国産車/輸入車を問わず、続々と登場するBEV(バッテリー電気自動車)。今回は、最近注目されている2台のコンパクトなBEV、ホンダ eとプジョー e-208に試乗してみた。

コンセプトや考え方は、まったく異なる2台のBEV

最近のニューモデルには、国産/輸入車を問わず「電動車」が増えてきた。HV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、それにFCEV(燃料電池自動車)など、種類はさまざまだが、やはり電動車でいちばん気になるのはBEV(バッテリーEV)、いわゆる電気自動車だろう。BEVはバッテリー容量と航続距離との関係で、大容量バッテリーを積むために大きめのモデルが多いのだが、今回は比較的コンパクトな2台に試乗してみた。

まず1台は、ホンダがBEV専用モデルとして送り出したホンダ e。そのスタイリングは、初代シビックを彷彿とさせる少しノスタルジックなものだが、ドアミラーをカメラ化したり、フルLEDの灯火類など、よく見れば新しさも感じさせる。

インテリアでは、カメラの画面まで5スクリーンをレイアウトしたインパネは、いままでのクルマにはない、もはや「未来のクルマ」的なものだ。それでも、ウッド調パネルやソファーのような仕立てのシートがリビング空間的で、ホッとするような感覚も与えてくれる。

今回の試乗車は上級グレードの「アドバンス」で、パワートレーンは113kWと315Nmを発生するモーターをリアに搭載し、後輪を駆動するRWD。スタイルから前輪駆動(FWD)に思われそうだが、あえてRWDを採用したのが、ホンダらしいところだ。バッテリー容量は35.5kWhと比較的控え目なので、一充電走行距離はWLTCモードで259kmとなっている。

もう1台のBEVは、プジョー 208にエンジン車と同時に発表されたe-208。外観は基本的にエンジン車の208と変わらないが、ボディカラーと同色のフロントグリルやエンブレムなどが、さりげなくBEVであることを主張している。

インテリアも基本的にエンジン車と同じレイアウトだが、小径ステアリングの上から見る3D i-コクピットのメーターや整然と並んだトグルスイッチなど、そもそもエンジン車の208でもインテリアはかなり先進的だった。したがって、ホンダ eのインテリアとは逆に保守的な中に先進性を感じさせるものといえるだろう。

e-208の試乗車も上級グレードの「GTライン」。とはいえ、エントリーグレードの「アリュール」もパワートレーンは同じで、100kWと260Nmを発生するモーターをエンジン車と同様にフロントに搭載して前輪を駆動する。バッテリー容量は50kWhで、一充電走行距離はJC08モードで403km。途中で充電しなくても日帰り旅行ならできそうだ。

走りっぷりにも、2台の個性の違いを感じる

コンパクトとはいえ、BEVらしい発進からタップリとしたトルクで加速し、しかも静かに車速が伸びていく走りっぷりは、2台とも今までに登場してきたBEVと基本的には変わらない。それでも、それぞれの個性の違いは感じさせてくれる。

まず、ホンダ eはRWDらしい、後ろからパワーをかけて押されている感覚がよく分かる。とくにFWDではアンダーステア気味になる、少し舵角のあるコーナリングではニュートラルステアに近い感覚でコーナーをクリアする。バッテリーを床下に敷き詰めて低重心化しているから、コーナリングが楽しい。しかも、RWDのおかげで前輪の切れ角が大きく、最小回転半径は4.3mと軽自動車より小さいくらい。車庫入れや街中での取り回しは、かなり楽だ。

走行モードは「ノーマル」で走っても不満はない。「スポーツ」は、ここぞというときだけで十分だろう。シングルペダルコントロールのスイッチも備え、停止までブレーキを踏まない、いわゆるワンペダル走行も可能だ。

プジョー e-208は、エンジンとモーターのフィールの違いはあるが、乗り味はエンジン車から乗り換えても違和感のないものだ。FWDらしい弱アンダーステアのコーナリング特性は変わらないし(それでもバッテリーによる低重心化の恩恵はある)、プジョーの小型車らしくキビキビした走りを見せてくれる。

走行モードは、街中なら「エコ」で十分。「ノーマル」だと加速が良くなり、「スポーツ」はサーキットかワインディング用?と思えるほど。セレクターをBレンジに入れればアクセルOFF時に減速度が増すが、ワンペダル走行で完全停止状態まではできない。このあたりは、エンジン車にフィーリングを近づけているのだろう。

両車の大きな違いは、ホンダ eはデイリーユースの都市型コミューターを目指しているのに対し、e-208はエンジン車並みの活動範囲を考えたバッテリー容量の差にある。したがって、両車とも室内スペースは広く快適だが、ラゲッジスペースはホンダ eが171Lとさほど広くないのに対し、e-208はエンジン車と同じ265Lを確保している。

サイズ的にも価格的にも近い両車だが、最終的な選択基準は「どう使うか?」にあるだろう。最近は各地に充電設備が増えているからホンダ eでも遠出は可能だが、急速充電は車種によっては使えなかったり、バッテリーの寿命にも影響する。

BEVを愛車として(とくにコレ1台だけで)暮らしたいのなら、どのようなカーライフを送りたいのか、それが実生活とマッチしているのか、よく考えて最適の1台を選びたいもの。そうすれば、BEVでも理想的な愛車生活を送ることができるだろう。(文:Webモーターマガジン編集部 篠原政明/写真:井上雅行)

●ホンダ e アドバンス 主要諸元

●全長×全幅×全高:3895×1750×1512mm
●ホイールベース:2530mm
●車両重量:1540kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:113kW(154ps)/3497ー10000rpm
●最大トルク:315Nm(32.1kgm)/0-2000rpm
●バッテリー総電力量:35.5kWh
●WLTCモード航続距離:259km
●駆動方式:RWD
●タイヤサイズ:前205/45ZR17、後225/45ZR17
●車両価格(税込):495万円

●プジョー eー208 GTライン 主要諸元

●全長×全幅×全高:4095×1745×1465mm
●ホイールベース:2540mm
●車両重量:1500kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:100kW(136ps)/5500rpm
●最大トルク:260Nm(26.5kgm)/300−3674rpm
●バッテリー総電力量:50kWh
●JC08モード航続距離:403km
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:205/45R17
●車両価格(税込):423万円