脱炭素社会の実現に向けて官民挙げての取り組みが加速している。そんな中、出光興産株式会社と株式会社タジマモーターコーポレーションが4人乗りの超小型EV(電気自動車)の開発を行う新会社「株式会社出光タジマEV」を2021年4月1日に設立されることを発表。オンラインで実施された会見では新会社が手掛ける超小型EVを2022年に発売する予定であることも明らかにされた。(2月16日:オンライン記者会見より)

ガソリンスタンドと超小型EVがコラボする理由

「電動化」という言葉がひとり歩きしている感もある昨今だが、いずれにせよ2030年代半ばにはエンジンだけで走る新車の販売はほぼなくなるのは間違いない。そんな近未来に危機感を持っているのは、自動車メーカーだけではない。従来、石油関連製品(ガソリン、軽油、灯油ほか)の販売を行ってきたガソリンスタンド(サービスステーション=以下、SS)にとっても、もはや傍観していられる状況ではないのだ。「地域のエネルギー供給」という役割に加え、地域社会への新たな貢献が求められている。

新たなビジネスモデルにいち早くシフトするのが、シェルとの経営統合も記憶に新しい出光興産である。同社は2021年4月から、全国のSSをより地域密着型の「アポロステーション(apollostation)」にリニューアルして、新たなサービスの提供を目指す。

従来の石油製品の販売に加えて、太陽光・風力発電などの再生可能エネルギー、水素や合成燃料などの次世代エネルギーなど「地域のエネルギー供給」としての役割、さらに介護サービスや物流サービスなど「地域の暮らし」をサポートする役割、そしてクルマのリース・シェアサービスやメンテナンスサービスなど「移動」の提供などを行う役割。出光興産が目指すのは、地域に密着したライフパートナーへの脱却だ。

その新たな取り組みの中核となりそうなのが「EV」。出光興産がそのビジョン実現のパートナーとして選んだのが、モータースポーツ界の超有名人=田嶋伸博氏率いる「タジマモーターコーポレーション」だ。長年、車両・EV開発で実績を積み上げてきたのが同社だが、田嶋氏がEVに関心を持つに至ったきっかけが興味深い。

「WRCラリーに参戦していたころ、毎年同じコースを走るのだがコンディションが(気候変動の影響で)毎年のように変わってしまい、前年のペースノートが使えない。地球が壊れていく現状を目の当たりにしていた」(田嶋氏)

気候変動に並々ならぬ関心をもった田嶋氏は、慶應大学発のEVベンチャー「シムドライブ」を吸収。モータースポーツ参戦で培ったスピーディな車両開発技術を生かしてEV開発の関連会社「株式会社タジマEV」を設立して事業化の道を探るなど、果敢に挑戦を続けてきた。

2021年10月の東京モーターショーで超小型EVの量産仕様を発表

そんな両社が目指す方向性で一致したことで誕生したのが「株式会社出光タジマEV」だ。すでに両社は、公共交通機関が脆弱な地方部で2年間に渡る実証実験を重ねており、超小型EVには年間100万台相当の潜在需要があることを確信。国土交通省の型式認定取得を前提にした最大4人乗りの超小型EVの開発に着手しており、その開発中の車両とスペックの一部も公開された。

ボディサイズは全長2495×全幅1295×全高1765mm、乗車定員は4名(カーゴタイプは1名)。ボディの素材には、出光興産の持っている先端技術(高機能プラチック素材ほか)が活用される。搭載モーターの出力は15kW、搭載バッテリーは60V、10kWhで、充電に必要な時間は100V電源で8時間。

ちなみに航続距離は現段階で120km前後、最高速度は60km/h以下だが、これは想定するターゲットのニーズから割り出されたもの。実証実験の結果、軽自動車ほどの高い性能・機能が求められていないことがわかったからとのこと。一方で、型式認定を受けるために必要なクラッシュテストをクリアするほか、安全デバイスも標準装備するなど超小型と言えども本格的な自動車を目指す。

目標とする販売価格は150万円以下。市販開始は2022年を予定しているが、それに先立ち2021年10月の東京モーターショーで量産型を公開。併せて、販売方法などもインフォメーションされるはずだ。SSと超小型モビリティがタッグを組んで提案する新たなモビリティの到来が楽しみである。