マセラティの他のモデル同様、風の名前が付けられたグレカーレ(イタリア語で地中海の北東風を意味する)は、ステランティス グループのジョルジョ プラットフォームが使われるが、走り出すとそのテイストはまさにマセラティのものだった。(Motor Magazine 2022年8月号より)

極めて緻密で正確なハンドリング

「やけに右側に寄るなあ」

このときグレカーレのハンドルを握っていたのは、日ごろ心から信頼している日本人ジャーナリストのひとりだったが、道幅がごく狭いイタリアのワインディングロードを走る彼は路肩側、つまり私が腰掛けている右側までめいっぱい道幅を使ってコーナリングを楽しんでいた。

いくら彼がイタリアの道を走り慣れていて、いくら私が彼を信頼しているとはいえ、いささか不安を覚えるくらいまで道の右端を用いる彼のドライビングを、私はこのとき不思議な思いで見つめていたのである。

グレカーレのハンドルを譲り受け、件の狭いワインディングロードを走り始めたとき、彼のドライビングに対して抱いていた疑問がすっと氷解した。気づけば、私も彼と同じように、右端までめいっぱい道幅を使いながらコーナリングしていたからだ。

その理由は、主にふたつある。ひとつは、ボディの見切りが優れているため、道の端までクルマを寄せるのが驚くほど簡単なこと。そしてもうひとつは、グレカーレのハンドリングが極めて緻密かつ正確で、走行ラインをそれこそセンチメートル単位でコントロールできることにあった。

マセラティSUVの第2弾であるグレカーレをドライブするのは、これが2回目。もっとも、2021年10月に試乗したのはまだプロトタイプで、しかも場所はステランティスグループのバロッコプルービンググラウンドだったから、量産仕様を公道で走らせるのは今回が初めて。

ジョルジョプラットフォームをベースとしたグレカーレのボディが極めて強固で、おかげでハンドリングのレスポンスが良好かつ正確なことはすでに承知していたが、ここまでライントレース性が優れていることは、道幅の広いバロッコでは気づかなかった。それが白日の下に晒されたいま、私は改めてグレカーレに愛情を抱き始めていた。

クルマからのレスポンスが良く精度の高い走りが楽しめる

試乗グレードは、排気量2Lのガソリンターボエンジンにマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたGTで、タイヤはオプションの255/45R20サイズを装着していた。

その乗り心地はどちらかといえば硬めだけれど、決して嫌な印象を与えるタイプではない。それどころか、足まわりにドスンと強いショックが加わっても不快な微振動は残らず、それをしっかりと受け止めるボディの逞しさが際立つばかり。

おかげでクルマとの強い一体感を味わうことができる。道の右端ギリギリまで使えたのは、こうした安心感がベースにあったからかもしれない。

最高出力300psのエンジンは、燃料噴射圧の高いディーゼルっぽい燃焼音を聞かせる点が残念だけれど、低速域からボディをグイグイと引っ張る力強さに溢れているうえ、レスポンスが驚くほど良好。これもまた、精度の高いドライビングに貢献していることは間違いないだろう。

インテリアは、クラシカルな優雅さを表現した兄貴分のレヴァンテとは異なり、いかにも現代的なデザイン。大型タッチディスプレイを用いることでダッシュボード周りをシンプルに仕上げた点も好ましい。惜しむらくは、直接のライバルと目されるポルシェマカンにクオリティの点で及ばないことだが、レヴァンテやギブリの例を見る限り、そのクオリティ感は次第に改善されると信じたい。

一方で軽快で正確なハンドリングはマカンに対する明確なアドバンテージ。これに比べると、マカンはどっしりとしてよりハイウェイクルージング向き。軽快なコーナリングが得意なグレカーレに対してマカンはスタビリティ志向が強いという違いがある。

いずれにせよ、「操る楽しさ」でマカンと互角に勝負できるミドルクラスSUVはグレカーレが初めてかもしれない。日本でグレカーレに試乗できる日がやってくるのが待ち遠しい。(文:大谷達也/写真:マセラティS.p.A.)

●マセラティ グレカーレGT主要諸元

●全長×全幅×全高:4846×1948×1670mm
●ホイールベース:2901mm
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1995cc
●最高出力:300ps/5750rpm
●最大トルク:450Nm/2000−4000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・64L
●欧州複合燃費:11.5-10.9km/L
●タイヤサイズ:235/55R19
●日本仕様車両価格(税込):862万円