2021年11月19日から21日にかけて、イタリア北部でWRC(世界ラリー選手権)第12戦ラリー・モンツァが開催される。このイベントが今シーズンのWRC最終戦で、いよいよドライバー選手権、コ・ドライバー選手権、マニュファクチャラー選手権の3つのタイトルが決定する。2022年からWRCはハイブリッドシステムを備える「Rally 1」がトップカテゴリーカーとなるため、現行のレギュレーションで行われる最後のWRCとなる。

トヨタ有利だが、なにが起きるかわからない

2021年、WRCはここまで11戦を戦い、トヨタが8勝、ヒュンダイが3勝となっている。

マニュファクチャラー選手権でトヨタがヒュンダイに47ポイント差をつけてトップ。1戦で獲得できる最大のマニュファクチャラーポイントは52ポイントであるため、トヨタの3人のドライバーのうち、ひとりでも総合7位以内でフィニッシュすれば、トヨタのマニュファクチャラー王者が確定するという状況だ。トヨタの圧倒的有利であることは間違いないが、なにが起きるかわからないのがラリーでもある。

●2021年WRCマニュファクチャラーズランキング(第11戦終了時)

1位 トヨタ 474
2位 ヒュンダイ427
3位 Mスポーツ フォード 187

ドライバー選手権とコ・ドライバー選手権のタイトル争いは、トヨタの2台、セバスチャン・オジェ/ジュリアン・イングラシア組とエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組に絞られている。3年連続でトヨタからワールドチャンピオンドライバーが誕生することはすでに決まっているが、両者の戦いは微妙。

2020年の最終戦ラリー・モンツァを振り返ると、ドライバー選手権2位につけていたオジェが優勝し、選手権1位のエバンスを逆転して通算7回目のドライバーズタイトルを獲得した。しかし今年、それとは逆の展開となり、ドライバー選手権1位のオジェを、2位エバンスが17ポイント差で追う形で最終戦を迎えることになった。

なお、オジェがWRCにフル参戦するのは今シーズンが最後であり、イングラシアは今回のラリー・モンツァでコ・ドライバーとしてのキャリアを終える。

●2021年WRCドライバーズランキング(第11戦終了時)

1位 S.オジェ(トヨタ)204
2位 E.エバンス(トヨタ) 187
3位 T.ヌーヴィル(ヒュンダイ)159
4位 K.ロバンペラ(トヨタ) 140
5位 O.タナック(ヒュンダイ)128
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7位 勝田貴元(トヨタ)68

TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのヤリ-マティ・ラトバラ代表は「3つの世界選手権タイトルを全て獲得することは、我々にとって夢だったので、それを達成できるチャンスがある状況で最終戦に臨むことに興奮しています。もし夢が叶ったとしたら、WRカー時代の終わりと、2017年のデビューイヤーに私自身もドライバーのひとりとしてドライブした、ヤリスWRC最後のラリーを最高の形で締めくくることができます。すべてが計画どおりに進み、マニュファクチャラーズタイトルを獲得できることを願っていますが、モータースポーツはフィニッシュするまで何も決まらないことを理解しています。また、ドライバーズタイトルに関して、セバスチャン(オジェ)とエルフィン(エバンス)のフェアな戦いを期待しています」とコメント。ドライバータイトルを争うトヨタのふたりのドライバーは次のように語っている。

●セバスチャン・オジェ(ヤリスWRC 1号車)

「今回のラリーが私たちにとって、このスポーツにおけるひと区切りになることは事実です。しかし、現時点ではそのことについてあまり深く考えていませんし、それが最善のアプローチだと思っています。いつも通りベストを尽くし、両タイトルの獲得に集中します。もちろん、今回のモンツァで我々の状況は1年前に比べるとかなり有利ですし、ドライバー選手権で数ポイントリードしています。しかし、まだ終わったわけではないので、集中力を切らさないようにしなければなりません。先週、イタリアで良いテストができたので、適切なリズムでラリーをスタートし、良いパフォーマンスを発揮し、チャンピオンシップを意識しながら上位を目指して戦いたいと思います」

●エルフィン・エバンス(ヤリスWRC 33号車)

「ドライバーズタイトル獲得の可能性を残したまま最終戦を迎えることができて良かったです。可能性はゼロではないので、スコットと共にベストを尽くして戦います。できる限り最高の結果を目指し、その上で状況がどうなるのかを見極めるアプローチをとるでしょう。シーズン中盤の苦しい時期を経て、ここ数戦は好調ですが、モンツァはまったく違うチャレンジになります。山岳地帯のステージはとても素晴らしいのですが、サーキットのステージは路面が非常に複雑で、流れるようなコーナーもありません。ラリー前のテストでそのすべてを把握することは不可能ですが、昨年の経験から、どう対処したら良いのかは理解しています」

2020年は雪と雨に見舞われ非常に難しいコンディションだった

ラリー・モンツァは2020年、初めてWRCの一戦として開催されたイベントで、モンツァ・サーキット(アウトドローモ・ナツィオナーレ・ディ・モンツァ)を中心に開催される。

イタリア・ミラノの北東約15kmに広がる美しい国立公園内にあるモンツァ・サーキットは、F1グランプリも開催されるイタリアを代表するクラシックコース。サービスパークはサーキットのピットに設けられ、全16ステージのうち半分の8ステージが、サーキットの新旧レーシングコースとその周辺に張り巡らされた施設道路を組み合わせた道で行われる。

施設道路は一部未舗装の区間もあり、2020年のような大雨によって路面は泥で覆われて非常に滑りやすくなる。また、現在はレースで使われていない、バンクがついたオーバルセクションも走行する。

一方、モンツァの東北に位置する古都ベルガモ周辺の山岳ステージは、コーナーが続く一般的なターマックステージ。ただし、昨年は今年よりもやや遅い時期の開催だったため気温も低く、一部で降雪もあるなど非常に難しいコンディションとなり、多くのドラマが起こった。

競技初日の19日(金曜日)と20日(土曜日)、午前中は山間部のステージを走行し、午後はモンツァ・サーキット内のステージを走る。最終日となる21日(日曜日)はサーキット内で3本のステージを走行。そのうち最終のSS16は、トップ5タイムを記録した選手とチームに対してボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定されている。3日間で16本のステージを走行し、その合計距離は253.18km。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は677.62kmとなる。

昨年のラリー・モンツァは雪と雨に見舞われ非常に難しいイベントとなったが、事前テストでもかなり多くの雨が降りトリッキーなコンディションなっており、今年もチャレンジングなフィナーレになると予想される。

●【参考】2020 WRC第7戦ラリー・モンツァ 結果

1位 S.オジェ(トヨタ ヤリス WRC)2h15m51.0s
2位 O.タナック(ヒュンダイ i20クーペ WRC)+13.9s
3位 D.ソルド(ヒュンダイ i20クーペ WRC)+15.3s
4位 E.ラッピ(フォード フィエスタ WRC)+45.7s
5位 K.ロバンペラ(トヨタ ヤリス WRC)+1m11.1s
6位 A.ミケルセン(シュコダ・ファビア Rally2 エボ)+3m56.2s
7位 O.ソルベルグ(シュコダ・ファビア Rally2 エボ)+4m12.1s
8位 J.フッツネン(ヒュンダイ i20 R5)+5m15.4s
9位 M.オストベルグ(シトロエン C3 R5)+5m27.4s
10位 P.ティディマンド(シュコダ・ファビア Rally2 エボ)+5m53.0s