アヴァンギャルドなデザインのDSブランドに、新たにCセグメントハッチバックのDS 4が加わった。新世代DSとしては4番目のモデルとなり、より鋭く凝ったエクステリアと個性的なインテリアを持ち、 DS初の機能も搭載するDS 4に早速試乗した。(Motor Magazine 2022年8月号より)

細部まで感じられるDSブランドの美学

思えば、シトロエンの上級ブランドとしてスタートした頃の「シトロエンDS」は、ブランド性もそのデザインも、一般的なクルマ好きにはちょっとばかり難解だったかも知れない。ハンドルを握ってみれば乗り味は心地好く、インテリアの仕上がりには心が満たされ、すんなり馴染めたりできれば、スタイリングデザインも感性に根を生やして離れない。

そしてパッと見だけで触れたことがなくても、刺さる人にはストンと刺さる。けれどそれは少数派であり、多くの人にとっては素直に受け入れづらかった。

多くの人は日常的には左脳ベースで暮らすことに慣れきってるわけで、そうなると無意識のうちに、ロジカルで明快な「解」を求めてしまいがちになるものなのだから。頑張ってナンバーワンを目指せという教育を受けてきた人たちに、そんなものより個を重んじたオンリーワンであることの方が遙かに大切なのだと感じてる人たちの感性の結晶を理屈で納得するのはなかなか難しい、という側面もある。

独特のエレガンスは、それだけで十分に魅力的

けれど2015年に独立したブランドとしてシトロエンから枝分かれし、DS7クロスバック、DS3クロスバック、そしてDS9とモデルが進むにつれて、DSオートモビルズは次第に寛容になった。

ブランドとしての矜持をしっかり保ちながら、多くの人に理解しやすいクルマを送り出すようになった。4月最終週のヴェルサイユ郊外で、最新モードの2代目DS4を初めて生で眺めながら、僕はそんなふうに感じていた。

スタイリングデザインというのは優劣ではなく好嫌で判断されるべきところが大きいと思ってるので、普段はあまり触れずに見る人に委ねることが多いのだけれど、あえて個人的な話をするなら、DS4は素直にカッコいいと思う。大胆な直線基調のプレスラインがいくつも複雑に刻まれていて、けれど煩雑さはなく、彫刻的な雰囲気を醸し出している。

発表当初の写真で感じたSUVっぽさは不思議なことにまったく感じられず、最低地上高の高さを除けばプロポーションのいい5ドアハッチバックにしか思えない。エクステリアにもインテリアにも各部に「もしかして気づかない人もいるんじゃないか?」と心配してしまうような繊細にして気品の感じられる装飾も与えられていて、ブランドの美学が細部にまで行き渡ってることが感じられる。

同じセグメントのライバルたちと較べて、明らかに向いてる方向が異なっていることがひと目でわかる。この独特のエレガンスは、それだけで十分に魅力的だと思うのだ。

PHEV、1.2Lガソリンターボ、1.6Lディーゼルターボ、どちらを選ぶ?

実は僕が渡仏していたのは、これから日本にも導入されることになっているプラグインハイブリッドモデルのE-TENSEに先行試乗するためだった。もちろん帰国してから1.2L 3気筒のガソリンターボ、1.5L 4気筒のディーゼルターボにもちゃんと試乗している。

そうなると3つのパワートレーンのどれがベスト?と論じたくなるのがクルマ好きの常。もちろん3車3様で乗り味は異なってるのだけど、おあつらえ向きに仕様は3車ともにアクティブスキャンサスペンションを備えたリヴォリだった。

走行モードでコンフォートを選んだときに、フロントのカメラで前方の路面をセンシングすることでオウトツを識別し、4輪の可変ダンパーを制御していくものだ。同じ仕組みを使っていても搭載するパワートレーンの違いでそれぞれ微妙に乗り味が異なるのだが、基本的にはコンフォートモードに入れた次の瞬間からサスペンションの伸びたり縮んだりするストロークが豊かになって、芯はあるもののゆったりとした穏やかな乗り心地を感じさせてくれるようになる。

DS4は姉妹車といえるプジョー308同様、最新世代のEMP2プラットフォームを基本骨格にしている。アクティブスキャンサスペンションを持たないDS4は未体験なのだけど、味つけはおそらく異なれど同じプラットフォームに同じ形式のサスペンションを持つ308でも快適といえるレベルにあるから、ラグジュアリー志向のDS4も心配することはないのかも知れない。

けれど、アクティブスキャンサスペンションが効いているときのDS4は、決してふわっとした柔らかさではないのだけど、ちょっと荒れてる程度の舗装路なら、その振動を巧みに吸収して、しなやかでフラットな乗り味を提供し続けてくれた。Cセグメントでは間違いなく頂点級といえる乗り心地のよさだ。

もっとも似つかわしいパワートレーンはE-TENSEか

その足腰をもっとも素晴らしいかたちで活かしているのが、E-TENSEだ。1.6L 4気筒のガソリンターボで180ps/250Nm、モーターで110ps/320Nm、システム全体では225ps/360Nmとなるこのパワートレーンは、ほかの2車と較べて段違いに速い。

重心位置も異なるため、ハンドリングも望外にスポーティだ。が、それだけでなく重量がかさんでる分バネ下の余計な振動を押さえ込むのか、もっとも上質で高級感のある乗り味を示してくれた。モーターだけでも走るし、エンジンが始動してからもアシストが力強いからアクセルペダルを強く踏み込む必要もなく、車内をもっとも静かに保つことができるのもPHEVならでは。そういう意味ではもっともDS4に似つかわしいパワーユニットといえるだろう。

130ps/230Nmのガソリンと130ps/300Nmのディーゼルはどうか。2車を比較するなら、これはもう好みで決めるしかないだろう。ディーゼルの強力なトルクを素晴らしいと思う反面、エンジン重量がほどしか変わらないので期待してたほど安定感の上積みはないが、なぜかガソリンの方ではフットワークの軽さを感じ、個人的にはガソリン推し。

ガソリンもディーゼルもPHEVほど室内の静けさを保てないが、ガソリンの方がやや静かに感じられたことも大きいと思う。けれど総合力で選ぶなら、PHEVパワートレーンそのものの出来映えも素晴らしいE-TENSEが、間違いなく最良のDS4だと思う。

ただ、考えどころがないわけでもない。同じリヴォリで比べた場合、ガソリンが449万円、ディーゼルが469万円と、この差は20万円。そしてE-TENSEは572万円とガソリンよりも123万円、ディーゼルよりも103万円ほど高価なのだ。この差額をどう捉えるか。購入を真剣に考えるには悩ましいところだ。(文:嶋田智之/写真:井上雅行)

●DS4 ラインナップ

DS4 トロカデロ(1.2Lガソリンターボ):398万円
DS4 リヴォリ(1.2Lガソリンターボ):449万円
DS4 リヴォリ ブルーHDi(1.5Lディーゼルターボ):469万円
DS4 リヴォリ Eテンス(1.6Lガソリンターボ+モーター):572万円

●DS4 リヴォリ(ピュアテック) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4415×1830×1495mm
●ホイールベース:2680mm
●車両重量:1420kg
●エンジン:直3DOHCターボ
●総排気量:1199cc
●最高出力:96kW(130ps)/5000rpm
●最大トルク:230Nm/1750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・52L
●WLTCモード燃費:17.7km/L
●タイヤサイズ:205/55R19
●車両価格(税込):449万円

フランスのラグジュアリーブランド「DS」とは何か。

「DS」という名前が自動車の歴史に初めて登場したのは、1955年のこと。後にフランスの生んだ稀代の名車として知られることになる、シトロエンDSのデビューである。

シトロエンDSは当時としては先進的かつ前衛的な空力に優れたスタイリングデザインや、金属バネのダンパーの代わりにエアスプリングと油圧システムを組み合わせた「ハイドロニューマチック」という革新的なサスペンションを持ち、常識を越えて快適な乗り心地を実現した。

1976年に生産終了となったが、唯一無二といえる特徴的なエクステリアデザインと素晴らしい乗り味は、現在も熱心なマニアたちに信奉されている。

そのオリジナルDSが持っていた先進性、前衛性、革新性、そして洗練。それらの象徴的な要素を基本骨子としたシトロエンのサブブランド、「シトロエンDS」が2009年に誕生する。

シトロエンC3をベースにしたシトロエンDS 3を皮切りに、当初はシトロエンの各モデルを元にしたラグジュアリーなシリーズとして展開されたが、2014年にはプジョー、シトロエンと並行する3つめのブランドとして、 DSオートモビルズが誕生。

フランスの伝統的な専門技術、センスや美学といった強みを活かした、他国では決して作れないフランスならではの高級車ブランドとして新たなスタートを切った。

現在はプジョーなどと基本コンポーネンツを共有するものの、デザインや乗り味などに強い独自性のあるプロダクションモデルを生み出している。