2021年11月8日、スバル(SUBARU)は、日本無線や日本アビオニクスなどと開発している無人航空機で、自律的な衝突回避試験を実運用速度域である相対速度200km/hで実施し、世界で初めて成功したと発表した。

小型無人航空機の社会実装に向けた大きな前進

スバルの前身は第二次大戦中の名戦闘機「隼」などを製作した中島飛行機であることは、クルマやメカ好きの読者ならご存知のことだろう。その中島飛行機の流れを受け継いで、現在もスバルには「航空宇宙カンパニー」という部署がある。ここでは、回転翼機(ヘリコプター)や無人機、そして固定翼機の主翼開発などが行われている。

現在のボーイングの主力旅客機である[787や最新機777Xの中央翼(左右の翼と胴体をつなぐ部分)を製作]していることや、[新型ヘリコプターの納入を開始]したことなどは、当Webモーターマガジンでも紹介している。

2021年9月9〜10日に、スバルは日本無線(大手通信メーカー)、日本アビオニクス(電子機器メーカー)、ACSL(ドローン製造会社)、マゼランシステムズジャパン(衛星受信モジュール開発メーカー)とともに、福島県南相馬市の広域飛行空域で、小型化/低消費電力化されたセンサーを10kgクラスの無人航空機(ドローン)に搭載して、自律的な衝突回避試験を実運用速度域である相対速度200km/hで実施し、世界で初めて成功した。

もう少し分かりやすく説明すると、無人航空機と有人ヘリコプターを、相対速度200km/h(無人航空機:50km/h、有人ヘリコプター:150km/h)でそれぞれの正面方向から接近させ、無人航空機に搭載した各種センサーの探知データに基づき、衝突を回避する経路をリアルタイムで生成して、この回避経路に沿って無人航空機が自律回避飛行する。そして、有人ヘリコプターを回避した後、無人航空機は元の飛行経路に復帰するというものだ。

スバルでは以前から無人航空機の衝突回避システムを開発しており、2019年には相対速度100km/hでの試験に成功している。今回の試験で、その精度がさらに進化していることを証明した。

現在、ドローンや、それよりもひとまわり大きく、より大きなセンサーなどを搭載できる中型の無人航空機は、すでに農業をはじめとして利用される分野も広がり、さらには災害時の物資運搬や遭難者捜索、物流インフラなどの用途に大いに期待され、運用数も増加している。

だが、無人航空機とドクターヘリや遊覧ヘリコプターなどの有人航空機とのニアミス実例が国内で報告されており、衝突回避技術は安全利用のための喫緊の課題となっている。また、衝突回避技術は、無人航空機の実用化に必要とされる「目視外飛行(無人航空機の操縦者が自分の目によって無人航空機の位置や姿勢および航行の安全性を確認できない飛行)」や「第三者上空飛行(無人航空機の運航に関与しない第三者の上空を飛行すること)」の実現に欠かせない技術だ。

スバルでは今後もこの成果を活用して衝突回避システムを確立し、無人航空機の社会実装推進に努めていくという。

今回、スバルはクルマの自動運転に関してアナウンスしていないが、この技術がフィードバックされていくことは間違いないだろう。そもそも、スバルの運転支援技術である「アイサイト」のステレオカメラは無人航空機のセンサーとして開発されたものだ。

現在、レベル2に相当する自動運転が可能なスバルのアイサイト搭載車は、道路環境や法整備の問題もあるが、将来的には完全自動運転を目指しているはず。そこには航空機で培われた技術も投入されていくし、逆にクルマで磨かれた技術が航空機にも利用されることで、どちらも進化していくことにもなる。

また、空力やCFRPパーツの開発といった航空機の技術が、クルマにもフィードバックされて採用されたりもしている。クルマだけではなく、航空機の開発によるノウハウが、スバルのクルマを進化させているというわけだ。(文:Webモーターマガジン編集部 篠原政明)