2023年9月7日から10日にかけて、世界ラリー選手権(WRC)第10戦アクロポリス・ラリー・ギリシャがギリシャ中部のラミアを起点に開催される。2021年にWRCに復帰したアクロポリス・ラリーは、1951年に初めて開催され、WRC初年度の1973年からシリーズの一戦に組み込まれた伝統的なグラベル(未舗装路)イベント。昨年は暑さと荒れた路面にリタイア続出、今年もサバイバルラリーとなると予想される。
タイトル獲得に向けてトヨタとヒョンデにとって重要な一戦となる
2023年のWRCも残すところ4戦。第9終了時点で、トヨタが67ポイントのリードを築いてマニュファクチャラー選手権をリードし、ドライバー部門ではカッレ・ロバンペラ(トヨタ)が首位、25ポイント差で前戦フィンランドを制したエルフィン・エバンス(トヨタ)が2位、さらに11ポイント差でティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデ)が3位につけている。
今回はトヨタは2011年のアクロポリス勝者であるセバスチャン・オジェがワークスのサードドライバーとして起用。オジェは今季フルタイムでの出場ではないが、出場した5戦のうち3戦で優勝してドライバー選手権でも5位につけている。トヨタにとっては頼もしい存在だろう。
前戦のフィンランドで総合3位に入り通算4回目となるポディウム登壇を果たした勝田貴元(トヨタ)は、今回はマニュファクチャラー登録外ドライバーとして4台目のGRヤリスをドライブする。
●2023年 WRCドライバーズランキング(第9終了時)
1位 K.ロバンペラ(トヨタ) 170
2位 E.エバンス(トヨタ)145
3位 T.ヌーヴィル(ヒョンデ)134
4位 O.タナック(Mスポーツ フォード)104
5位 S.オジェ(トヨタ)98
6位 E.ラッピ(ヒョンデ)87
7位 勝田貴元(トヨタ)58
●2023年WRCマニュファクチャラーズランキング(第9戦終了時)
1位 トヨタ 378
2位 ヒョンデ 311
3位 Mスポーツ フォード 205
昨年2022年のアクロポリス・ラリー・ギリシャでは、トヨタ勢、Mスポーツ フォード勢にトラブルが相次ぐ中、ヒョンデ勢が躍動。ラリー半ばでヌーヴィルとオイット・タナックが1-2体制を確立させると、土曜日の終盤にはダニエル・ソルドも加わって1-2-3体制に。日曜日も大過なくフィニッシュし、チーム史上初の表彰台独占を達成した。トヨタは勝田貴元の6位が最高位だった。
●2022年 WRC第10戦アクロポリス・ラリー・ギリシャ 結果
1位:T.ヌーヴィル(ヒョンデ i20 N ラリー1)3h34m52.0s
2位:O.タナック(ヒョンデ i20 N ラリー1)+15.0s
3位:D.ソルド(ヒョンデ i20 N ラリー1)+1m49.7s
4位:P.ルーベ(フォード・プーマ ラリー1)+3m42.2s
5位: C.ブリーン(Mスポーツ フォード)+4m09.0s
6位:勝田貴元(トヨタ GRヤリス ラリー1)+6m21.1s
7位:E.リンドホルム(シュコダ ファビア ラリー2 エボ)+7m46.6s
8位:N.グライジン(シュコダ ファビア ラリー2 エボ)+8m22.7s
9位:A.ツォロフタス(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)+10m53.8s
10位:E.ブリニルドセン(シュコダ ファビア ラリー2 エボ)+10m56.7s
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15位 K.ロバンペラ(トヨタ GRヤリス ラリー1)
22位 E.ラッピ(トヨタ GRヤリス ラリー1)
リタイア E.エバンス(トヨタ GRヤリス ラリー1
大きな石が転がるラフな路面、高い気温もドライバーを悩ませる
アクロポリス・ラリー・ギリシャの路面はここ2戦のスムースでフラットなグラベルから一変。大きな石が転がる山岳ステージは路面が荒れているところも多く、気温も非常に高くなるためコンディションは非常に厳しく、クルマにもタイヤにも選手にも厳しい「ラフグラベル・ラリー」「悪路ラリー」として知られている。
WRC復帰初年度の2021年は珍しく雨が多く降ったため湿った路面での戦いとなったが、昨年2022年はアクロポリスらしい灼熱のラフグラベル戦となった。
ラリーは、大会名称の由来でもある首都アテネのアクロポリスで7日(木)に開幕。古代アクロポリスのモニュメント下でセレモニアルスタートが行われ、その後市街地のウォーターフロントに新たに設けられたステージで1.48kmのスーパーSSが1本行われる。
グラベルステージを舞台とする本格的な戦いは8日(金)から始まり、アテネの西側に位置する美しいビーチリゾート「ルートラキ」を起点に、デイ2として5本合計101.98kmのステージを走行。デイ2は昨年と同様日中のミッドデイサービスが設定されず、タイヤフィッティングゾーンでのタイヤ交換と簡易的な整備作業のみで全ステージを走り、ラミアに設けられたサービスパークでデイ2を終えるす。
9日(土)のデイ3は、ラミアのサービスパークを中心に、3本のステージをミッドデイサービスを挟んで各2回走行。6本のステージの合計距離は141.52kmと、4日間で最長の一日になる。
そして、最終日となる10日(日)のデイ4は、3本合計62.91kmのステージを走行。そのうちSS14の再走となるファイナルステージのSS15「グラムメニ2」は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーにボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定されている。ステージは全部で15本で合計307.89km。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1235.17kmとなる。
はたして今年のアクロポリス・ラリー・ギリシャはどうなるか。昨年と同じように高気温下での戦いとなることが予想されるが、トラブルをケアしながら、いかに攻めるか、難しいラリーが始まる。