2009年、ジャガーとしては実に12年ぶりとなる完全新開発のV8+スーパーチャージャーエンジンが発表され、そのエンジンを搭載する「XFR」と「XKR」が登場した。XFRは新たにXFのフラッグシップとして誕生、XKRはエンジンを換装して登場した。510ps/625Nmというジャガー史上最強の心臓を手に入れた2台は「R」モデルとしてどんな個性を発揮したのか。ここでは日本導入目前にして行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年5月号より)

ジャガー史上最強の8気筒エンジンが搭載された2モデル

ちょっと古めのユニットを巧みにリファインし、歴史と伝統に支えられたこのブランドに相応しい味わいを演出する。これまでのジャガー車のエンジンに対し、そうしたイメージを抱いていた人は決して少なくはないだろう。だがここに来て、そうしたフレーズは一足飛びに「今は昔」のものになろうとしている。ジャガーとしては実に12年ぶりという完全新開発の8気筒エンジンが2009年初頭のタイミングで発表され、それを搭載する新モデルが続々リリースされ始めたからだ。

「周辺ライバル車との競合関係も考えて」と排気量を拡大させたエンジンには、その他の最新テクノロジーも満載。ブロックは軽量コンパクト構造で、ヘッドにはセンター噴射式のスプレーガイド直噴システムを採用。吸排気系には、エンジントルクで駆動することでレスポンスを飛躍的に高めた可変カムシャフトタイミングシステムが導入され、自然吸気ユニットにはホンダVTECばりの可変カムプロフィールシステムも採用といった、いかにも最新世代のエンジンらしい凝ったデザインが採り入れられている。

最高で510psというパワーを発する強力版ユニットには、過給器に機械式のスーパーチャージャーが用いられた。今の時代に出力向上と効率アップを狙うエンジンを開発すれば、そこに用いるべき過給器はエンジントルクを消費する機械式ではなく、捨てられる排気エネルギーを回収再利用するターボチャージャーこそが当然とも考えられるが、現在のジャガー社のパワーユニット開発プログラムは、ランドローバー社との協力体制の下に実施されている。そう、レンジローバーなどランドローバー各車への搭載を考えれば、過給器にはレイアウトの自由度が大きいメカニカルスーパーャージャーの方が相応しいというわけなのだ。

そんなジャガー史上最強の8気筒エンジンが搭載されたのは、XFRとXKRという、今年(2009年)の北米モーターショーで発表されたモデル。いずれも、新開発の電子制御可変減衰力ダンパー「アダプティブダイナミックス」を標準採用し、電子制御によるLSDメカ「アクティブディファレンシャルコントロール」を採用するなど、単に動力性能が優れるというだけには留まらない、スポーツモデルとしての意気込みの高さを見せている。

望外な快適性を持つXFR、ピュアスポーツモデルのXKR

ボンネットフード上のルーバーやフロント部分の大開口インテーク、トランクリッド後端のリップスポイラーなどといった専用のディテールアイテムが外観上で共通するXFRとXKRは、言うまでもなく凄まじい加速の能力がその走りの第一の特徴点だ。

発表された0→100km/h加速のデータはそれぞれ4.9秒と4.8秒とほとんど変わらないが、実は体感上の差はもう少し大きく感じられる。

XFRとXKRの比較では、アルミモノコック製ボディを奢られた後者が140kgほど軽量。そんな重量差が、アクセルペダルを軽く踏み加えた際の「加速のツキ」などにそれなりの影響を及ぼしているという実感を受けるのだ。さらに、排気系のチューニングの違いによりXKRの方がより華やかな排気サウンドを放つ点も、そうした印象を後押ししているに違いない。

そんな「軽快感の差」はハンドリングの感覚上でも同様だ。微舵効きの正確さやトレース性といった点ではXFRもまったく不満を感じないが、XKRに乗り換えるとさらなるノーズ動きの追従性の高さに、「やはりこちらこそがジャガーを代表するフラッグシップスポーツだ」とのイメージを強く抱かされる。

一方で、快適性に関してはXFRに一日の長が感じられる。テスト車が履いていたシューズは同一サイズの20インチであったものの、そこでより優れた快適性を実感させてくれたのは確かにXFRの方だった。

ファットで大径なシューズを履くモデルとしては、XKRも「大変優れている」と評価ができるレベルには達しているが、XKRに比べるとサスペンションのストローク感がさらに豊潤でフラット感が高く、低速域で路面凹凸を拾った際の突き上げ感も驚くほどに小さいXFRは、まさに「望外の快適性」を味わわせてくれることになったのである。

確かに、スポーツ度に関してはXKRに一歩譲る点も見受けられるXFRだが、運動性能とコンフォート性の高次元での融合ぶりという点ではXKRに勝るとも劣らない。

いずれにしても、メルセデス・ベンツが放つAMGやBMWのMに対して真っ向挑む走りのパフォーマンスの持ち主がこの2種類の「ジャガーのR」。単にカタログスペックを飾るだけに留まらない気合いの開発姿勢を、余すことなく実感できるスーパースポーツモデルたちの誕生だ。(文:河村康彦)

●ジャガーXFR 主要諸元

●全長×全幅×全高:4961×1877×1460mm
●ホイールベース:2909mm
●車両重量:1891kg
●エンジン:V8 DOHCスーパーチャージャー
●排気量:5000cc
●最高出力:375kW(510ps)/6000-6500rpm
●最大トルク:625Nm/2500-5500rpm
●トランスミッション:6速AT
●EU総合燃費:8.0km/L
●駆動方式:FR
●最高速度:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:4.9秒
※EU準拠

●ジャガーXKR 主要諸元

●全長×全幅×全高:4794×1892×1322mm
●ホイールベース:2752mm
●車両重量:1753kg
●エンジン:V8 DOHCスーパーチャージャー
●排気量:5000cc
●最高出力:375kW(510ps)/6000-6500rpm
●最大トルク:625Nm/2500-5500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●EU総合燃費:8.1km/L
●最高速度:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:4.8秒
※EU準拠