マツダのラージ商品群第1弾として登場したCX-60。エンジンラインナップは豊富で、直6ディーゼルやPHEVが注目されがちだが、エントリーグレードの25S Sパッケージも注目しておきたいモデルだった。

CX-60では13%ほどのガソリン車だが・・・

日本仕様は2022年4月に発表され、同年秋から順次販売が開始された、マツダのラージ商品群第1弾となるクロスオーバーSUVが[CX-60]だ。2023年4月までに1万9029台、月平均で2379台(計画値は2000台)を販売しているから、なかなか出足は順調のようだ。

セールス動向などのレポートは、いずれあらためて紹介するとして、パワートレーン別の販売比率では、3.3L 直6ディーゼルターボが36.2%(2WD:20.0%、4WD:16.2%)、同マイルドハイブリッド(MHEV)が46.3%(4WDのみ)、2.5L 直4ガソリンが13.4%(2WD:9.7%、4WD:3.7%)、そして同プラグインハイブリッド(PHEV)が4.1%(4WDのみ)となっている。

やはり新開発の直6ディーゼル車が圧倒的な人気となっているが、今回は「SKYACTIVーG 2.5」と呼ばれる直4ガソリンエンジンを搭載したエントリーグレードの「25S Sパッケージ」に試乗してみることにした。

欧州車でいえばDセグメントに相当するミドルクラスSUVという十分なサイズに、しかもFRベースという日本車では希少な存在のCX-60。PHEVのトップグレードなら626万4500円、売れ筋のディーゼルMHEVも505万4500円からという車両価格に対し、2WDなら299万2000円と300万円を切り、4WDでも321万7500円という設定がうれしい(いずれも車両価格は税込み)。

シンプルだが必要十分なクオリティのあるインテリア

試乗車は4WDモデルの25S Sパッケージ。CX-60はグレードを示すエンブレムなどはないし、クロームメッキのシグネチャーウイングやアルミホイールなどは標準装備しているから、パッと見は上級グレードと見分けがつきにくい。前後のロアガーニッシュがブラックだったり、サイドシグネチャーガーニッシュにテクノロジーバッジが付かないとなどの違いはあるが、これは他のグレードでも同様のものがある。

それでも、インテリアはけっこう差別化されている。シート地はブラッククロス(上級グレードはレザー)、インパネのデコレーションパネルは樹脂、そしてドアトリムはクロス(どちらも上級グレードは合成皮革など)となる。とはいえ、質感にはこだわっているようだし、安っぽさは感じられない。

ステアリングホイールは本革巻きだし、人間中心のパッケージで理想的なドライビングポジションが取れる点も上級グレードと変わらない。シンプルだがギア感もあるコクピットは、日常的な相棒として使うには必要十分なクオリティは保っており、永く付き合うのにも飽きさせない雰囲気を漂わせている点もいい。

動力性能的には不満なし。高速クルーズもけっこう快適

全長は4.7mあまり、全幅は1.9m近いCX-60に乗り出すと、街中ではけっこう大きさが気になる。それでも背の高いSUVゆえ視界は良いし、2870mmというロングホイールベースながらFRベースのため最小回転半径は5.4mにおさえられているから、取り回しは思ったほど悪くない。車庫入れなども(オプションのカメラが備わっていたけれど)けっこうスムーズにできた。

車両重量は1.7トンを超えるが、188psと250Nmを発生する2.5Lの直4エンジンのパフォーマンスは十分なレベルにある。ターボも電気デバイスもないシンプルなガソリンエンジンに組み合わされるのはトルコンレスの8速AT。発進からパーシャルスロットルで加速していくとポンポンとシフトアップしていく。少しシフトショックが大きめだが、慣れてしまえば気になるほどではない。

ディーゼルのように低速域からトルクフルとはいかないが、2000rpm以上回っていればパワー的には不満はない。80km/h走行は8速で1500rpm、100km/hなら1800rpmくらいで、ハイウエイクルージングもけっこう快適。メーターは中央のスピードメーターだけ液晶で、スポーツモードにすると周囲が赤く表示される。エンジンのレスポンスが高まるというが、劇的には変わらない。ノーマルでも走りっぷりは十分だ。ボディの剛性もしっかりしている。

足まわりの設定は上級グレードより良いかも?

CX-60は上級グレードで足まわりの硬さが取り沙汰されていたが、この25SとXDの一部グレードではリアサスペンションのピロボールを1個にしてスタビライザーを外している。そのおかげか乗り心地は良く、路面の継ぎ目などでも突き上げを感じることもない。もっとも、この手のクルマは人や荷物を多く積む機会が多いし、今回の試乗は基本的に1人乗車だったから、購入を検討しているなら、乗り味に関しては自分で試乗して確認したほうがいいだろう。

今回、約110kmの試乗(約7割が市街地、残りが都市高速)で、平均燃費計の数値は9.8km/L。残り走行可能距離(燃料計にこの数値が出るのは便利)は370km、燃料の残りは約4分の3を表示していた。この大きさの2.5Lガソリンエンジン車がリッター10km近く走れば、ひと昔前なら文句なしだったが、ディーゼル車やハイブリッド車の燃費を見慣れてしまうと物足りなく思えてしまうのは仕方ないところか。ちなみに、WLTCモードでは13.1km/Lとされている。

日本車では希少なFRベースのSUVで、ラージクラスならではの室内やラゲッジスペースは十分に広い。長距離移動が多いならディーゼルを選んだほうがベターだが、シティユースがけっこう多く、このクラスのSUVでも気軽に付き合いたいというなら、コスパの高さを考えても、この25Sという選択はありだろう。CX-60の購入検討者には、気になるグレードになりそうだ。(写真:Webモーターマガジン編集部)

●全長×全幅×全高:4740×1890×1685mm
●ホイールベース:2870mm
●車両重量:1720kg
●エンジン:直4 DOHC
●総排気量:2468cc
●最高出力:138kW(188ps)/6000rpm
●最大トルク:250Nm(25.5kgm)/3000rpm
●トランスミッション:8速トルコンレスAT
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・58L
●WLTCモード燃費:13.1km/L
●タイヤサイズ:235/60R18
●車両価格(税込):321万7500円