大阪ではじめて開催された電動車を楽しむイベント「EV&SDGsフェア 2022 in Osaka」は、さまざまな意味で興味深いイベントとなった。その現場で見て感じて耳にしたいくつかのトピックを、ピックアップして紹介しよう。まずは3列シートEVという新ジャンルの「可能性」を感じさせたメルセデス・ベンツのコンパクトSUV「EQB」から。(前編)

「ついでに立ち寄る」のが正しい楽しみ方、かも

クルマ系の展示イベントといえば様々あるが、「クルマを見る」ために行くモーターショーやオートサロンなどとは、ちょっと違う。今回、JR大阪駅前に誕生した人気スポット、グランフロント大阪 うめきた広場で開催された「EV&SDGsフェア」は、どちらかと言えば「ついでに立ち寄ってみた」系の来場者が多かったように思える。

要は、再開発で一気に若返りが進んだ「キタ」の人気スポットを、たまたま通りかかって興味を惹かれた、という感じだろうか。それでも誘引したのはもちろん、そこに並んだクルマたちの「カッコ良さ」に他ならない。

あるいは、時ならぬ人だかりができているのを見て、「なんだか面白そう」だと思ってくれただけかもしれないけれど。「入口=きっかけ」はどうであれ、そんな出会いから始まる「縁」は、きっとある。

シンプルにカッコいいクルマが欲しい、という思いが「カッコいい電気自動車もいいね」にシフトしてくれたなら、こうしたイベントを開催した甲斐もあったというものだ。訪れた人たちが、おおよそEVだとかPHEVだとかいった機構の特別感など関係なしに、「これなら乗ってみたいかも」と思ってくれたとしたら、まさに僥倖である。

今もっとも贅沢なファミリーSUVの電気自動車版

そんな「カッコいい」クルマたちの中で注目され、個人的にもとくに興味を惹かれた1台がメルセデス・ベンツの電気自動車ブランド メルセデスEQの「EQB」だった。日本での一般公開は、これがはじめて。実用性にも富んだメルセデス・ベンツの筆頭モデル「GLB」をベースとするEVだ。

「実用的なクルマ」と言うと無骨な形を思い浮かべるかもしれないが、EQBの実車は写真で見る以上にスマートでスタイリッシュなものだった。基本のフォルムはGLBだが、わずかに全長が伸びやか(+50mm)で、グリルレスのフロントマスクなどのアレンジによって内燃機関モデル以上に洗練された雰囲気が漂って見える。

極めつけと言えるのが、3列シートを設定しながらも全長4684×全幅1834×全高1701mm(ホイールベース2829mm)という小ぶりなサイズに収めたパッケージングの妙だろう。駆動用バッテリーはフロア下に配置されているが、大人も座れる空間的なゆとりをしっかり備えている。

アレンジの多様性も備えた3列シート、495〜1710Lに達するラゲッジスペースのゆとりなど、ミニバンも真っ青のユーティリティを備えている。ラグジュアリーだけどファミリーにもぴったりのマルチタレントぶりは、使える上級EVを探している向きには見逃せない1台と言える。

圧倒的にコンパクトなボディサイズは、唯一無二の個性だ

そもそも乗用系3列シート車は、フルバッテリーEVの多様化が進んでいるとはいえ今のところ、存在自体がかなり希少だ。そんな中でEQBは、直近にデビューしたモデルたちと比べても、コンパクトさで群を抜く。

たとえば2022年4月に正式発表となったフォルクスワーゲンのミニバスID. Buzzは、3列7人乗りの設定が公表されている。そのスタイルは一見、コンパクトな印象があるが、2列5人乗りのスタンダードでもすでに全長は4.7mを超え、全幅も1985mmに達する。

同じくフォルクスワーゲンは中国市場向け3列シートEV「ID.6」をローンチしているが、こちらも全長は4876mmとかなり長い。兄弟車としてアウディからはやはり3列シートのQ5 eトロンも発表されている。ディメンションは同じで、EQBよりもひとまわり以上大きい。

現在、日本で唯一購入できる3列シートを備えたEVは、テスラ モデルX。ただしこちらは、もはや5m超級、全幅も2mを優に超える。さらに上級でこれからの日本上陸が待たれるメルセデスEQのEQS SUV(全長5125mm)は、もはや論外と思えるほど。

メルセデスEQと言えば、欧州系ミニバンとして期待値の高いEQTの登場が待ち遠しいが、こちらもほとんど5mに近いサイズがアナウンスされている。どうやら、EQBほど日本の道路事情にフィットしそうなコンパクトで乗用タイプの3列シートEVの登場は、しばらくなさそうだ。

急速充電能力も実用的。4マティックなら安心感が違う

419km(WLTPモード)に達する航続距離、100kW対応の最大充電能力は、ロングドライブでも高い安心感を与えてくれる。トップグレードの「EQB350 4マティック」の最高出力292ps/最大トルク520Nmというポテンシャルは、2トンを優に超える重量級ボディを力強く加速させてくれるはずだ。前後に1基ずつ電気モーターを搭載する四輪駆動の設定など、EQBはまさに隙がない。

今回のイベントにおいてひときわ未来感を強調したEVたちの中に混じれば、ICE(内燃機関:エンジン)搭載モデルをベースにしているがゆえに、見た目のインパクトはやや控えめで「普通」な佇まいではあったかもしれない。けれどEQBのさりげない唯一無二の個性は、実はとても身近でわかりやすい魅力を備えている。「なんだか面白そう」でイベントに集まってくれた来場者にも、それはきっと伝わったことだろう。

押し付けではなく自然にEVに興味を持ってもらうきっかけとして、「ついでに」の効果はかなり高そうだ。