2023年9月28日から10月1日にかけて、世界ラリー選手権(WRC)第11戦「ラリー・チリ・ビオビオ」が南米のチリで開催される。ステージはグラベル(未舗装路)で、流れるようなコーナーが続く森林地帯の中高速コース。ただ、ラリー・チリの開催は4年ぶりで、多くのドライバーにとっては新たなチャレンジとなる。2023年のWRCも残すところ3戦、最終戦ラリー・ジャパンに向けて、いよいよタイトル争いも大詰めを迎える。

シーズンも残り3戦、トヨタのタイトル決定の可能性もある注目の1戦

ラリー・チリは、2019年の5月に初めてWRCとして開催され、今年4年ぶりにWRCのカレンダーに復帰する。なお、4年前のラリー・チリでは、当時トヨタのドライバーだったオィット・タナック(現Mスポーツ・フォード)がヤリスWRCで勝利をおさめ、WRC2Proクラスではカッレ・ロバンペラが、WRC2では勝田貴元が、それぞれR5車両(現在のRally2車両)で優勝している。

ラリーの舞台となるのは南北に長いチリの中部に位置するビオビオ州。2019年大会と同じく、その州都であるコンセプシオンにサービスパークが置かれ、森林地帯の中高速グラベル(未舗装路)を舞台に戦いが繰り広げられる。

前戦のアクロポリス・ラリー・ギリシャで今シーズン3勝目を飾ったカッレ・ロバンペラ(トヨタ)は、ドライバー選手権首位の座を守り、総合2位を獲得したドライバー選手権2位のエルフィン・エバンス(トヨタ)に対するリードを33ポイントに拡大。今シーズン、残るイベントはラリー・チリを含めて3戦しか残されていないため、計算上ロバンペラは今回のラリー・チリで2年連続となるドライバーズタイトルを獲得する可能性もある。

一方、マニュファクチャラー選手権ではトヨタが91ポイント差で首位に立っており、このラリーで選手権2位のヒョンデとの差をさらに13ポイント拡げることができれば、トヨタの3年連続となるマニュファクチャラーズタイトルが決定する。

今年のWRCも第10戦が終了。ここまでロバンペラが3勝、セバスチャン・オジェ(トヨタ)が3勝、エバンスが2勝と、トヨタがすでに8勝をあげている。

●【参考】2023年 WRC第10戦アクロポリス・ラリー・ギリシャ 結果

1位:K.ロバンペラ(トヨタ GRヤリス ラリー1)3h00m16.7s
2位:E.エバンス(トヨタ GRヤリス ラリー1)+1m31.7s
3位:D.ソルド(ヒョンデ i20N ラリー1)+1m35.9s
4位:O.タナック(フォード・プーマ ラリー1 )+4m28.4s
5位:E.ラッピ(ヒョンデ i20N ラリー1)+39.1s
6位:勝田貴元(トヨタ GRヤリス ラリー1)+6m22.3s
7位:A.ミケルセン(シュコダ ファビア RS ラリー2)+9m41.0s
8位:G.グリーンスミス(フォード フィエスタ ラリー2) +9m51.3s
9位:Y.ロッセル (シトロエンC3 ラリー2)+11m07.0s
10位:S.オジェ(トヨタ GRヤリス ラリー1)+11m43.4s

●【参考】2023年 WRCドライバーズランキング(第10終了時)

1位 K.ロバンペラ(トヨタ) 200
2位 E.エバンス(トヨタ)167
3位 T.ヌーヴィル(ヒョンデ)134
4位 O.タナック(Mスポーツ フォード)119
5位 S.オジェ(トヨタ)99
6位 E.ラッピ(ヒョンデ)98
7位 勝田貴元(トヨタ)66

●【参考】2023年WRCマニュファクチャラーズランキング(第10戦終了時)

1位 トヨタ 430
2位 ヒョンデ 339
3位 Mスポーツ フォード 220

ギリシャと比べるとはるかにスムーズで高速なグラベルイベント

2023年のラリー・チリは、9月28日(木)の午前中にシェイクダウンが行われ、ビオビオ県の首府「ロス・アンヘレス」で夕方7時から行われるセレモニアルスタートで開幕する。

競技は29日(金)の朝から始まり、サービスパークの南東エリアでデイ1として3本のステージをミッドデイサービスを挟んで各2回走る。このデイ1は1本目のステージのみ4年前と一部重なっているが、進行方向は逆になる。

一方、30日(土)のデイ2は前回とあまり変わらず、サービスパークの南側で3本のステージをミッドデイサービスを挟んで各2回走行。太平洋を見下ろす風光明媚なステージを含むデイ2は、ステージの合計距離が154.00kmに達し、3日間で最長の一日となる。

ラリー最終日となる10月1日(日)のデイ3は、サービスパークの東側で新たに設けられた2本のステージをミッドデイサービスを挟んで各2回走行。4本のステージの合計距離は54.12kmと短く、そのうち最終のSS16は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーに、ボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定されている。

全16本のステージの合計距離は320.98km。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1239.43kmとなる。

はたして4年ぶりの開催となるラリー・チリはどうなるか。前回と開催時期が異なり、同じステージは数本しかないため、ほとんど新しいラリーのようなもの。過去の知識はあまり活用できないだけに、どのドライバーが勝利をあげるか興味深い。

なおトヨタチームは、ロバンペラ、エバンス、勝田貴元が、3台のGRヤリスでワークスエントリーしている。