2009年、日産から新しいコンセプトのSUV「スカイライン クロスオーバー」が登場した。ワゴンなどをベースとしたそれまでのクロスオーバーSUVとは一線を画し、ラグジュアリーなFRクーぺをそのままSUVにしたような形は斬新だった。ここでは登場間もなく行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年10月号より)

「クーペとSUVの融合」と謳う

日産はSUVモデルを作るのが上手い。日本市場には、デュアリス、エクストレイル、ムラーノを投入しているが、それらは同じSUVというジャンルにありながら、それぞれ大きさが異なるだけではなく、違うジャンルに属すると言っていいほど性格が異なり、それによって幅広い層から大きな支持を集めている。

加えて、北米と欧州市場には、インフィニティEX、FXもラインナップ。パスファインダーも相変わらずの人気を誇っている。大きなSUV市場を持つ北米市場で堅調な販売を見せる一方で、欧州市場ではニッサンはSUVメーカーというイメージもあるほどの人気ぶりだ。

そして、このスカイライン クロスオーバーはまた違った魅力を持つSUVモデルだ。「セダンとSUV」ではなく、「クーペとSUVの融合」と謳う。

このモデルはすでに北米市場と欧州市場でインフィニティEXの名前でデビューしているものの、当初から日本市場にはスカイライン クロスオーバーとして投入されることが決まっていたため、そのデザインはスカイライン クーペのイメージを反映させたものになっている。

このクルマの最大の特徴は、FRとそれをベースとした4WDとしていること。ロングノーズ、リアードキャビン、小さなガラスエリアといった基本デザインは、従来のSUVの常識とはまったく異なるものになっている。同じFRベースといっても、カイエンやX5などとも異なり、これはもはや新しい形の4ドアスポーツと言えるかもしれない。その姿はカイエンよりもむしろパナメーラに近いのでは、とも思う。

SUVらしからぬ洗練された「ハンドリング指向」

運転席に乗り込むと、まるでクーペのような贅沢な空間を感じる。アイポイントはやや高めながら、高めのコンソール、包み込むようなインテリアがほどよいタイト感とラグジャリー感を出している。派手さと渋さを感じさせる大人っぽい空間だ。

アイポイントの高さはヒップポイントをクーペよりも15mm高めたことによるもの。この610mmというヒップポイントは乗り降りしやすく、着座すると自然な見晴らしをもたらす。さらにややアップライトに座ることで、ホイールベースが2800mm(クーペは2850mm)に縮められているにもかかわらず、室内空間は十分に保たれている。

ちなみに、まずはこのヒップポイントを決めてから、全体のプロポーションを決定していったという。後席もパーソナルで優雅な雰囲気を持っていて、まるで応接間で寛ぐような快適さがある。

パワートレーンはVQ37VHR型3.7L V6と7速ATの組み合わせのみの設定となるが、駆動方式は電子制御トルクスプリット4WDとFRを選択可能、さらにそれぞれに標準仕様と豪華仕様となるタイプPを設定されているので計4グレードとなる。タイプPはアラウンドビューモニター、本革シート(ドライビングポジションメモリー付き)などが標準で装備される。

肝心の走り味だが、これはまるでSUVらしくないハンドリング指向。330ps/361NmのV6エンジンは、FRモデルでも1700kgを超えるこのボディに対しても余裕たっぷりで、7速ATが気持ちよくそのパワーを引き出してくれる。

また、このモデルのために開発し直された足まわり、ねじり剛性が高められたボディ、ステアリングのフリクション改善などにより、適度なロールを許しながら、しなやかな乗り心地とシャープな回頭性を見せる。走りの洗練度は高い。

SUVモデルとなれば4WDが販売の中心となるのだろうが、スカイライン クロスオーバーはFRも実に魅力的。限界性能はともかく、個人的にはFRのすっきりとしたハンドリングにも好感を持った。

やはり、このクルマの狙いはスーパーSUVの顔をした4ドアスポーツなのだと思う。(文:Motor Magazine編集部 松本雅弘/写真:永元秀和)

●日産スカイライン クロスオーバー 370GT FOUR タイプP 主要諸元

●全長×全幅×全高:4635×1800×1575mm
●ホイールベース:2800mm
●車両重量:1830kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3696cc
●最高出力:243kW(330ps)/7000rpm
●最大トルク:361Nm/5200rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:499万8000円(2009年)