外部充電が可能なプラグインハイブリッドというシステムは、従来型のパワートレーンと今後ますます増えるであろうBEVという完全電動車との関係を、連続的につないでくれるものだ。より力強く、そして電気力を増した新しいシステムが搭載された3モデルを実際に体感した。(Motor Magazine 2022年6月号より)

「リチャージ」への進化で時代の流れを巧みに反映

昨今、自動車業界は」100年に一度の変革期」と言われているが、その中での必須課題となるのがCO2問題・・・つまりカーボンニュートラルである。その実現のためにはパワートレーンの改革が必須であり、さまざまな選択肢が存在する中で、欧州勢は電動化に舵を切る戦略を取っている。

その中でもスウェーデンのボルボは2030年に電気自動車(BEV)だけのブランドになると宣言。それに先駆けて、日本市場では2020年にすべてのモデルが電動パワートレーンを搭載したモデルに変更された。つまり、ピュアな内燃機関モデルはラインナップから消え、いち早く「電動化100%」を完了したワケだ。

ひと昔前のボルボは、自動車業界のさまざまな動向に対してどちらかと言うと保守的であった。だがここ最近は、安全運転支援デバイスの全車標準化、エンジンの集約(3気筒/4気筒ガソリンターボ)、サブスクリプションサービスの展開、Googleインフォテインメントの活用、そしてレザーフリー対応など、むしろ「自動車業界初」が勢揃いという積極的な動きを見せる。このあたりはスモールプレイヤーだからこそ可能な部分もあるが「選択と集中」を上手に活用しているような気がする。

電動化に関しては、先日BEV専用車となるC40の発売が日本でもスタートしたが、直近のビジネスの中心はハイブリッドモデルである。そのシステムはISGM(インテグレーテッド スタータージェネレーター モジュール)とリチウムイオンバッテリーを搭載した「48Vマイルドハイブリッドシステム」、そして高出力なモーターと大容量バッテリーを搭載して外部からの充電が可能な「リチャージプラグインハイブリッド」の2種類だ。このパートで紹介するのは、後者のリチャージプラグインハイブリッドのモデルたちだ。

このPHEVシステムはフロントにガソリンエンジンと電気モーター、リアに電気モーターを搭載した電動AWDであり、新世代ボルボの導入当初からラインナップされている。当時は「ツインエンジン」と言うネーミングで最上級モデルに位置づけられた。そして、100%電動化を機に外部充電と言う意味を含めた「リチャージ プラグインハイブリッド」へネーミングを変更。それに合わせて、ポジションも電動化モデルの「上級版」と言う立ち位置となっている。

そのシステムも、年々進化を遂げている。2020年の改良では駆動用バッテリーの容量アップでEV航続距離を向上。さらに22年に実施された改良は大規模で、エンジン/モーター/バッテリーを一新。具体的には2L直列4気筒ターボエンジンは高効率化とドライバビリティの改善を目的にスーパーチャージャーの廃止とCISG(クランク インテグレーテッドスターター ジェネレーター)の出力を向上。加えてリアモーターは107kWに出力を向上(従来比65%向上)、バッテリー容量もアップ(18.8kWh/従来比60%向上)。これによりEV走行時のパフォーマンスアップとEV航続距離が向上(約〜)された。

ちなみにフロントモーター(52kW/165Nm)、リアモーター(107kW/307Nm)は改良型PHEVの全モデルで共通だが、搭載する2L直列4気筒ターボエンジンは「T8」のシリーズが317ps/400Nm、「T6」のシリーズは253ps/350Nmと仕様が異なる。

ただし同じリチャージ プラグインハイブリッドでも、コンパクトSUVの「XC40」のみキャラクターが異なり、システムそのものの構成が大きく違っている。

フラッグシップたるXC90。さらなる余裕を得た力強さ

ここでは、進化した最新リチャージプラグインハイブリッドシステム搭載のV60、XC60、XC90の3モデルに試乗。同社の電動化戦略、電動パワートレーンのメリットなどを考察してみたい。

まずはSUVシリーズのフラッグシップとなる「XC90」だ。新世代ボルボ第一弾のモデルとして登場から7年が経過するが、その先進的デザインは今なお新鮮だ。

駆動用バッテリーの容量が十分にある時は、ほぼモーターのみで走行する。応答性の良さは言うまでもないが、力強さは確実に増した。具体的にはアクセルペダルを踏んだ時に従来モデルでは一瞬の間があったが、新型は「スッ」と即座に動き始めるような印象だ。

右足をさらに踏み込めばエンジンは始動するが、その繋がり方も従来モデルより確実に滑らかだ。車重2340kgのボディを過不足なく走らせる大排気量NAエンジンのように余裕のあるフィーリングは、XC90というモデルのキャラクターともマッチしている。

フットワークは一般道/ワインディングでは大きなボディを持てあますかと思いきや、見切りのいいボディと視界の良さ、さらに心地よい緩さを持ちながら正確性の高いハンドリングなどにより巨体を感じさせない走りを見せる。

ワインディングロードでもそこそこ楽しめるが、やはり得意なのは長距離クルージングだろう。矢のように突き進む直進安定性の高さと当たりの優しい乗り心地、巧みな制御の運転支援システムで、どこまでも走れてしまいそうだ。

ベストセラーの60シリーズ。PHEVでも滑らかで万能

続いては、SUVシリーズの次男坊となるXC60だ。2018年に登場するやいなや、日本カー・オブ・ザ・イヤーをはじめとするカーアワードを総なめ。ボルボの世界販売台数をけん引するエースだ。21年に大幅改良が行われ、フェイスリフトとともに、日本初となるGoogle搭載の「新インフォテイメントシステム」も採用されるなど、利便性も高められた。

エンジンの出力はXC90に対して64ps/50Nm低いが、車両重量は2180kgと160kgも軽量のため、力強さと言う意味ではそれほど大きな差は感じない。ただしフィーリングは異なり、ターボらしさが実感できるトルクの盛り上がり(もちろん滑らか)とエンジンの伸び感の良さのほうが光る。エレガントさとスポーティのバランスがいい塩梅の特性だが、そのあたりはベストセラーらしい万能な味付けとも言える。

フットワークはXC90の穏やかで重厚な乗り味に対して、薄皮を一枚剥がしたようなダイレクト感がプラスされ、見た目以上に軽快なフットワークだ。最新モデルは操舵感やサスペンションの動きに落ち着きが増した印象で、よりジェントル、より大人な特性に進化している。街乗り領域での快適性も増しており、パワートレーン同様にボルボのエレガントさがより引き上げられた印象だ。

こちらもとくにアナウンスはないが、より滑らかになったパワートレーン制御で車体の無駄な姿勢変化が抑えられたこと、そしてタイヤ(ミシュラン プライマシー4)とエアサスペンションの熟成効果も大きいと私は予想している。

ステーションワゴンの王道は、あえてサイズダウン

そして最後はステーションワゴンのV60だ。スポーティな走りが魅力だった「スポーツツアラー」の初代V60と「四角いボルボ」を継承していたV70のコンセプトを融合したモデルで、ステーションワゴンの王道とも言える「スポーティで実用的」なキャラクターを持たせたモデルだ。

世代交代ごとに大型化するモデルが多い中、全幅は1850mmとサイズダウン。実はこれ、ボルボの世界販売でトップに入る日本からの強い要望が反映された結果だという。

パワートレーンはXC60と同じだが、車両重量はXCより110kg軽量な2070kg。実際に走らせると、同じパワートレーンと思えないくらいの力強さはもちろん、豪快な回転フィールや小気味良いシフトなどスポーツユニットと呼びたくなるくらいの印象だ。

さらにドライブモードをダイナミックにすると、その勢いはさらに増して思わず「オーっ」と声を発してしまうぐらいのパフォーマンス。クルマの軽さもあるが、制御次第で大きく変えられるキャラクターは、電動化パワートレーンの強みのひとつと言える。

フットワークは普通に走っている時は穏やかで質の高い乗り味だが、操作に対するクルマの動きは明らかにレスポンス重視で軽快。初期ロールを抑えたハンドリングは、明確にスポーティさをアピールしたセットアップである。

全高1435mm、全幅1850mmと言うワイド&ローの基本素性を活かした無駄な動きを抑えたフットワークは、先代V60にラインナップされたスペシャルモデル「ポールスター」を思わせる精緻でコントロール性の高いハンドリングを実現している。そういう意味では「ワインディングも走れる」ではなく、「ワインディングを楽しめる」電動車と言っていい。

乗り心地は人によって硬めに感じる人もいると思うが、ガツンと来るのではなくしなやかな硬さなので決して不快ではなく、むしろスッキリとした振動収束性で、19インチタイヤ装着モデルの快適性は非常に高いレベルにある。

電動化によって高められた「ボルボらしさ」という品質

ちなみにEV走行での航続距離はカタログ値でXC90が76km、XC60は81km、V60で91kmとなる。実際に走らせて感じたのは、どのモデルもカタログ値に近い距離を走れること。日本における乗用車の一日の平均走行距離は50km前後と言われるが、自宅に充電環境が備えられていれば、普段は「ほぼEV」として使える印象だ。

そろそろ結論に行こう。今回試乗して強く感じたのは、電動化による燃費の良さ/力強さはもちろんだが、よりスムーズ、より滑らかな、より洗練された・・・とクルマの質も高められていることだ。そういう意味では、ボルボの電動化は「ボルボらしさ」をより高みに上げるための武器だと思う。

ステーションワゴンのフラッグシップ「V90」とシリーズのセダン「S60]にもリチャージ プラグインハイブリッドが用意されるので、自分の用途や嗜好に合わせて相応しいモデルを選ぶことができる。私はこれまで「ボルボはディーゼルでしょ」と思っていたが、最新のリチャージ プラグインハイブリッドに乗り、その考えを改める必要があると感じた。(文:山本シンヤ/写真:永元秀和、井上雅行)

参考:改良型PHEVの共通パワートレーンシステム

今回、改良が施されたボルボの「リチャージ」PHEVモデルは中・大型モデル用のSPA(スケーラブルプロダクトアーキテクチャー)プラットフォームを採用するV60/S60/XC60/V90・XC90の5車種。従来型のPHEV車からエンジン、モーター、バッテリーのすべてが刷新されたニューシステムへと変更された。出力のレベルは60シリーズが「T6」、90シリーズは「T8」に設定され、システム全体としての参考合算出力値はT6が350ps、T8が462psというパワフルなものだ。

●ボルボ V60リチャージ プラグインハイブリッド T6 AWD インスクリプション主要諸元

●全長×全幅×全高:4760×1850×1435mm
●ホイールベース:2870mm
●車両重量:2070kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:186kW(253ps)/5500rpm
●最大トルク:350Nm/2500−5000rpm
●モーター最高出力:前52kW/3000−4500rpm、後107kW/3280−15900rpm
●モーター最大トルク:前165Nm/0−3000rpm、後309Nm/0−3280rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTCモード燃費:15.6km/L
●タイヤサイズ:235/40R19
●車両価格(税込):824万円

●ボルボ XC60リチャージ プラグインハイブリッド T6 AWD インスクリプション主要諸元

●全長×全幅×全高:4710×1900×1660mm
●ホイールベース:2865mm
●車両重量:2180kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:186kW(253ps)/5500rpm
●最大トルク:350Nm/2500−5000rpm
●モーター最高出力:前52kW/3000−4500rpm、後107kW/3280−15900rpm
●モーター最大トルク:前165Nm/0−3000rpm、後309Nm/0−3280rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・71L
●WLTCモード燃費:14.3km/L
●タイヤサイズ:255/40R20
●車両価格(税込):934万円

●ボルボ XC90リチャージ プラグインハイブリッド T8 AWD インスクリプション主要諸元

●全長×全幅×全高:4950×1960×1775mm
●ホイールベース:2985mm
●車両重量:2340kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:233kW(317ps)/6000rpm
●最大トルク:400Nm/2500−5000rpm
●モーター最高出力:前52kW/3000−4500rpm、後107kW/3280−15900rpm
●モーター最大トルク:前165Nm/0−3000rpm、後309Nm/0−3280rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・71L
●WLTCモード燃費:13.3km/L
●タイヤサイズ:275/40R21
●車両価格(税込):1169万円