積されたデータはたとえば、比較的軽微な破損を受けた時などに、損害金額や修理金額を推定するのに役立てることができるという。

ともすれば一般ユーザーにはわかりにくい修理や整備の「相場観」だが、蓄積されたリアルな事例に基づいた評価を知ることで、より納得しながら作業を進めてもらうことが可能になるだろう。事故にともなう保険金の支払いなどもより迅速に、よりわかりやすいものにすることができるかもしれない。

ほかにも、中古車購入の際に、事故歴の有無を証明するために活用できるケースもあるそうだ。欧米では早い時期から、車両情報のデータベース化が事業として確立されている。

今後は日本でも同様の便利な活用が期待できる。だが重要なのはユーザー側も、そうした危機やシステムが存在することを理解し、協力することが求められているということ。そして収集する整備工場なども今後は、個人情報の取り扱いについてのコンプライアンスを厳重に遵守しながら、利活用を進めていくことが必要になるだろう。