ポルシェがまたまた、魅力的な911のバリエーションを追加した。すでに定番となっている「GTS」である。ポルシェ 911カレラ GTSクーペのコンセプトはGT3のような尖がった高性能ではなく、911が生来持っている快適性を残しながらスポーツドライブを楽しむこと。その仕上がりは、「優しい」。(Motor Magazine 2021年11月号より)

3.7秒で0から100km/hに達する瞬発力の持ち主

「適度に楽しめるスポーツ性能」を狙うGTSは、最高出力が480ps、最大トルクは570Nmを発生、8速DCT(PDK)との組み合わせによるダイナミック性能は0→100km/h加速が3.7秒、最高速度は311km/hと発表されている。911シリーズとしては下から2番目のバリエーションだが、数字の上では間違いなくスーパーカーの領域で、オンロードではよほどの自制心を持って臨まないと免許証がいくつあっても足らないことを、このテストの間ずっと感じていた。

GTSの外観上の特徴はブラックフィニッシュのディテールである。たとえばフロントのリップスポイラー、センターロックの軽量アルミホイール、左右のドア前方とリアにあるGTSバッジ、そしてリアのグリルとエキゾーストカバー、さらにはブラック加飾のLEDヘッドライト(ポルシェ ダイナミック ライトシステムプラス)およびリアコンビネーションライトなど差別化された部分は数多く、ポルシェファンであればひと目でGTSとわかる。

さらに新しいデザインのフロントそしてリアスカート、サイドシルなどが、そのスポーティさを一層際立たせている。

インテリア各部には、GTS専用の「レーステック」と呼ばれるマイクロファイバー素材を採用。スポーツ性と高い品質感を巧みに両立させている。

限られたシーンではなく、毎日楽しみたくなる高性能

テストでは、「ターボ」から移植されたスポーツシャシ(10mmローダウン)を装備する後輪駆動のGTSクーペから、スタンダードなシャシを搭載したタルガ4 GTSまで試すことができた。これまでの911シリーズの試乗では、2種類のシャシを直接比較をする機会がなかっただけに、乗り換え直後のフィーリングの違いが新鮮だ。ちなみに日常使用が多いオーナーにはやはり、スタンダードシャシをお勧めする。

さらに一般公道だけでなく、イタリアのヴェローナにあるポルシェエクスペリエンスセンターでクローズドサーキットでの挙動を体験することができたことも、今回のテストドライブの収穫と言えるだろう。そこではとくに後輪ステアによる安定したロードホールディング性、ハイスピードでの荷重移動時におけるトラクションの確かさ、そして見事なまでのブレーキ性能などを確認することができた。

同じようなシチュエーションでも、高回転を維持させながら限界を極めようとしていたGT3でのテストの時とは違って、リラックスしている自分自身に頬が緩む。

新たに登場したGTSは、単なる伝統を引き継いだマーケティングの産物ではなかった。ターボやGT3のような刺激的演出はやや控えめだが、季節を問わず乗りこなすことができる類まれな日常性と、時にはクローズドサーキット(理想はもちろんニュルブルクリンクだが)でスポーツ走行でも楽しもうかと考えるオーナーにもフィットするスペックは、「GTS」としてのコンセプトに見事に照準が合っている。

後輪駆動、4WDあるいはクーペ、カブリオレさらにタルガと、使用目的やライフスタイルに合わせたパワートレーンやボディバリエーションが用意されていることもまた、そうした多様な「ユーザーの願い」に応えるものなのだろう。

日本でもすでに受注予約が開始されているが、もちろんどれも限定生産販売ではない。お財布のゆとりと自分自身のライフスタイルを勘案しながら、思い切り楽しく選択に悩む時間はたっぷりある。(文:グレッグ・ケーブル<キムラ・オフィス>/写真:ポルシェAG)

●ポルシェ 911カレラ GTSクーペ主要諸元

●全長×全幅×全高:4533×1852×1301mm
●ホイールベース:2450mm
●車両重量:1620kg(EU準拠)
●エンジン:対6DOHCツインターボ
●総排気量:2981cc
●最高出力:353kW(480ps)/6500rpm
●最大トルク:570Nm/2300−5000rpm
●トランスミッション:8速DCT(PDK)
●駆動方式: RR
●燃料・タンク容量:プレミアム・64L
●WLTPモード燃費:8.8-9.3km/L(EU準拠)
●タイヤサイズ:前245/35ZR20、後305/30ZR21