大型のプレミアムSUVを選ぶにあたって、動力性能やドライバビリティの次に気になるのは、居住性、座り心地、ラゲッジルームの使い勝手などだろう。Motor Magazine誌ではとくに3列目シートの居住性やアクセスに注目。ボルボ XC90、メルセデス・ベンツ GLS、キャデラック XT6、3台のSUVをラゲッジルームも含めてチェックしている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2020年8月号より)

フラッグシップSUVでは3列目シートの快適性も重要となる

ブームからカテゴリーのひとつになり、いまやこれじゃないと売れないとまで言われるくらいに成長したカテゴリーとなったSUV。だが、もともとはトラックのようなものからの派生で、クロカン4駆だのオフローダーだの呼ばれていた頃は、後部座席の乗り心地なんて、評価できるものではなかった。あればいい、というものだったのである。

というのも、クロカン4駆やオフローダーというクルマは、とにもかくにもどんなところでも、つまり道なき道でも走ることができる走破性こそが重要だった。そうした場所でそれは「生き残れるか」という、生死にかかわる問題になるのだから、当たり前のこと。快適かどうかを評価するのは、まだまだ先の話で、乗れて、積めればOKだったのだ。

ところが、その先は、意外と早くやって来たと言えるだろう。少なくとも私が子供の頃は、ファミリーカーと言えばセダンがその代表だったのだが、大人になった頃には、すっかりミニバンがその座に座っていた。

さて、日本の場合、ミニバンと言えば3列目のシートを持っているというのが、定義のひとつになっており、そこで初めて「3列目シートは座れるのか」「3列目へのアクセスは」「3列目シートの快適性は」という話題が出てきたように思う。

もちろん、それまでも3列目シートがついているクルマがなかったわけではないが、進行方向に対して後ろ向きだったり、横向きだったり、とにもかくにもオマケ的な存在だった。2+2の後部座席、あるいはそれ以下の感じで、乗る側にしても、その場所が当選(!)した時点であきらめの境地である。もはやアトラクションに近い存在が、3列目のシートという存在だったと記憶している。

このような時代を経て市民権を獲得してきた3列目シートだが、ミニバンの場合はボディ形状が四角い箱型だからして、まだスペースは確保しやすい。しかしこれがSUVとなるとボディ形状が、3列目シートのあたりは上からも横からも絞り込まれてくるので、まず空間を確保するだけでも大変なのである。

メルセデス流のおもてなしが随所に感じられるGLS

さて今回登場するのは、ブランドを代表するフラッグシップ、いわゆるプレミアムSUVである。つまり、3列目シートが用意されている以上、そこも快適なおもてなしの空間にしなければならないのは当然のこととなる。

ところが、あまりに豪華にしすぎると、シートアレンジがしにくくなるという弊害が頭をもたげてくる。ある程度荷物を積めるのが当たり前のように思われているフルサイズのSUVでは、日常的に3列目シートは収納しておき、ラゲッジスペースをより確保するという使われ方をする時間の方が長い場合もあるのだ。というわけで、ここではその辺りを含めて、検証していきたいと思う。

まずメルセデス・ベンツ GLSから見ていく。まず、床が高い。それを考慮してステップが設けられているのは、さすがメルセデスである。これは実に巧みなエスコートを心得た装備だ。3列目シートへのアクセスは、2列目シートの肩に当たる部分にある電動ノブを動かすと、2列目が大きく前に倒れ、乗降用スペースがしっかり開く。またステップに一度足を乗せてから乗り込むので、乗り降りはかなりしやすい。スカートでも気にせず乗り降りできると思う。

3列目シートは、見た目どおりかなり大きい。クッションストロークもしっかりしている。ただし、背もたれは私の体格だと少々面圧が高いようで、常に背中を押されている感じがつきまとう。押されると言っても、マッサージのように快適に押してくれるのではなく身体を預けたいのだが、意に反して押し返される、と言えばよりわかりやすいかもしれない。

さらにヘッドレストが大きく操作感も硬くて、私でも手動で動かすのが大変だったから、一般的な女性にはたぶん無理だろう。

足先は2列目の下に入るので膝が当たることもなく、スペース的な狭さを感じない。ただし、座面がそこそこ急な角度で後ろ側に下がっているので、小柄な方はお腹がくの字に落ち込むような姿勢になり、背中の角度も合わず終始押される。まるで柔らかいベンチに座っているかのように感じられた。また、カップルディスタンスが狭いので、苦手な人とふたり掛けでの長距離移動は、避けたい気持ちになる。

そんなときは大きく開放的なグラスルーフから見える景色で、気分を切り替えたいところだ。ただし体格のいい人ならこれには当てはまらず、至極快適に座れるはずだ。

装備的には、カップホルダー、USB-Cジャック、ライト、エアコン吹き出し口などすべてが揃っていて、3列目から電動で2列目シートが調整できるといった機構も備えており、ライトの明るさやきらびやかさは、メルセデスの風格を感じさせるものだった。

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スカンジナビアンデザインの奥深さに驚いたボルボXC90

続いてはボルボXC90。GLSと比べて床が低く、ステップを装備しないが乗り降りに不便さを感じない。しっかり造られていて重量のある2列目シートをスライドさせ、肩のところのノブを手動で前に倒すと乗降スペースが確保できるのだが、乗り口は思った以上に狭く、決して乗降性が良いとは言えないだろう。

3列目シートの見た目もかなり小さい。座面の長さも、背もたれの横幅も、GLSとはひと目で違いがわかるほどだ。これはもしや修行になってしまうのかと一瞬怯むが、座ってみればクッションストロークが想像以上に確保されており、座面も背もたれも適度なホールド感で、とても座り心地がいいのに正直驚いた。このしっかりサポートしてくれる感じもいいし、ヘッドレストも2列目シートと同様の大きめタイプで、かなり安心感がある。

空間的にも、足先を2列目の下に入れられる上、その2列目シートを適切な位置にセットした場合、なんとGLSよりも足元スペースが広いことに驚愕した。もちろん足下ろし性も悪くないので、私の体格だとロングドライブも楽だろう。カップルディスタンスも真ん中に物入れが鎮座しているので、逆にゆったりと感じられた。

装備的には、ボックス、エアコンの吹き出し口、カップホルダー、ライトが用意される。このボックスのちょうどいい高さの部分がえぐられており、自然に肘が置けるのがまた、空間的余裕を感じさせるのにひと役買っている。スカンジナビアンデザインの奥の深さにまたまた驚く。

開放感の面でGLSの方が上だが、グラスルーフもだいぶ前方にあり、セパレートされ個人的空間が確保できるXC90のシートは、私にはベストマッチだった。

ブランドの個性がそれぞれのSUVに現れている

最後にキャデラックXT6。2−2−2配列で、センターウオークスルーになっている。となると、たいてい、真ん中からアクセスする人がほとんどだと思うのだが、あえてサイド側も確認してみる。

2列目シートをスライドさせ、肩のノブでガバッと前に倒したものの、相当スペースは狭い。しかもシート形状により端が出っ張っているので、空間的にもより狭いのだ。なのにもかかわらず床は高い上、サイドステップはない。ついついヨイショ!と声が漏れてしまうくらい身体を引き上げる感じになるが、その時の支点になる足元のスペースが、これまた狭いのである。爪先を引っかけるのがせいぜいの上、足抜きスペースも狭いので、XC90よりも乗りにくい。やはりセンターウオークスルーを通るのが王道だと再確認することになった。

3列目シートの見た目はたっぷりとしている。カップルディスタンスは接近しているが、それより気になるのは座り心地の硬さ。シート形状もフラットだし、背もたれも硬く、大きさはあるがベンチ感が拭えない。さらに床が高いので、若干膝を抱え込む格好になる。スペース的なゆとりはあるが、快適とは言い難いのが正直な感想だ。装備は、USBジャック、カップホルダー、左右振り分けライトが用意されていた。

最後にラゲッジルームだが、GLSとXT6は、2列目も3列目も電動の上、ラゲッジルーム側のスイッチで操作できるのでシートアレンジはとても簡単だ。またXT6のフロア下のアンダーボックスは、底は斜めなものの深さがかなりあり、隠す収納にはかなり使えそう。さらにその下には、テンパータイヤとエマージェンシーキットが入っている。

3列目の収納操作は手動だが、工夫があったのはXC90である。広すぎる空間を荷物が転がってしまわないように区切ったり、留めたりできるグロサリーバックホルダーは、シンプルながらなかなか賢い。

あると便利な3列目のシートだが、使用頻度は人それぞれ。ブランドの考え方もまたさまざまなので自分の使い方に合ったチョイスができればその魅力は倍増する。(文:竹岡 圭/写真:永元秀和)

●メルセデス・ベンツ GLS 400d 4マティック 主要諸元

●全長×全幅×全高:5210×1955×1825mm
●ホイールベース:3135mm
●車両重量:2540kg
●エンジン:直6 DOHCディーゼルターボ
●排気量:2924cc
●最高出力:243kW(330ps)/3600-4200rpm
●最大トルク:700Nm/1200-3200rpm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油・90L
●WLTCモード燃費:10.9km/L
●タイヤサイズ:275/50R20
●車両価格:1263万円(2020年当時)

●ボルボ XC90 B5 AWD ノルディックエディション 主要諸元

●全長×全幅×全高:4950×1960×1775mm
●ホイールベース:2985mm
●車両重量:2120kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●排気量:1968cc
●最高出力:184kW(250ps)/5400-5700rpm
●最大トルク:350Nm/1800-4800rpm
●モーター最高出力:10kW/3000rpm
●モーター最大トルク:40Nm/2250rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミム・71L
●WLTCモード燃費:10.9km/L
●タイヤサイズ:275/45R20
●車両価格:879万円(2020年当時)

●キャデラック XT6 プラチナム 主要諸元

●全長×全幅×全高:5060×1960×1775mm
●ホイールベース:2860mm
●車両重量:2110kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3649cc
●最高出力:231kW(314ps)/6700rpm
●最大トルク:368Nm/5000rpm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミム・83L
●WLTCモード燃費:-
●タイヤサイズ:235/55R20
●車両価格:870万円(2020年当時)